タイトル | : GESORTING 165 卯月前半 |
記事No | : 86 |
投稿日 | : 2009/04/10(Fri) 21:26:14 |
投稿者 | : GESO |
[第五列あーかいう゛] 4月12日(日)のうちに,「あかなる〜む」内「第五列」のページが全面リニューアル予定. かつての「第五列」謹製品――印刷物とかテープとか――をほぼ全てアップロードした,過去の恥は掻き捨ての無料閲覧アーカイヴです. 談話室「ゴレツイタ」も同時開設するので,物好きは書き込まれたし.
[積ん読と図書館本] 3月は105円本を5冊買うだけで我慢し,4月は未だ何も買っていない. このまま当分積ん読と図書館本だけで済ませたいのだけれど,『とろける鉄工所 2』ぐらいは買っちゃいそう.
○恩田陸『蛇行する川のほとりで』(中央公論社 2004.初版は新書版3分冊 2002〜2003) 久し振りに恩田を読んで久し振りに良いと思った,不穏な少女小説.結末まで考えずに書き始めたということだが,本当にそうだとしたら恩田は実に辻褄合わせが上手い作家だと言える.
△首藤瓜於『指し手の顔 脳男II』(上下巻)(講談社 2007) 精神科入院歴のある者による凶悪犯罪が続発し,精神病者を隔離せよとの市民の声が高まる.しかし,実は意図的に作り出された犯罪の疑いがあり...という,かなり危ないお話.悪くはないけど,このボリウムが必要だろうか? しかもまた「続く」だ.前作『脳男』からの間隔は7年余,次はいつになることやら...
△久坂部羊『まず石を投げよ』(朝日新聞出版 2008) タイトルはヨハネによる福音書のアレ.医者は自分でも気付かぬまま「嫌いな」患者を死に至らしめることがあるのではないか,少なくともその可能性はあるのではないか... という例によってダークな医療ミステリ.
△野崎六助『煉獄回廊』(新潮社 1999) 版元の惹句が「妄想サスペンスの怪作」じゃ,売れるものも売れないのではと思ったが,内容も露悪的で陰鬱だから,やはり売れなかったんだろうな(ブクォーフ105円ハードカバー本).作者と縁の深かった――が後に訣別した?――「曲馬館」をモデルにした「天馬団」という劇団が出て来るから,アングラ演劇ファンは読んでおいてもいいかも.京都という閉塞的で嫌らしい町の描写には共感したけれど,全体的に嫌ぁな印象.
○貴志祐介『新世界より 上下』(講談社 2008) 大概の図書館で貸出中/予約が一杯だったが,荒川区立汐入図書館に奇跡的にワンセット残っていたのを,借りた. 千年後の一日本女性が更に千年後の同朋に向けて書いた手記,という体裁のディストピア小説.千年後の日本は,度重なる戦乱を経て生き残った「呪力」を駆使する少数の人間たちと,彼らに使役される高等で醜い「バケネズミ」たち――ハダカデバネズミの子孫とされる――が棲む,見掛け上は平穏なムラ社会だが... おぞましい傑作.
○半村良『岬一郎の抵抗 (一)〜(四)』(講談社文庫 1991.初版 毎日新聞社 1988) 優れた超能力者の受難の物語.当初持て囃された超能力者がやがて「人類の敵」として抹殺されようとする展開に意外性はないが,やや古びた感はあるものの説得力あるシミュレーション小説として,飽きずに読める.主人公を下町に住む善良なサラリーマンに設定したところがこの作者らしい.一見無関係に見えるが,本作で描かれた世界の後に超能力者=新人類と旧人類との闘争の時代が来ると想定すれば,『新世界より』に繋がる物語として無理矢理リンク可能.どちらも未読の人は『岬一郎』を先に読むのがベター.
と,ここまで挙げた本はどれもこれも後味が悪かったですわ. たまにはスカッと能天気な作品も読みたいなぁ...と思いつつ,図書館に予約中の本は湊かなえ『告白』と奥泉光『神器 軍艦「橿原」殺人事件』という,やはり確実に暗そうな小説なのであった.
ベイトン・リード監督『イエスマン "YES"は人生のパスワード』(2008 米)というジム・キャリー主演の映画を試写会で観たんだけれど,「何事もポジティヴに受け入れるべき」という姿勢を全肯定できるほどナイーヴにはなれないなぁ... ここのところ全くろくなことがないし.と愚痴りたいのを抑えつつ,日々は続く.
2009.04.10 GESO
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