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タイトル2000/07/15■017 羊たちの沈黙
記事No116
投稿日: 2013/10/05(Sat) 09:11:44
投稿者管理人
[趣味と映画]
 趣味と評価は違うし,評価と好き嫌いも違う.
 ということを理解できない人たちが,しばしば無益な論争をしているのではないか−−と思う.
 例えば,俺はスポーツもギャンブルも嫌いだが,「ONE OUTS」も「球魂」も「競艇少女」も「風の大地」も「BETS」(はもう終わったが)も毎回楽しんで読んでいる−−これらはマンガであるが,小説でも映画でも同じこと.
 要は,素材が何であろうと,その物語世界が説得力をもって成立していれば,それはそれで良いのである.
 逆に言えば,幾らネタが良くても,造りが悪けりゃ駄目である.
 ということを弁えて論争した方がいいと思うのだが....
 ところで,「ナビィの恋」という映画を観た.
 俺は沖縄も沖縄の音楽も基本的に嫌いだが,この映画はすごく良かった.
 それは映画として,物語として良く出来ているし,役者が皆,作品を生きていたから.
 音楽が良かったのは,それが皆収まるべきところに収まっていたからだ(普通は「だから」つまらないのだが,本作では「沖縄だから許される」という特権性が不自然さを伴わずに描かれていた).
 同じ沖縄を舞台にしていても,「豚の報い」みたいな駄目映画(バーで豚と鬼ごっこする場面一つ採ってみてもそれは分かるわな)に較べて,どれだけ幸福な,愛すべき映画であることか!

[羊たちの沈黙]
 「ハンニバル」を読むなら,先に前作を読むべきだろうと思い,「羊たちの沈黙」を読む(映画は公開時に観たが,原作は未読だった).
 翻訳の拙さを補って余りある,良くできたサスペンス小説である.
 読み終えたら映画ももう一度観たくなったので,ビデオを借りた.
 映画化された小説の多くがそうであるように,この映画も原作に含まれる挿話の大胆な省略・組換え・単純化がなされており(タイトルの由来となったエピソードすら単純化されている),原作の深みが失われていることは確かだが,それでもかなり健闘していると思った.犯人のアジトが発見されるシーンのミスディレクションの効果は,映画ならではのものであるし.
 映画も原作も高水準という珍しい事例.

2000/07/15 GESO