[ライヴ・インターネット生中継]
　何年か前に坂本龍一のライヴをインターネットで生中継したという話だが，そのときは一般のユーザーも見れたんだろうか？　通信インフラは今以上に貧弱だった筈だから，かなり恵まれた環境にいなければ個人で見ることはできなかったんじゃないだろうか．
　その頃と較べれば結構な時代になったもんだ，と思いつつ，７月30日「椎名林檎地元福岡から一夜限りのライヴ・インターネット生中継」ってやつをチェックした．
　まず，最初からなかなか当該サイト（東芝EMI内）に繋がらない．鬼のようなアクセス件数なのであろう．結局，開演予定時刻18時を20分以上過ぎてから漸く繋がる．もう始まっちゃったかなと思ったらそんなことはなく，「開演が遅れている」旨のコメント．Windows Media Playerを起ち上げて中継を待機．結局，予定より40分遅れての開演．
　映像が小さいうえに動きはトロいし，音質はカセット並だし，音は飛ぶし，ノイズも入る．一番ひどかったのは，途中で一度バッファの解放のために映像も音も10秒間ぐらい中断したこと−−あ，それって半分以上は当方のハードが非力でドーモスイマセン状態なためなのですけどね，まだまだ快適な生中継への道は遠いわい，と思った....向こう数年以内に解決されちゃうかも知れないけど．
　まぁ，生ホンバンを電話代だけで覗き見できて良かったわ，と思うことにしたい．
　肝心の中身であるが，書き出すと切りがないのでポイントのみ．
・林檎のヴォーカルは今一つ熱が入ってなかった．中盤でギターを持ってからはやや持ち直したが，結局テンション上がり切らず．先頃のツアーもそんな感じだったとの噂．どうしちゃったんだろう．
・バッキング（今回のバンド名は「虐待グリコーゲン」）は問題ない．巧すぎるかも知れない．
・気に入った演奏は「サカナ」と「浴室」（バンドアレンジ版）か，第一印象としては．
・しばたはつみの「マイ・ラグジュアリー・ナイト」をカヴァーしてたのは意外だったが，作詞作曲の来生姉弟作品が元々好きらしいから，納得はいく．
・正味60分のライヴでチケット１万円（座布団付きだそうだが）ってのは，幾ら売れっ子とはいえ，アコギなんじゃないかい....ダフ屋が幾らで売ってたのか，想像するだけで恐ろしい．
・キモノの振付けが入る「積木遊び」を最初に持ってきた都合からか，メンバー全員（ドラムスまで）終始キモノ姿で演奏．さぞかし暑かったことだろう．途中で着替えりゃいいのに．

[阿漕な商売]
　「幻の名盤解放同盟」の活動にはかねがね敬意を表してきた俺だが，去年の「幻の名盤解放歌集」14枚組ボックスと，今度出る「同・お色気編」６枚組ボックスの売り方については，批判がある．
　要は，既発表のアルバム群に１枚だけ未発表盤のオマケを付けて売るという，ファンの足下につけこんだ商売なのだな（「お色気編」の場合は，更に既発表のうち１枚も，元々２枚だったものをレアトラックを交えて再編集した特別盤らしい）．これってやっぱりアコギなんじゃないかい？
　PSFの「三上寛ボックス」13枚組などは，オマケのレア盤３枚と最新録音盤１枚を含んでいるけれど，最新盤１枚については単独でも同時発売だというから，まだ良心的な売り方であろう．もっとも「作品集」としての意味合いが全然違うから，較べるのもナンであるが．
　「解放歌集」の場合は，ボックス販売後（もちろん予約限定生産．追加生産の話もあるらしいが），こそこそと（と敢えて言う）オマケの１枚を単独販売しており，これまたせこい．
　同盟の湯浅学氏に抗議したいのだが，メールアドレスを知らないので，知ってる人がいたら教えてください．

[白石民夫ソロ]
　７月29日夜９時過ぎ，新宿西口小田急ハルク前歩道橋上で40分程の生演奏．先日の小山博人発言（「サックスが歌うようになった」）には疑問だったが，今回はなるほどと思った．以前よりも音程が拡がり，緩急の変化に富んでいる．イコール「歌っている」ということでもないのだが，伸びやかさは感じられる．屋外での演奏だからか？
　もとより，屋外と屋内の違いは大きい．
　屋外では，開放感や，環境とのコントラストを楽しむ（今回のように）．
　屋内では，緊張感や，他人の行為とのコントラストを楽しむ．白石氏の演奏の場合は，それ以前に，壁からの反響音と相俟って鼓膜をびゃくびゃく震わせるサックスの高音が快感（アンプラグドだけど，これはノイズ系の楽しみ方と共通する）．
　ともあれ，この日この時分は暑さも一段落し，強く吹く風はむしろ肌に心地よく，熱心なお客ありの，拍手ありので（白石氏目当ての客はキッドのときよりもむしろ多かったようだ），良いライヴだったのではないだろうか（ただだし）．
　気持ちよくて眠ってる人もいた（特に名を秘すが鈴木健雄）．

2000/07/31 GESO