タイトル | : 2000/11/03■035 インビジブル |
記事No | : 135 |
投稿日 | : 2013/10/05(Sat) 10:04:16 |
投稿者 | : 管理人 |
[両棲類の神経系を用いたバイオコンピュータゲーム機とでも言うべきか] デイビッド・クローネンバーク『エグジステンズ』をビデオで観た.ロードショーは今春だったかな. 俺は『エム・バタフライ』も『クラッシュ』も見逃したので,『裸のランチ』以来ということになり,えらい久しぶりだけど,全部同じと言えば同じ,相変わらずのクローネンバーク節であった. 生体ケーブルで身体とゲーム機を直結してRPGをするが,仮想現実と現実との境界が曖昧になり....というありがちな設定を含む,いかにもB級なSF映画で,全体としては『未来世紀ブラジル』みたいな入れ子構造の筋書きになっている(これって「夢落ち」の変形なのかしら). メカがみんな内臓っぽいグニョグニョしたもの,あるいは動物の骨を組み合わせたものであるところや,ケーブルを脳に繋ぐんじゃなくて,腰椎付近に穴を開け脊髄に繋ぐところなんかが,とてもこの監督らしい.双頭の奇形トカゲ(可愛い)を始めとする突然変異動物たちの造形も. なんてったって,臍の緒を思わせる生体ケーブルの先っぽを,肛門を思わせる背中の穴に突っ込んで「ああっ」とか言っちゃうんだから,分かりやすいですね.『ビデオドローム』にもこの「入っちゃう」感があったっけ. ....だが,この監督は,変態的に見えても,実は「人間にとっての現実とは何か」を問い続けているような気がして,悪くはないが,少し生真面目すぎるんじゃないかと思う.
[原題は "HOLLOW MAN"(中空の人)] で,ポール・バーホーベンの『インビジブル』を映画鑑賞. 透明人間開発プロジェクトが何を目的とするものなのかはよく分からないが(軍事利用を示唆する描写も無くはなかったが),「透明人間の映画を作ること」について言えば,その目的は「人間性悪説を証明すること」にあるようだ.透明になれたら悪さをするに決まってる,というわけ.俺もそう思う. それを深刻に描くのではなく,「ま,人間なんて所詮そんなもんでしょ」と言わんばかりに軽く描く――自分の悲観主義について楽観的なのが,バーホーベンのええところである. 「瞼がないから眩しい」って,あんた,そもそも眼球から何からみんな透明なのになんで物が見えるのよ,といった野暮な突っ込みは『空想科学読本』当たりにお任せして,悪のヒーロー透明人間の暴走ぶりを楽しむのが正解でありましょう. 一応最後は正義(というほどのもんではない)が勝つけれど,これはまぁお約束であって,力が入ってるのは例によって悪趣味なエログロバイオレンス場面だ.「SFXだけでも観る価値がある」という噂もまんざら嘘ではない.大変な無駄遣いという感じが良い. そういえば,『スターシップ・トゥルーパーズ』も,愛国青春SF映画(何じゃそりゃ)の外見を装いつつ,それをおバカに描くことでアメリカン・ウェイをコケにし,本当はこれがやりたいだけさと,スプラッタな戦闘シーンを思う存分描いた快作だった. バンホーベン監督には,これからも「お約束は守るから,後は好きにやらせてもらう」という,職業人としての正しい態度で,ハリウッドを下品のどん底に突き落とす映画を作り続けて欲しいものである.
2000/11/03 GESO
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