タイトル | : 2002/05/28■079 継ぐのは誰か |
記事No | : 179 |
投稿日 | : 2013/10/05(Sat) 11:51:37 |
投稿者 | : 管理人 |
[マキとベニンク] 5月23日,新宿ピットインで浅川マキ(vo)+ハン・ベニンク(ds,per)+山内テツ(el-b)+生江匠(ts)のライヴ.一期一会の即興演奏ということだが.... ベニンクを観るのは22年ぶりだったが,60歳を迎える現在でも元気溌剌.なんか,表情に疲れが見え出しても動作はスローダウンしないのだな.キャリア40年を超えると,体も自動的に動くのでしょう.この日の演奏は,余裕で共演者に合わせてあげてるって感じで,オーソドックス.もちろん例によって床を叩き回ったりもするのだが. 山内を観るのも実に久しぶりだったが,ベースにファズをかけてギターっぽく演奏していた.だけど,ロックのルーティーンに終始しており,退屈. 生江は初めて観たが,20代(多分)の割には堂に入った演奏.だけど,こちらはフリージャズのルーティーンに終始しており,個性は感じられず. これら3人の演奏者たちのソロ,デュオ,トリオ演奏が,特にセットを決めるでもなく,流れのままに展開され,それに時々マキのヴォーカルが絡む形.20年以上前のロックとジャズのフリー・セッションの趣であった. マキはやはりフリーフォームの集団即興演奏には向いてないみたいで,男たちの演奏に余りうまく入って行けない様子だった.ヴォーカルは,持ち歌の旋律を適当に変えたものが多かった.まぁ,替え歌というか,フェイクというか. コンサバなマキ・ファンの俺としては,彼女のリード・ヴォーカルをフィーチュアした,普通の演奏の方がなんぼか良いな. 因みに,山内テツファンと思われる若い連中――どこから湧いて出たんだ?――のマナーの悪さ(失礼な野次・執拗なアンコール・大声・大笑い)にはうんざりした.
[最近のトホホ] 飲んだ帰りの大学生と思しき男性二人連れとすれ違ったとき聞こえた会話. 「ねえ,リストラって略語だって知ってた?」 「えーっ,本当? 何語?」
[詩のボクシング] 倉地久美夫が福岡県チャンピオンとして出場するというので,第2回「詩のボクシング」全国大会を観に行った(6月26日イイノホール). 「詩のボクシング」というのは,1997年に発足した〈ボクシングに見立てたリング上で、2人の朗読ボクサーが交互に持ち時間3分で自作を肉声のみで朗読し、ジャッジが、どちらの朗読ボクサーがより観客を引きつけたかを判定し、勝ち負けを決める「言葉の格闘技」〉である(チラシより).形式としては,2人の朗読ボクサーが10ラウンドを闘うタイトルマッチや,2人の朗読ボクサーが組むタッグチーム同士で闘うタッグマッチ等様々だが,今回は,各地区大会で優勝したチャンピオン16名によるトーナメント戦である. テレビや雑誌で紹介されているのを何度か目にしたことはあるが,生で観るのは初めて.キャパ700人余りの会場は満員.客の年齢層は20代〜60代ぐらいだが,30代より上が多い印象.3,000円も払って朗読を聞きに来る人間がこんなにいるということに,ちょっと吃驚. さて,試合であるが,1回戦8試合が終わった時点で,ジャッジ――島森路子,山田五郎,安斎肇,しりあがり寿といった主にチャラい方々計7名――の反感さえ買わなければ,倉地が優勝するに違いないと,俺は確信した. というのは――あくまで俺の目で見てだが――参加者の中で聞くに値する朗読者は精々5人――その中に1回戦で敗退した者もいたことから,俺は今回のジャッジは信頼できないと思い,回が進むに連れてその思いは強まったのだが――であり,その中で倉地は群を抜いていたからである. ジャッジ側は「今回の闘いはレベルが高い」と言い募っていたが,俺側としてはこの程度でチャンピオン?と疑問を抱かずにはいられないレベルのものが多く――それじゃ詩じゃなくてコントだろうが,と突っ込みたくなるものやら,中学生の作文並みのものやら――正直言って呆れてしまった. まぁ,詩の内容や朗読の巧拙よりも,「いかに聞き手の心を掴んだか」が評価のポイントらしいので,結局キャラクターとパフォーマンスで勝負は決まるわけである.これでは,奇を衒った連中も出て来ようというものだ.これをもって朗読ブームというのであれば,随分とお寒いもんではある. まぁ,それはともかく,そんなジャッジであるにも拘わらず,倉地は俺の予想どおり優勝した.めでたい. 彼のパフォーマンスは,普段はギターを弾きながらやっていることを楽器なしでやっただけ....と言ってしまえば身も蓋もないけれど,事実である.朗読した作品も,持ち歌の歌詞を基にアレンジしたものだったし.歌手=パフォーマーとしてのキャリアを思えば,こうした大会に出場してトロフィーをかっさらって行くというのは,ちょっとズルイという気がしないでもないけれど,実力で勝ち取ったのだから,文句言われる筋合いはないわね. 彼の「正体」を知っているジャッジはいなかったようで,「朗読以外の分野でも活躍できる人だから,是非挑戦してほしい」とか,「貴方の歌を漫画にすることは可能だけど,絶対売れないでしょう」(これはしりあがりの言)とかコメントしていた.会場の倉地ファンは皆,苦笑したことであろう. 倉地以外でちょっと気になった存在は,広島チャンピオンで準決勝まで進んだ寺内大輔.最後まで即興の音響詩で通した姿勢はそれなりに潔いし,どの作品も同じには聞こえないよう工夫を凝らしていた点も評価できる.もっとも,観客の受け方は「お笑い」に近いものであったけれど.まぁ,ハングル――実際には非言語だが――でホームコメディを演じてるようにも見えるし,ポーカーフェイスで通していたのは演技なのかも知れないが. それにしても,準優勝の女性 うみほたる(この名前だけでも勘弁してほしい気分.一人称が「ぼく」ってのもなぁ....)は,過大評価されてる気がした.いかにもポエムポエムした作品群ではあったが,はっきり言って凡庸.文学通と思われる山田五郎も,ジャッジ中唯一本職の詩人――俺は読んだことないが――八木忠栄も褒めそやしていたけれど,どうかと思いました.
2002/05/28 GESO
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