タイトル | : 2004/03/30■099 映画覚書き |
記事No | : 199 |
投稿日 | : 2013/10/05(Sat) 14:37:25 |
投稿者 | : 管理人 |
[最近観た話に絞る] 新旧問わずバカ映画ばかり――期せずして. まぁ,山口雄大監督『地獄甲子園』に関しては,バカ映画だと分かって観たが.日本の漫画に積極的に影響された『少林サッカー』に逆影響された作風は面白くないこともないが,縮小再生産と言おうか,余りにショボい. ミシェル・ゴンドリー監督『ヒューマン・ネイチュア』とスパイク・ジョーンズ監督『アダプテーション』の脚本は共にチャーリー”マルコ穴”カウフマンだが,この人は毎回「予想もつかない展開」の物語を期待されているらしい.だが,前者は分かりやすい風刺映画で予想がつく落ちだし,後者の,脚本家自身が主役で登場して作品自体が自己言及的になる苦し紛れの展開も,予想の範囲内だ.プレッシャーきついんだろうな.... いずれも新人の作品だったら採用されそうもないプロットなのにしっかり映画化されてるんだから,一発当てた人は得ですね.バカ映画だけど. ロバート・ロドリゲス監督『レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード』を観る予習として,前作『デスペラード』(ブシェミとタランティーノが殺られ役で出ているところがお楽しみ)と,その原形である『エル・マリアッチ』もビデオで観たのだが,これら3作は正・続といった関係じゃなくて,改訂版というか,焼き直しである.しかし,こんな凡庸な話を3度も作り直すなんて,監督はよほど個人的な思い入れがあるんだろうな.「ラリラリ東京」を2度もリメイクした信楽順みたい.大雑把に言えば,いずれも「ギター(のケースに入れた銃砲類)を持った渡り鳥」による血腥い復讐譚.ストーリーの破綻具合も往年の日活アクションに通じる,バカ映画です. ラース・フォン・トリアー監督『奇跡の海』をバカ映画呼ばわりするのはどうかとも思うが,あのラストのトンデモ感は三池崇史監督『DEAD OR ALIVE 犯罪者』のラストに通じるみたいな.... 勿論両監督とも確信犯に違いないけど.前者は主役エミリー・ワトソンの凄まじい演技だけでも観る価値があるし,後者は往年の日活「ニュー」アクションをノワール化した上に岩井俊二のパロディなどもまぶしてて満腹感あり.バカ映画です. メル・ブルックス監督『プロデューサーズ』は,ブロードウェイの裏側を描くドタバタ喜劇.劇中ミュージカル『ヒトラーの春』のシーン一つとっても笑える.バカ映画なのに凄く奥深いもののように錯覚させるところが,流石.'68年に既にこんな傑作があるんじゃ,今どきの作家たちは敵わねーな...と悲観的にもなる. バカ映画とは言い難いものも観た. フルーツ・チャン監督『ハリウッド☆ホンコン』は,ハリウッドというよりもヨーロッパ志向.ジャン=ピエール・ジュネ調の黒いコメディで,やたら達者な作り. デイヴィッド・クロネンバーグ監督『スパイダー』は,意外にも地味な文芸作品であった.統合失調症の主人公の主観描写を映像化する試みは面白いのだが,期待したほどの成果が感じられないのはなぜか? ソフィア・コッポラ監督『ヴァージン・スーサイド』は抑制の利いた演出で描かれる喪失感が鮮烈な処女作. ロブ・マーシャル監督のダーク・ミュージカル『シカゴ』を観ると,今日的な俗悪マスコミは既に1920年代に確立されていたことが分かる.舞台シーンと現実シーンのなだらかな相互移行,キャサリン・ゼタ=ジョーンズを始めとする俳優たちの歌と踊りがお見事. アンドリュー・ラウ監督『インファナル・アフェア』は――ホントにリメイクする気があるのかどうかは知らんが,とにかく――ハリウッドがリメイク権を買ったというのも納得できる,『フェイク』似の「良くできた」作品.確かに,ブラピ主演で,より派手なアクションにして,ベッドシーンを加えれば,ハリウッド版一丁上がりで,グローバル・ヒットも狙えるだろうが,それって香港映画である必要もないってことだな.ヨーロッパ映画の文法で作られていながら欧米映画に置換不能の『ハリウッド☆ホンコン』の方が遙かに魅力的. 石井隆監督『花と蛇』は,「O嬢の物語」――映画版は未見だけど――がそうであったのと同様,エロというよりもファンタジーと呼ぶべき映画.東映作品ながら「ロマンポルノ」と称するのが相応しい.杉本彩は,華はないけど凄く頑張ってて,今後はもうどんな役でもできそう.障害者手帳2級をゲットして復活した卯月妙子も端役で出演. リドリー・スコット監督『マッチスティック・メン』は,詐欺師たちを描いた作品だが,この監督らしからぬ地味な出来.ニコラス・ケージってやっぱり巧いなーとか,低予算なのに丁寧に作ってるなーと感心はするけど,そもそものお話がかなり無理めなところが難.ちょっと納得できない. とにかく最低だったのは,飯田譲治監督『ドラゴンヘッド』で,これを映画と言っては映画に対して失礼だと思うが,どうか?
2004/03/30 GESO
|