[リストへもどる]
一括表示
タイトル2004/11/23■106 忘れてました
記事No206
投稿日: 2013/10/05(Sat) 14:43:59
投稿者管理人
[不磨に非ず]
 フマキラーの「フマ」とは何か?
 長年謎だったが,11月2日朝,フマキラーの夢――内容は忘れた――から覚めた瞬間,閃いた.flyとmosquitoとantの頭文字を並べたものに違いない,と.
 で,今更ながらネットで調べたところ,「FLY+MOSQUITO+KILLER」ってことらしい――それじゃフモキラーじゃん.「A」はどこに行った?
 そもそもフマキラーの綴りってFMAKILLERでいいのか? 商品のどこにも記載がないし....
 メーカー自身のサイトにも説明がないので,謎は残されたままである.
 ちなみに,フマキラーの旧社名は大下回春堂,キンキョーの正社名は昔から大日本除蟲菊だそうだ.

[現実世界も異常だけれど]
 一歩退いて観察すると,電網世界のこの「誰もが己の報道官」状況って,かなり異常だと思う.異常と感じなくなるのは,単に慣れのせいなのだろう.
 何を今更,ではあるが,

[本の感想の1/4]
●スガ秀美+渡部直己『新・それでも作家になりたい人のためのガイドブック』・大塚英志『物語消滅論』・小谷野敦『評論家入門』
 スガって字はJISに無いので困るが,「糸」偏に「圭」である.
 『新それなり』(略称)は,旧版と変わり映えせぬ恣意的な構成でもって人気作家の小説の部分引用を肴に誰でも書ける程度の批判を並べ立て「小説」の「技術」を伝授しようという「教科書」.大層なもんだが,芸は無く誤植も目立つ.
 ベストセラーを出したことのない作家が『ベストセラー小説の書き方』みたいなハウツー本を出しても笑われるだけなのに,小説を実作してない文芸批評家コンビが小説のハウツー本を出しても顰蹙をかわぬどころか実際に一部で「教科書」扱いされているとは,全く世の中馬鹿ばかりという現実を再認識せざるを得ないのだけれど,これは標題を「書き方」みたいな直截な表現にせず「ブックガイド」と誤魔化した小賢しい配慮の賜物でもあるのだろう.
 あ,渡部の方は昔確か『ノートルダムのリゾーム男』とかいうこっ恥ずかしい「小説」を書いてるが,あんなもんの作者に小説のスキルがどーのこーの言われたくねーよってなもんだし,スガの方は賢明にも/無能にも?未だ小説は書いてないらしい――書かなくていいが.
 だけど,ご両人は元々蓮實のエピゴーネンなんだから,本家を見習って水準以上の小説をせめて一本は物したうえで小説作法を説いていただいた方が,説得力があって宜しいのでは――むしろ『それでもジャナ専講師になりたい人のためのガイドブック』でも書いた方が現実に即してるけども.
 彼らに較べれば,『キャラクター小説の作り方』や『物語の体操』といった,訓練すれば誰にでも書けるというシステマティックな小説のノウハウ本を著し本人もそれに則った実作を発表しつつも「近代文学」のやり直しを訴えるという矛盾を生きる大塚英志の方が,物書きとしては遙かに誠実と言うべきだろう――主張には同意しかねるとしても.
 で,小谷野本は「『○○入門』なんか読んでも○○になれる訳はない」という常識を身を以て示した入門書.「評論家評論」――永江朗の批評家批評みたくヌルくはない――をまぶした自伝風エッセイとして楽しむべきもので,馬鹿正直さの身も蓋もない大盤振舞は「もてない男」の面目躍如.
○望月諒子『神の手』・『殺人者』・『呪い人形』
 今春から2箇月おきに3冊も文庫リリースしたのに,余り話題になってない様子の新人作家.
 1作目は山上龍彦の文体と山田正紀のプロットで書かれた松本清張みたいな小説って印象だったんだけど,続けて読んだら,抽斗の数は結構多そうである.
 大森望の讃辞は例によって話半分に受け取るべきだし,ミステリマニアにとっては捻りが少なく物足りないかも知れないが,それでもこの「遅れて来た新人作家」の筆力はなかなかのもの.
 筆名・小説名・章題がいずれもやぼったいことや,好感を持たれるかどうか疑わしい著者近影を出してる所が,マイナス点.

[映画の感想の3/4]
●ロブ・ミンコフ『ホーンテッドマンション』
 愚作.
○イ・ジョエン『スキャンダル』
 冬ソナ見ぬままヨン様初体験.悪くない役者じゃないの.お話はラクロ『危険な関係』の翻案で,李朝末期朝鮮の貴族恋愛譚.洋の東西を問わず色恋沙汰で死ねるのは有閑階級の特権だってことが分かる.恋愛と生活とは対立するもの故,貧乏人には「恋に死ぬ」なんて真似はできないのである.
●塚本晋也『六月の蛇』
 モノクロで撮ったりしてちょっとスカしてるが,モロにっかつロマンポルノ.神足裕司が素人ながらいい味出してるが,台詞回しと濡れ場は下手すぎ.
○石井克人『茶の味』
 このゆったりとしたリズムについて行けなければひたすら苦痛な140分だろうが,辛うじてついて行けたのは,取り留めもない挿話の積み重ねなのに整合性を感じさせたり,極端に漫画的な表現なのに違和感を感じさせなかったり,巫山戯てるのにシミジミ感を醸し出したりと,要するに上手に作られているから.もっともこの巧さは,いいとこ取りの借景で日本の四季の美しさを描いたり,舞台が農村なのに百姓も農作業も出してこなかったり,有名人をさりげなくチョイ役で出してきたりといった小狡い技にも支えられているわけで,結構イヤラシイのだが.
○矢口史靖『スウィングガールズ』
 『ウォーターボーイズ』と同工異曲ってことは観る前から分かっててもそこそこ楽しめるのは,石井克人同様「巧い」からである.『スクール・オブ・ロック』のショボいジャズ版みたいなもんだが,同じ馬鹿映画でも間違った思想のロック映画よりは無思想のジャズ映画の方がなんぼかマシ.
○ティント・ブラス『桃色画報』
 全6話のオムニバス.臆面もない性の讃歌というよりも「儂ら伊太利亜人はこんなにド助平なんじゃ,どうだ参ったか」と自慢してるかのようなエロ映画.映像的には性器丸出し(日本版はボカしまくり)のハードコアだが,お話はあっけらかんとした艶笑コント集の趣で,実に他愛ない.それにしてもこの監督――エロスの巨匠だとか――のお尻好きは本物だなーと感心させられるキャメラアングル.
●本木克英『ドラッグストア・ガール』
 スポーツコメディ.ラクロスものって少なくとも邦画では初めてか.演出がかったるい.見所は田中麗奈ではなく,柄本明,三宅裕司,伊武雅刀ら脇のおぢさんたちが演じる大人げない商店街店主たち.
●吉岡逸夫『戦場の夏休み 小学2年生の見たイラク魂』
 『笑うイラク魂』の続編.イラク庶民の生の声を尋ね回ったドキュメンタリ.別に行きたくない娘を無理矢理連れて行った感じ.それにしても,去年の夏時点では家族連れでイラクに入れたのか....えらい昔のような気がしてしまうが.
●パティ・ジェンキンス『モンスター』
 監督は敢えて坦々と描いたのだろうが,主人公に売春と殺人の他には選択肢がなかった背景を,やはりもう少し踏み込んで描き出すべきだったのでは.シャーリーズ・セロン入魂の演技のみで引っ張った感じ.
○マーク・ウォールバーグ『ミニミニ大作戦』
 『スパイ大作戦』を思わせる泥棒アクションで,レトロだなーと思ったら,1969年版(未見)のリメイクだそうで,納得.テンポ軽快で楽しめる.シャーリーズ・セロン,確かに『モンスター』と同一人物には見えない.体重13kg増減ってのはやはり大変なことなのね.
○ジュリー・テイモア『フリーダ』
 「なんで誰もあの眉毛のことを言わない!」と登場人物たちに突っ込みながら観たけど,最後の方でちょっぴり言及があって安心(なんで?).メキシコに亡命中の老トロツキーとフリーダが親密だったという史実は知らなかったので,へえ×3.
●パク・チャヌク『オールド・ボーイ』
 主人公が15年間も監禁された理由が謎で,結末は衝撃的,という宣伝だが,俺にはこの種のタブー感――としか,ネタばらしになるので言えない――が無いので,何を大袈裟な....としか思えず.タランティーノのツボにははまったみたいだし,『セブン』で衝撃を受けた程度の観客層になら受けるだろうけど,今イチ.土屋ガロン+嶺岸信明による原作の内容を殆ど忘れてたので漫喫で読み返したところ,ディテールはかなり原作に忠実だったが,肝心の監禁の理由は全然違ってた.変えた理由も映画的には無理からぬ気もするが,全体的な面白さではやはり原作が勝る.
●松尾スズキ『恋の門』
 ショートコントを積み重ねたみたいな作りのくっだらない映画だが,全く期待してなかった分,楽しめた――要求水準は常に低い方が幻滅が少なくてお得,というのが俺の幼少時からの人生訓.何も考えずに笑って観るべきでしょう.松田龍平の演技が初めて違和感なく見れたってことは,彼が馬鹿映画向きだってことかも知れぬ.
●山川元『東京原発』
 反原発啓蒙番組と核ジャックサスペンス映画を無理矢理くっつけた怪作.テレビの2時間ドラマ枠で充分な内容だが,テレビじゃ反原発ドラマなんて無理だから,映画にしたのだろう.低予算なのによく頑張った...ぐらいしか誉める言葉がないのが残念.
●●紀里谷和明『キャシャーン』
 どんなにつまらない映画でも観始めたら一応最後まで観ることにしてるんだけど,本作に限っては余りの苦痛から挫折.映画にもお話にもなってませぬ.この監督は自作のどこが悪いのか下手すると一生分からない人かも.写真家だけやってりゃ良かったのに.唯一良い点は,これを観た後では他のどんな映画でも良く見えること.
○ティム・バートン『ビッグ・フィッシュ』
 人を幸福にする嘘ならいくら吐いても構わない,という真実を描いて普通に感動的な映画.フェリーニ色あり.バートンも丸くなったなぁという印象.
●デビット・コープ『シークレット・ウインドウ』
 スティーヴン・キング原作のサイコ・ホラーだが,小説とは結末が違うらしい(未読).いずれにせよ,映画版は途中で先が読めてしまう――井筒監督ですら読めた――ので,衝撃の結末とはならない.ジョニー・デップの達者な演技を堪能すべき映画――ジョン・タトゥーロのサイコぶりもいいけど.本作を観て「デップは仕事を選ぶべきだ」と苦言を呈した批評家がいたが,仕事を選ばないのはむしろ彼の美点であろう.
○ルーカス・ムーディソン『エヴァとステファンとすてきな家族』
 70年代後半のスウェーデンのコミューン――まだそんなことやっとったのかって感じだが――を舞台に,身勝手で大人げない大人たちと,それを反面教師として育つ子供たちの日常を描いた映画.宣伝のような「ハートウォーミングな」作品じゃなくて,むしろダークなところが良い.一応ハッピーエンドだが,まぁ人生何とかなるもんだよ先のことは分からんが,みたいな投げやりな楽観主義に裏打ちされている.ちなみに,ロリ系メガネっ娘好きなら必見でしょう.
○ナイジェル・コール『カレンダー・ガールズ』
 ヨークシャー在住の婦人会の仲良しグループが,メンバーの亡夫を偲ぶために自分たちの(熟年)ヌードカレンダーを作ったという実話に基づく映画.カレンダーは大ヒットして白血病研究基金に寄付できるわ,ハリウッドには招かれるわ,町興しにはなるわで,めでたしめでたし.嫌味のない演出で爽快な良く出来た映画.
○犬童一心『死に花』
 高級老人ホームの不良老人たちが,銀行の金庫から17億円を奪うお話.予告編からは余り期待してなかったのだが,オーソドックスながらも綺麗事に終わらせない演出で,なかなか良かった.山崎努,藤岡琢也,谷啓ら老境の俳優たちの味わい深い演技を見て,この人たちが消え去る頃には日本映画は終わっちゃってるかも知れないな,と思う.演技なのか地なのか判らない森繁のボケぶりも,今や貴重な映像記録.

2004/11/23 GESO