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タイトル2004/12/30■107 暮れ暮れタコラ
記事No207
投稿日: 2013/10/05(Sat) 14:45:10
投稿者管理人
[忘年会ラッシュ]
 代々木駅改札近くで群れなしてた親父たちの会話が耳に入る.「これからは忘年会じゃなくて望年会と呼びましょう」てな内容.前向きな発想なんだろうが,何だかなぁ...
 生まれて二度目の参加となる高校同窓会.17〜18名出席.25〜30年振りに再会した方々が多く感慨深いものもあったが,会場となった青山の某店――同窓生が経営する有名な和風フレンチレストランとか――のメニューは,フレンチというよりも安手のイタ飯屋風で,味は大手チェーン居酒屋並み,値段はその1.5〜2倍で,一人当たり7,000円超(これでも負けてもらったらしい).高いのは場所代かも知れんが,何にせよアンリーズナブル.
 その翌日,友達10人で忘年会.御徒町「おかってや」は,一人当たり4,000円ちょっとで済みリーズナブル.肴も旨かったが,食べ切れず残してしまい,皆年とったんだな...と感じる.結局三次会まで行って(最後は3人)朝帰り.
 一日おいて,職場有志5人で忘年会.大手町ビル内の普通の居酒屋.可もなく不可もなく,一人当たり5,000円ちょっと.世間相場か.

[居酒屋漂流]
 それにしても,無粋な再開発の所為で中目黒の「ばん」が12/28で閉店とは,勿体ない限り.いつまでも酩酊していたくなる,飲兵衛の夢の揺り籠みたいな恐ろしく居心地良い居酒屋だったのに...
 振りの客でも即馴染める,活気溢れる店内は,午後4時開店と同時にほぼ満席となり,更にひっきりなしに客が訪れる.
 肴はどれも安くて美味いが,豚の尾を辛く煮込んだ「とんび」が絶品.
 従業員の動きは皆キビキビしてるし,常連客も年季入っててイカしてる――長い人は40年間通い詰めだとか.
 今はただ,無くなる前に2度行けた幸福を反芻するのみ.
 12/29,今年最後の居酒屋研究会ということで,F氏と四ツ木を再訪.
 雪が降る中,ようやるなあと思うが,今年は颱風の最中も北千住を飲み歩いたのだった.全天候型飲み助 All-weather Drinkers ――訳してどうする.
 「ようきや」「とりあえず」「吉か」と巡り,更に浅草まで足を伸ばす.目当ての「ぬる燗」が満員で入れず,「あっぱれ」でお茶を濁し,解散.
 今年初めて訪ねた店の数は40を超えており,結構な数だと思うが,これは旧い居酒屋が次々に潰れていくので早く行っておかねばという,焦燥感の表れでもあるのだった.

[色んな感想の3/5]
△グレゴー・シュニッツラー『レボリューション6』
 半数は堅気になり今ではバラバラの元・アナーキスト集団のメンバーが,昔仕掛けた爆弾が偶々爆発したため,証拠を隠滅し逮捕を免れるべく再び結集するという,一種の青春グラフィティ映画.アナーキスト活動をしていた場所が,例えば五月革命当時の巴里という設定であったならば,「現在」もやや古い時代に設定せざるを得ずノスタルジー映画になっていたかも知れないが,東西独逸統一前の80年代西伯林という設定にした所為で,リアルタイムな映画になし得た.でもまぁ,若い観客にとってはどっちでも大差ないかも...
△ブライアン・デ・パルマ『ミッション:インポッシブル』
 公開当時はどうせ能天気なスパイアクションだろうと思って観なかったのを今更DVDで観たところ,さすがパルマ版,テレビ版とは全然違うダークなお話にねじ曲げてあって存外に良かった.フェルプスくんの扱いなんて酷いから,純朴なファンなら怒るかも.「時をかける少女」に対する筒井自身の「シナリオ・時をかける少女」みたいな汚し方.
△『四谷くんと大塚くん〜天才少年探偵登場の巻』
 演出堤幸彦・脚本蒔田光治・製作磯山晶によるTBS特番だったらしい.『コナン』レヴェルの少年探偵もの.テレビ屋らしい雑な作りだが,そこそこ楽しめる.続編はできるのか?
△サン・マー・メン『ザ・ゴールデン・カップス ワンモアタイム』
 二部構成の前半は,「ヤング720」等テレビ番組での演奏シーン,関係者やファンの証言,ニュース映像等のパッチワークで,60年代末期ニッポンのドキュメンタリとしても結構面白かったが,後半,31年振りの再結成ライヴコンサートの模様は,ソツのない熱演なのに,眠くなってしょうがなかった.俺にロック魂が無いせいだろうが,そんなもん要らんしなぁ...
 カップスで一番格好良かったのは演奏・ルックス共にルイズルイス加部だと思うが,元々リードギタリストだったのに,デイヴ平尾が引っ張って来るときに無理矢理ベースに転向させた結果,あの「リードベース」が生まれたというのが,ちょっといい話.
△池田敏春『ハサミ男』
 機会あって試写会で観た(公開は来年3月).あんな仕掛けのある原作をどうやって映像化するのか興味あったのだが,成程こうするしかなかろうと納得のいく設定変更によって何とか難関をクリアしていた点に,まず感心.しかし,この変更に伴って原作のシニカルな持ち味が失われ,ラストなど,何だか「いい話」だったみたいな錯覚すら与えられる――意図的なもんだろうけど.まぁ,これが「一般映画」の限界か.主役のトヨエツと麻生"キャシャーン(トホホ)"久美子の演技に関しては「?」だが,阿部寛は適役――いつもと同じなんだけど.
 てな訳で,これは『人魚伝説』みたいな怪作を期待する向きには期待外れだが,原作を読んでいない人にはお薦めのサイコミステリ.久美子のゲロ吐き演技にでも痺れてくれ.
 そう言えば『姑獲女の夏』も来年公開らしいが,あれもどう映像化するんだろうか.瞠目せず持つ.
△ダニー・ボイル『ヴァキューミング』
 電気掃除機セールスマンの売上げ競争を描いた英国らしいブラックコメディ映画.ティモシー・スポールのひたすら暑苦しく狂騒的な怪演に当たっちゃう...
△ピーター・コリンソン『ミニミニ大作戦』
 先にリメイク版を観てしまったが,これが69年製作の原型.こっちの方がプロットは単純――と言うか,粗雑――だし,前半の展開がかったるいが,後半,金塊強奪シーン以降は一気に魅せる.総合評価としてはリメイク版が上だけど,カースタントに関しては負けていない.全部実写だし.
 それにしても,泥棒映画って,つまんないと思ってもついつい見入ってしまうのは何故だろう.
△スティーブン・ソダーバーグ『オーシャンズ11』
 で,これまた泥棒映画(のリメイク版).公開当時非常に不評だったらしいが,懲りずに続編も来月公開予定.ジョージ・クルーニー,ジュリア・ロバーツ,ブラピらの豪華キャストに過大な期待を抱かずに観れば,紋切り型の金塊強奪ものとしてそこそこ楽しめるが,一言でいって凡作.ソダーバーグって,俳優たちには評判いいらしいが,俺はどこがいいのかよう分からん.
●●綾辻行人『暗黒館の殺人』上下
 京極の『陰摩羅鬼』のときも思ったが,真っ当なファンだったら作者をスポイルせずに「つまらんもんはつまらん!」とブーイングすべきなんじゃないか.本作も古き佳き本格推理のガジェット満載の「バカミス」として読めば読むに堪えようが,いかんせん無駄に長いし,この長大さに耐え得る文体ではない――下手と言わないまでも味気ない――ので,読了後大変な徒労感を感じざるを得ない.さんざん待たせといてこの内容ですから....残念!
●山口泉『永遠の春』
 この人のは初めて読んだ.生殖が国家に管理されている近未来が舞台の「純文学」.はっきり言って下手.同じテーマなら誰かもっと巧い人――佐藤哲也とか――が書いた方がマシ.
△ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア『すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた』
 ユカタン半島のキンタナ・ローというマヤ族の住む町を舞台にした,SFとかファンタジーと言うよりも「海洋怪異譚」.一見軽いようで深みのある佳品なるも,連作3編というのは短すぎて物足りない.この倍ぐらいは欲しかったところ.
△山田宗樹『直線の死角』△『嫌われ松子の一生』○『天使の代理人』
 作品数も少ないし――あと2冊未読だけどどこでも見掛けない――地味な作風だが,どんどん職人芸的に巧くなってるし,どんなテーマでも書けそうなので,もっと注目されていい作家だと思う.一番売れたらしい『松子』にしても,プロットは陳腐な転落譚なのに,一気に読ませる力量あり.荻原浩にちょっと似たタイプか――あっちの方がまだ多作だが.
△石持浅海『アイルランドの薔薇』△『水の迷宮』
 この人の作品の特徴は,殺人事件が起こるのに読後感が爽やかな所とか,犯人にも被害者にも共感できる所.キャラ作りが巧いのだな.多少の瑕があってもつい読んでしまう作家の一人.
△飛鳥部勝則『レオナルドの沈黙』
 前作『ラミア虐殺』はバカミスというかトンデモ系だったのに,今回は「読者への挑戦」付きの律儀な本格ミステリ――と言っても,今時の作品だからそんなにストレートじゃないんだけど.でもって,次回作は純粋ホラーになるらしい.よく分からないが,気になる作家ではある.
○グレッグ・イーガン『万物理論』
 ディストピア小説だと思って読んでたら,ハードSFなのにトンデモっぽいハッピーエンドを迎え,ユートピア小説だったことが判明.信じることと理解することの間の深い溝を乗り越える万物理論? 何だか楽観的すぎる気もするけど,奇矯なアイディアてんこもりで楽しめる.
 いくらバイオコンピューティングが当たり前の2055年という時代設定とはいえ,ヘソとノートパッドを屡々光ファイバで繋ぎデータ転送する様はおマヌケである.
○ジーン・ウルフ『ケルベロス第五の首』
 謎めいた「連作ゴシックミステリSF」.一度読んだだけでは分からない...
○カン『CAN DVD』○ジェントル・ジャイアント『Giant on the Box』△同『Scraping the Barrel』
 最早CDもDVDも殆ど買わないのだが,この3組に関しては全く躊躇なく購入.
 中では,74年と75年のライヴを中心に編まれたDVD『Giant on the Box』が万人にお薦めできる名演集と言えるが,あとの2セットはコアなファン向け.特に,デモテープ,リハーサル,メンバーのソロ,お遊び映像等を収めたCD4枚組(うち1枚は音楽CDではなくデータディスクで,MP3を中心に8時間半相当の音や画像データを収録)『Scraping the Barrel』は,断片集の趣だから,ケータイ待受画面や着メロにGGを使うくらいの好き者(←俺だ)以外には無用の長物であろう.『CAN DVD』も,ライヴとドキュメンタリ中心のDVD2枚+各メンバーによる別グループの音源を収めたCD1枚という3枚組で,普通の人なら胃もたれを起こすと思う.

2004/12/30 GESO[忘年会ラッシュ]
 代々木駅改札近くで群れなしてた親父たちの会話が耳に入る.「これからは忘年会じゃなくて望年会と呼びましょう」てな内容.前向きな発想なんだろうが,何だかなぁ...
 生まれて二度目の参加となる高校同窓会.17〜18名出席.25〜30年振りに再会した方々が多く感慨深いものもあったが,会場となった青山の某店――同窓生が経営する有名な和風フレンチレストランとか――のメニューは,フレンチというよりも安手のイタ飯屋風で,味は大手チェーン居酒屋並み,値段はその1.5〜2倍で,一人当たり7,000円超(これでも負けてもらったらしい).高いのは場所代かも知れんが,何にせよアンリーズナブル.
 その翌日,友達10人で忘年会.御徒町「おかってや」は,一人当たり4,000円ちょっとで済みリーズナブル.肴も旨かったが,食べ切れず残してしまい,皆年とったんだな...と感じる.結局三次会まで行って(最後は3人)朝帰り.
 一日おいて,職場有志5人で忘年会.大手町ビル内の普通の居酒屋.可もなく不可もなく,一人当たり5,000円ちょっと.世間相場か.

[居酒屋漂流]
 それにしても,無粋な再開発の所為で中目黒の「ばん」が12/28で閉店とは,勿体ない限り.いつまでも酩酊していたくなる,飲兵衛の夢の揺り籠みたいな恐ろしく居心地良い居酒屋だったのに...
 振りの客でも即馴染める,活気溢れる店内は,午後4時開店と同時にほぼ満席となり,更にひっきりなしに客が訪れる.
 肴はどれも安くて美味いが,豚の尾を辛く煮込んだ「とんび」が絶品.
 従業員の動きは皆キビキビしてるし,常連客も年季入っててイカしてる――長い人は40年間通い詰めだとか.
 今はただ,無くなる前に2度行けた幸福を反芻するのみ.
 12/29,今年最後の居酒屋研究会ということで,F氏と四ツ木を再訪.
 雪が降る中,ようやるなあと思うが,今年は颱風の最中も北千住を飲み歩いたのだった.全天候型飲み助 All-weather Drinkers ――訳してどうする.
 「ようきや」「とりあえず」「吉か」と巡り,更に浅草まで足を伸ばす.目当ての「ぬる燗」が満員で入れず,「あっぱれ」でお茶を濁し,解散.
 今年初めて訪ねた店の数は40を超えており,結構な数だと思うが,これは旧い居酒屋が次々に潰れていくので早く行っておかねばという,焦燥感の表れでもあるのだった.

[色んな感想の3/5]
△グレゴー・シュニッツラー『レボリューション6』
 半数は堅気になり今ではバラバラの元・アナーキスト集団のメンバーが,昔仕掛けた爆弾が偶々爆発したため,証拠を隠滅し逮捕を免れるべく再び結集するという,一種の青春グラフィティ映画.アナーキスト活動をしていた場所が,例えば五月革命当時の巴里という設定であったならば,「現在」もやや古い時代に設定せざるを得ずノスタルジー映画になっていたかも知れないが,東西独逸統一前の80年代西伯林という設定にした所為で,リアルタイムな映画になし得た.でもまぁ,若い観客にとってはどっちでも大差ないかも...
△ブライアン・デ・パルマ『ミッション:インポッシブル』
 公開当時はどうせ能天気なスパイアクションだろうと思って観なかったのを今更DVDで観たところ,さすがパルマ版,テレビ版とは全然違うダークなお話にねじ曲げてあって存外に良かった.フェルプスくんの扱いなんて酷いから,純朴なファンなら怒るかも.「時をかける少女」に対する筒井自身の「シナリオ・時をかける少女」みたいな汚し方.
△『四谷くんと大塚くん〜天才少年探偵登場の巻』
 演出堤幸彦・脚本蒔田光治・製作磯山晶によるTBS特番だったらしい.『コナン』レヴェルの少年探偵もの.テレビ屋らしい雑な作りだが,そこそこ楽しめる.続編はできるのか?
△サン・マー・メン『ザ・ゴールデン・カップス ワンモアタイム』
 二部構成の前半は,「ヤング720」等テレビ番組での演奏シーン,関係者やファンの証言,ニュース映像等のパッチワークで,60年代末期ニッポンのドキュメンタリとしても結構面白かったが,後半,31年振りの再結成ライヴコンサートの模様は,ソツのない熱演なのに,眠くなってしょうがなかった.俺にロック魂が無いせいだろうが,そんなもん要らんしなぁ...
 カップスで一番格好良かったのは演奏・ルックス共にルイズルイス加部だと思うが,元々リードギタリストだったのに,デイヴ平尾が引っ張って来るときに無理矢理ベースに転向させた結果,あの「リードベース」が生まれたというのが,ちょっといい話.
△池田敏春『ハサミ男』
 機会あって試写会で観た(公開は来年3月).あんな仕掛けのある原作をどうやって映像化するのか興味あったのだが,成程こうするしかなかろうと納得のいく設定変更によって何とか難関をクリアしていた点に,まず感心.しかし,この変更に伴って原作のシニカルな持ち味が失われ,ラストなど,何だか「いい話」だったみたいな錯覚すら与えられる――意図的なもんだろうけど.まぁ,これが「一般映画」の限界か.主役のトヨエツと麻生"キャシャーン(トホホ)"久美子の演技に関しては「?」だが,阿部寛は適役――いつもと同じなんだけど.
 てな訳で,これは『人魚伝説』みたいな怪作を期待する向きには期待外れだが,原作を読んでいない人にはお薦めのサイコミステリ.久美子のゲロ吐き演技にでも痺れてくれ.
 そう言えば『姑獲女の夏』も来年公開らしいが,あれもどう映像化するんだろうか.瞠目せず持つ.
△ダニー・ボイル『ヴァキューミング』
 電気掃除機セールスマンの売上げ競争を描いた英国らしいブラックコメディ映画.ティモシー・スポールのひたすら暑苦しく狂騒的な怪演に当たっちゃう...
△ピーター・コリンソン『ミニミニ大作戦』
 先にリメイク版を観てしまったが,これが69年製作の原型.こっちの方がプロットは単純――と言うか,粗雑――だし,前半の展開がかったるいが,後半,金塊強奪シーン以降は一気に魅せる.総合評価としてはリメイク版が上だけど,カースタントに関しては負けていない.全部実写だし.
 それにしても,泥棒映画って,つまんないと思ってもついつい見入ってしまうのは何故だろう.
△スティーブン・ソダーバーグ『オーシャンズ11』
 で,これまた泥棒映画(のリメイク版).公開当時非常に不評だったらしいが,懲りずに続編も来月公開予定.ジョージ・クルーニー,ジュリア・ロバーツ,ブラピらの豪華キャストに過大な期待を抱かずに観れば,紋切り型の金塊強奪ものとしてそこそこ楽しめるが,一言でいって凡作.ソダーバーグって,俳優たちには評判いいらしいが,俺はどこがいいのかよう分からん.
●●綾辻行人『暗黒館の殺人』上下
 京極の『陰摩羅鬼』のときも思ったが,真っ当なファンだったら作者をスポイルせずに「つまらんもんはつまらん!」とブーイングすべきなんじゃないか.本作も古き佳き本格推理のガジェット満載の「バカミス」として読めば読むに堪えようが,いかんせん無駄に長いし,この長大さに耐え得る文体ではない――下手と言わないまでも味気ない――ので,読了後大変な徒労感を感じざるを得ない.さんざん待たせといてこの内容ですから....残念!
●山口泉『永遠の春』
 この人のは初めて読んだ.生殖が国家に管理されている近未来が舞台の「純文学」.はっきり言って下手.同じテーマなら誰かもっと巧い人――佐藤哲也とか――が書いた方がマシ.
△ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア『すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた』
 ユカタン半島のキンタナ・ローというマヤ族の住む町を舞台にした,SFとかファンタジーと言うよりも「海洋怪異譚」.一見軽いようで深みのある佳品なるも,連作3編というのは短すぎて物足りない.この倍ぐらいは欲しかったところ.
△山田宗樹『直線の死角』△『嫌われ松子の一生』○『天使の代理人』
 作品数も少ないし――あと2冊未読だけどどこでも見掛けない――地味な作風だが,どんどん職人芸的に巧くなってるし,どんなテーマでも書けそうなので,もっと注目されていい作家だと思う.一番売れたらしい『松子』にしても,プロットは陳腐な転落譚なのに,一気に読ませる力量あり.荻原浩にちょっと似たタイプか――あっちの方がまだ多作だが.
△石持浅海『アイルランドの薔薇』△『水の迷宮』
 この人の作品の特徴は,殺人事件が起こるのに読後感が爽やかな所とか,犯人にも被害者にも共感できる所.キャラ作りが巧いのだな.多少の瑕があってもつい読んでしまう作家の一人.
△飛鳥部勝則『レオナルドの沈黙』
 前作『ラミア虐殺』はバカミスというかトンデモ系だったのに,今回は「読者への挑戦」付きの律儀な本格ミステリ――と言っても,今時の作品だからそんなにストレートじゃないんだけど.でもって,次回作は純粋ホラーになるらしい.よく分からないが,気になる作家ではある.
○グレッグ・イーガン『万物理論』
 ディストピア小説だと思って読んでたら,ハードSFなのにトンデモっぽいハッピーエンドを迎え,ユートピア小説だったことが判明.信じることと理解することの間の深い溝を乗り越える万物理論? 何だか楽観的すぎる気もするけど,奇矯なアイディアてんこもりで楽しめる.
 いくらバイオコンピューティングが当たり前の2055年という時代設定とはいえ,ヘソとノートパッドを屡々光ファイバで繋ぎデータ転送する様はおマヌケである.
○ジーン・ウルフ『ケルベロス第五の首』
 謎めいた「連作ゴシックミステリSF」.一度読んだだけでは分からない...
○カン『CAN DVD』○ジェントル・ジャイアント『Giant on the Box』△同『Scraping the Barrel』
 最早CDもDVDも殆ど買わないのだが,この3組に関しては全く躊躇なく購入.
 中では,74年と75年のライヴを中心に編まれたDVD『Giant on the Box』が万人にお薦めできる名演集と言えるが,あとの2セットはコアなファン向け.特に,デモテープ,リハーサル,メンバーのソロ,お遊び映像等を収めたCD4枚組(うち1枚は音楽CDではなくデータディスクで,MP3を中心に8時間半相当の音や画像データを収録)『Scraping the Barrel』は,断片集の趣だから,ケータイ待受画面や着メロにGGを使うくらいの好き者(←俺だ)以外には無用の長物であろう.『CAN DVD』も,ライヴとドキュメンタリ中心のDVD2枚+各メンバーによる別グループの音源を収めたCD1枚という3枚組で,普通の人なら胃もたれを起こすと思う.

2004/12/30 GESO