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タイトル2005/01/10■108 連休を無駄に過ごす
記事No208
投稿日: 2013/10/05(Sat) 14:46:01
投稿者管理人
[去年漏れた断片と今年に入ってからの断片]
 12/20,またもや交通事故.前回はもらい事故だったが,今度は俺のミスによる自損事故.幸い怪我人は無く,車が壊れただけだったが,ヘコむ.今年は全くツイてない....
 12/26,恒例の浅川マキ連続ライヴ初日を観る.このライヴは「大晦日公演」と称されているが,実際は12/26〜12/30と決まってるのだから「年末公演」とすべきだとずっと思っている.まぁどうでもいいか.歌の仕上がりは初日にしては良い方.彼女はステージが進むに連れて調子が出てくるタイプらしく,今回も終わりに近い方が盛り上がっていた.バックの渋谷毅とセシル・モンローの演奏に全く問題はないのだが,オーソドックスすぎて聞いてるうちに退屈するのも事実.たまには変わった趣向を凝らしてくれないものか.常連の観客はこういう十年一日の内容で安心・満足なんだろうか?
 1/1,七福神巡り.浅草エリアを巡るのは8年ぶり.途中入った「合羽橋珈琲」,終わってから寄った浅草の居酒屋「ぬる燗」,共に心地良し.東京の正月は開いてる店が豊富で良い.
 1/5,新年早々胃と大腸の内視鏡検査.胃腸は異常なしだったけれど,直腸に悪性とも良性とも判断しかねる小さな腫瘍があり,切除を勧められる.いわゆる癌もどきで,近藤誠なら「切る必要はない」と言うところかも知れないが,折角だから(←何が?)切ることにする.手術日は後日相談.
 1/8,京成線町屋で今年初の居酒屋研究会.参加者5名.ときわ〜甲州屋〜亀田と巡り,地元にカラオケ屋がなかったので北千住まで足を伸ばし「ひびき」とかいう店で喚いて締め.イチ押しは,俺とF氏は前にも来たことがある,駅ビル地下の「ときわ」.大きめの箱でメニューが豊富.ファミレス代わりに使う家族連れとへべれけの親父たちが違和感なく共存する,活気ある店.元々は寿司屋だったらしく,魚類が旨くて安い.また行きたい.行くことだろう.

[見たり読んだり遊んだり]
○ボビー・ファレリー&ピーター・ファレリー『ふたりにクギづけ』
 結合双生児――シャム双生児というのは差別語だそうだ――を主人公にして普通に楽しめるコメディ映画を作るなんてことが一体可能なのか疑問だったが,後半の展開がややもたつくものの,本作はそれにほぼ成功している.双生児役のマット・デイモンとグレッグ・キニア――似ていなくもないが双子ってのはちょっと無理め――が腰の部分で繋がっているのは勿論特殊メイクだが,本物の知的障害者も出せば,障害者ネタのブラック・ジョークも出せば,下ネタも出し惜しみしない.なのに,悪趣味・偽善・感傷・重厚さのどれにも片寄らない軽い娯楽作品に仕上がっているのだから,ファレリー "メリーに首ったけ" 兄弟の力量は侮れない.メリル・ストリープとシェールが本人役で出演して花を添える.
△ブラッド・バード『Mr.インクレディブル』
 ピクサー恐るべし,と思わせる凄い映像.髪の毛の動き一つとっても素晴らしい.これだけCG技術を究められちゃうと,アニメは日本のお家芸だなんてとても言えないわな.だが,お話自体は勧善懲悪+強い父親の復権+家族の絆の再強化といった近年の米国馬鹿映画のお約束丸出しで,反吐が出そうになる.きっと子供に見せて洗脳に使うのであろう.主人公は典型的な(元)スーパーヒーローだが,手足がビロローンと伸びるゴム体質の奥さん=エラスティガールは,スーパーヒロインというよりも殆ど妖怪.透明化能力のある黒髪の長女は宇多田ヒカルがモデルか?
○監督・出演チャウ・シンチー『カンフーハッスル』
 物語は『少林サッカー』以上に単純だが,VFXを駆使して漫画をそのまま実体化したような「ありえねー」アクション+ギャグの釣瓶打ちは痛快.邦画にも部分的に似た趣向の作品はある――『地獄甲子園』とか『恋の門』とか――が,徹底の度合においてもテンポの良さにおいても完全に見劣りする.
○シルヴァン・ショメ『ベルヴィル・ランデブー』
 30〜40年代NYの歪んだ模像のような架空都市「ベルヴィル」を主要舞台に,アヴァンギャルドな婆さんたちが大活躍するクールな仏蘭西アニメ.米国文化に対する屈折した愛憎を窺わせる黒いユーモアとノンセンスなギャグ,高度なCG技術,極端にデフォルメされたユニークなキャラクター,ジャンゴ・ラインハルト調のスイングする音楽,どれをとっても大人向け.日米のアニメに較べて大層ゲージツ的である.
○ピーター・クラマー『クリビアにおまかせ』
 阿蘭陀映画を観たのは初めてかも.当然知らない役者ばかりだったが,フランキー堺似の人・ビョーク似の人・十朱久雄と熊倉一雄を混ぜたような人・金正男似の人・カフカと我集院達也の中間みたいな人など,既視感を覚える濃いキャラの人ばかり.国籍も年代も図りかねるミュージカル仕立てのレトロな人情喜劇で,ベタさで言えば「オランダの吉本新喜劇」と評してもいいけど,歌と踊りのレヴェルは吉本よりも上でしょう.俺は,冒頭に出てきたワハハ本舗みたいな被りもののバレエ場面だけでも,観て良かったと思った.他愛もない愛すべき作品.後に知った話では,60年代後半の阿蘭陀の国民的人気テレビドラマを2002年に映画化したものとのこと.成る程,訳分からないわけだ.
△生垣真太郎『フレームアウト』『ハードフェアリーズ』
 いずれも米国を舞台にした翻訳調文体のミステリで,モチーフは「映画」.作者が映画通であることは分かるし,文章もそこそこ上手いのだけど,事件のスケールが小ちぇえことと,読んでてワクワク感が乏しい点が難.
○藤村いずみ『あまんじゃく』
 元外科医の殺し屋が主人公の「必殺仕事人」もの.邪悪な宮部みゆきという感じ.デビュー作なのにやたら達者.ライバルは望月諒子か?
△雫井脩介『犯人に告ぐ』
 「劇場型捜査」というアイディアが秀逸な警察小説.面白いんだけど,急転直下の結末部分が出来過ぎという感じで,やや興醒め.
×大信田麗『フェイク!』
 主要登場人物の一人の名をそのままペンネームにした覆面作家によるややメタなミステリ.実在の作家・編集者・書評家をモデルにした露悪趣味的な業界内幕暴露小説っぽいので,出た当時作者の正体は誰かが話題になった記憶がある.既存作家で書評もする人ということでは,野崎六助か笠井潔当たりか?それにしては下手すぎる.いや,ワザとかも知れないし....あるいは,本人は否定しているが帯に煽り文句を書いてる大森望という線も有り得なくはない――豊崎由美に「あんた腹黒すぎ」と言われるくらいの男だしな....といった下衆の勘繰りを誘発する下品な作品.
○大水木しげる展(江戸東京博物館)
 最終日の前日に行った所為もあるのか半端じゃない人出で,入場券買うまでに15分,会場に入るまでに1時間かかった.客層は幅広く,文字どおり老若男女.概ね自伝漫画のパネルに合わせた年代順の展示だが,「テレビくん」に出てくるテレビだとか,鬼太郎の例の樹上の家(意外に大きい)だとか,妖怪ポストだとかの「複製品」,水木しげる本人が世界各地で収集したお面や木彫り,アニミスティックな風景写真等々,展示作品は多岐にわたり,見所は多い.俺には初めて見る少年時代の作品,取り分け15〜16歳頃に描かれた綺麗な私家版絵本の数々が興味深かった.水木さんは,最初っから抜群に絵が上手かったのね.... 展示物の中では,ザ・ビンボーズの「ぺったらぺたらこ」のシングル盤(限定1枚)が非常に欲しかった.それにしても,人には「なまけものになれ」と勧める癖に,本人は80歳過ぎても現役バリバリなんだから,勤勉な人である.
 どうでもいいことだが,村上龍も舞城王太郎も作品中で調布市を破壊しているが,最初に破壊したのは多分水木しげるである(作品名失念.観てきたばかりなのに).気の毒な調布市.
○酒蔵紀行(カネボウフーズ)
 酒蔵監修の食玩シリーズ.化粧箱入り一升瓶+肴+杯のミニフィギュアセットで,全12種類+シークレット.売ってる店が少なく,まだ3種類しか揃ってない.例えば司牡丹は,純米超辛口船中八策と鰹のたたきと可杯(べくはい.飲み干すまで置けない,ひょっとこや天狗の格好した杯)のセット.渋い.でも,こんなもん誰が買うんだ?俺か....
○はすみフィルター(Ver.2.1)
 ネットで偶然発見した面白ソフト.全ての言説を蓮実重彦の文体に変換する――作者は「ハスマイズする」と言ってる――フィルター.この作者は演歌歌詞自動生成プログラムだとか,朝日新聞的社説自動生成プログラムだとか,ちゆないざー・萌え萌えフィルター(内容は想像つきましょう)といった素晴らしくくだらないCGIを多数作ってて,偉い.

2005/01/10 GESO