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タイトル2005/02/06■110 退院後
記事No210
投稿日: 2013/10/05(Sat) 14:47:38
投稿者管理人
[禁欲と解禁]
 入院→手術→退院は3日間だったが,その後疼痛が続くこともあって大事を取り,結局9日間刺激物と酒を断った.
 2日間以上飲まないなんて,14年ぶりのことだ.前回は入院中の13日間飲まなかったので,それに次ぐ.伸ばしたくない記録ではある.
 10日目,自分の体と相談したところ「そろそろ大丈夫だろう」と言うので,解禁した.
 いやぁビールがうめぇ.日本酒も.焼酎も.
 この間,「酒は飲めないけど雰囲気が好きで飲み屋に付き合う人」をやってもみたが,焼酎抜きのウーロン茶やホッピー,ワサビ抜きの刺身等は,矢張り味気なくていけません.
 でもまぁ,解禁の快感が約束されているのであれば,禁欲も悪くないと思った.
 もし禁欲を永続せざるを得ないとしたら,禁欲自体を快感に変換する仕組みというか,擬制が必要になるだろう――例えば,宗教のような.
 だが全ての教徒が厳しい戒律に耐え切れる訳ではない.
 一般信徒は,ラマダンの後の饗宴みたいなガス抜きが無ければ,やってられないであろう.

[著作犬は吠え続ける]
 神足祐司の言説にはさほど興味はないのだが,「週刊アスキー」2-8号のコラムには珍しく共感した.一部引用.
> 私は何年も前から、昔坂本龍一がカセットテープを砕いたように次はCDとDVDを砕けと言い続けた。しかしいくら私が言い続けても、世界中が合唱しても、それは起こらなかった。
> もうひとついえば、音楽はタダで配るべきだ。
> あるいは、その配信の労をとった者が働きぶんだけの手数料を得るべきだ。なぜなら、音楽は記憶の積み重ねだからである。人類共有の記憶を、はい、私がやりましたと著作権化して言い値で売りつけるのは、水を独占するボトル・ウォーター企業のように悪どい。
 という内容.坂本龍一のカセット破壊ってのは恐らくスタンドプレイだから,信用できないけどね.

[病院で読んだ本]
△射逆裕二『みんな誰かを殺したい』
 交換殺人をメインにしたかなり複雑なプロットだが,読みやすい.御都合主義で薄っぺらだが書き直せば良くなりそうな話なのに,横溝大賞優秀賞獲ってそのまま出ちゃったのね.... 即座にドラマ化できそうな話だと思ったら,テレビ東京賞も同時受賞してて,昨年放映済みなのであった.話題になった記憶はないが...
△井上夢人『オルファクトグラム』
 嗅覚野が破壊され通常の嗅覚を失った代わりに視覚野がその役割を担うようになり,匂いが超高精度で「見える」ようになった青年が,匂いを頼りに姉を殺した連続猟奇殺人犯を追い詰めていくというお話.よく考えると設定がSFなだけで,取り立てて謎はない――犯人が奇抜なトリックを弄する訳でもなければ,探偵が奇矯な推理をする訳でもない――から,ミステリ的な味わいは少ないが,テンポよく読ませる.浅暮三文『カニスの血を嗣ぐ』(好きな作品.)に似ている――発表時期は井上作品の方が先――が,偶然の一致であろう.
 ちなみに,酵母や細菌が「見える」特殊能力を持つ農大生を主人公にした石川雅之の漫画『もやしもん』は,3月頃に第1巻が出るらしい.楽しみ.
○津原泰水『綺譚集』
 エロティックな怪談15編.「聖戦の記録」を筒井康隆,「サイレン」を岩井志麻子の作品だと偽って読ませたら,信用する人も結構いるのでは――と言っても,模倣やパロディという訳ではない.作者が繰り出す多くの文体見本の一つ,ということだ.桐野夏生,山田正紀(また出た),竹本健治ら同業者が,褒め殺しと見紛うばかりの讃辞を並べ立てているが,確かにやたらに上手い.佐藤亜紀と並んで当代随一の小説家ではなかろーか.悪口っぽく言えば,技巧に淫して狂気を演じている秀才タイプで,どんなに上手くなっても,技巧を感じさせぬ名人芸にまでは至らなさそうだけれど,これだけ読ませてくれればいいんじゃない.

2005/02/06 GESO