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タイトル2005/02/25■111 ツレヅレ
記事No211
投稿日: 2013/10/05(Sat) 14:48:12
投稿者管理人
[激安]
 鈴木くんに教えてもらい,タワレコでピアソラのCDボックスを買う.
 10枚組で1.460円という,何かの間違いのような低価格.
 以前に一度入荷したときはたちまち売り切れたそうだが,無理もない.
 今回も早晩売り切れるだろうが,きっと何組か買っといて後でプレミア付けて転売する奴もいるに違いない...そういう人に私はなりたくないが.
 あ,内容は72年〜84年の録音(ライヴを含む)で,まだ2枚しか聞いてないけど,どこから切ってもピアソラ節なり.
 本当は未聴の50年代の録音を聞いてみたいのだが.

[マネシタVSジャスト]
 今回の一太郎の――ていうか,興味の対象としてはATOKの――ヴァージョンアップは大したもんじゃないから見送ってもいいか,と思っていたのだけれど,例の松下電器の訴訟問題絡みで,ついジャストシステムを応援したくなり,結局VUしてしまった――自分は案外判官贔屓だったのだな.
 松下の訴えは確かに特許法上は間違ってはいないのだろうが,余りにも大人げない/弱い者苛め/何が目的なのかよう分からんetc.といった点で,如何なものかと思う.
 ネット上でのみとは言え,ガンガン「特許ゴロ」呼ばわりされるなんて,世界のマツシタとしては恥ずべき事態な筈なのに,クレーマーに対して電話口で「不買運動でも何でも勝手にどうぞ」なんて開き直るなんてのはなぁ....反感買っても仕方ないだろう.
 つい最近シェーバーを松下からシャープに替えたのは,商品の寿命に伴うものであって,別に不買運動に加担したつもりはないけれど,今後「敢えて」松下製品を買おうとは思わないことも,また事実である.

[鑑賞したもののうち]
○モーガン・スパーロック『スーパーサイズ・ミー』
 どういう内容かは予め分かっていたが,それでも飽きずに観れた,それにしても胸焼けする映画.
 こんだけジャンクフードを日常的に大量に摂ってりゃ,肥るのも体壊すのも当然だろうに,米国の一般ピープルってやっぱり馬鹿か?という偏見が募る.
 ファーストフード業界は多額の寄付金を払ってお上に目を瞑らせ,中流以下の米国人のカネを吸い上げ続けている.学校給食にも参入して,子供の頃から刷込みをやってるから,消費者は逃れるのが難しい.
 かくして無知な貧乏人どもは安価なジャンクフードによって不健康に肥満し続け,知的な金持ちどもは高価な低カロリー食によって健康に痩せ続ける,という図式が成り立つ.
 昔とは逆転しているものの,体型が階級社会を反映してことに変わりはない.
 本作では余り採り上げられてなかったが,ダイエット産業もこの人工生態系を支えている筈である.
 上映が終わって場内が明るくなったら,マックを食いながら観てた客が結構居ったことが判明.
 まぁ,日本人が食う量なんて高が知れてるような気もするが.
△アレックス・プロヤス『アイ・ロボット』
 なんか原作と違う感じだなー.今度読み返してみよう.
 ロボットの造形が好かんなー...
○ベント・ハーメル『キッチン・ストーリー』
 ノルウェーの映画を観るのは初めてかも.
 50年代,スウェーデンの家庭研究所の派遣員(中年男性)が,ノルウェーの独身男性(老年)の台所における動線を調査すべく,被験者宅の台所の隅に梯子を掛け,その上に座って観察を始める.
 観察者は一方的な観察に徹しなければならぬ.被験者との交流はご法度.
 実話にヒントを得たのでなければ到底思い付きそうもない変てこな状況設定に加え,日本人には知る由もないノルウェー人とスウェーデン人との間の微妙な関係が影を落としているようである.
 そんな(異邦人から観て)特殊な状況をあくまでも坦々と描きつつ,結果的には,孤独と友愛を巡る寓話として普遍性を獲得している.
△リチャード・マルティーニ『ザ・カンヌ・プレイヤー』
△マーク・フォースター『ネバーランド』
 「ピーター・パン」物語誕生秘話,みたいな実話に基づく映画.
 フツーに感動的だが,デップが演じるジェームズ・バリがやや変人とはいえデップ的にはかなり真っ当な役なせいで,むしろ詰まらなく仕上がっている.
 これならトム・ハンクスが演ったって同じだろう―それなら観に行かないけれど.
 子供はいつまでも子供のままでよしとするバリの思想(ピーター・パン症候群の基)はむしろ有害だし,ネバーランドは,西洋的偏見に満ちたディストピアみたいだ――映画で観る限りは.
 東洋人だったらガンダーラに行きなはれ.
×清水崇『呪怨』『呪怨2』(各ビデオ版+劇場公開版)
 ハリウッド版を観ようと思ったので,予習のため旧作4本を鑑賞.
 カルト作品とされる最初のビデオ版2本は,全然駄目.黒沢清の模倣だ.
 劇場版1作目は,その黒沢が気に入ったのか監修に当たっており,彼の最低作品『地獄の警備員』レベルの出来にはなっているけれど,劇場版2はまたもやひどい出来に終わってる.
 結局4戦3敗1引分ってところか.
 要は虚仮威しのあざといホラーに過ぎず,いくら幽霊だからって自由すぎ,規則性なさすぎ,これじゃただの無差別殺人だ.
 白塗りのガキにニャーニャー鳴かれたって,怖くも何ともないし.
 まぁ,突っ込み入れつつ観る分には楽しめるかも.
△山田宗樹『黒い春』
 バイオハザード小説と伝奇小説のミックスなのに,力が入ってるのは日常生活の描写なので,結果的に大変地味.
 そこがこの作者のいいところなのかも知れないが,サスペンスを期待する向きには肩透かし.
○こなみかなた『チーズスイートホーム』1巻・△北道正幸『プ〜ねこ』
 今 最も可愛い猫漫画と,最も可愛くない猫漫画.
 実在の猫は当然両者の間におる訳だが.
 ちなみに,大阪で猫18匹が毒殺された事件は,殺人よりも許せん.
×いのうえさきこ『大まかに生まれた女。』
 最近はヤンチャンで「倒れるときは前のめり。」という酔っ払い漫画(またかよ)を連載してるいのうえの,01年のエッセイ漫画.
 タイトルはよろしいのだけど,これだけ絵もギャグもサイバラフォロワー丸出しで,作家としてちょっと恥ずかしくないのか? 勿論本家を全然超えちゃいないし.
○安野モヨコ『監督不行届』
 モヨコ作品は以前は嫌いだったが,「さくらん」と「働きマン」以降は評価している.
 本作はダンナ庵野秀明との新婚生活を描いたエッセイ漫画だが,凡百のエッセイ漫画と較べると,作品として楽しませるツボを押さえたプロの仕事.
 これで「おたヨメ」(オタクと結婚してオタク化していく嫁さん)という言葉が定着するかも知れない.
 それにしても,庵野監督はちゃんと働いているのだろうか.漫画で見る限り全然生活力なさそうだが.
△深町秋生『果てしなき渇き』
 このミス大賞受賞作.
 10人中9人は不快に思うであろう,救いのない鬼畜系犯罪小説だが,そんなことは別に構わない.物語的要請があるのなら,どんな残虐な小説だっていいのだから.
 問題は,これだけ文章が巧いのに,プロットが恐ろしく陳腐で底が浅い点に尽きる.
 二つの筋書きが並行して進む結構も,結局大した効果をもたらしていない点も痛い.大変残念.
○桐野夏生『OUT』
 そこへ行くと,同じ殺伐とした犯罪小説であっても,桐野作品には格の違いを感じさせるものがある.
 俺も『柔らかな頬』を初めて読んだときはミステリ的に不満を感じたクチだが,ジャンルからの確信犯的な逸脱であったことは,今更ながら読んだ本作でも了解できた.
 大罪を犯して境界を越えぬ限りは自由になれない人間だって存在することを,説得力をもって示し得るこの不道徳性は,小説家の姿勢として圧倒的に正しい.
 日本階級社会の底辺を象徴する弁当"絶望"工場で働くパート主婦たちの描写が非常に生々し.
 ちなみに,俺は鬼畜系と癒し系は同じ硬貨の裏表という気がしてるのだが,どうか.

2005/02/25 GESO