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タイトル2005/08/13■118 痛い痛い痛いのよ
記事No218
投稿日: 2013/10/05(Sat) 16:20:46
投稿者管理人
[自爆]
 椅子に座ってウトウトしてたら転がり落ちて床に顔面をしたたか打ち付けた.瞼の上が腫れ上がって左眼が半分しか開けられない,蒲郡風太郎状態.トホホ,銭ズラよ〜...

[夏なんです]
 既に持ってる本をうっかりダブり買いするおマヌケを,久しぶりにやらかす.
 モノは山田正紀の『アフロディーテ』って中編SF.もっとも,以前買ったのは――部屋のどこかにある筈だが?――文庫版で,今回は親本のハードカヴァー版だし,ブックオフ価格105円だったから,まぁいいか...
 で,再読したら,前より面白く読めた.アフロディーテという名の,恐らく太平洋上のどこかに造られた理想郷的人工島の盛衰と,主人公の少年(後青年)の成長を重ね合わせて描いた青春小説っぽい「愛すべき小品」.全般に夏休みムードなので,この季節に読むのに丁度いい.
 読んでて,イーガン『万物理論』に出てくる南太平洋上の人工島ステートレスを想い出した.イーガンの島の方がより理想的かつ楽観的な想像の産物だったような気がするが...
 んで,ついでにゲットした正紀様1982年日本SF大賞受賞作『最後の敵』も読んだ.こっちは『アフロディーテ』に較べればハードなSF――ハードSFではない――長編.本作での「敵」は神ならぬ「進化」(という力)である.例によって,勝算なき闘いに挑む人類(及び新人類)が描かれる.正紀作品に漂う無常観は,彼が唯一の師と仰ぐ山風から受け継いだものか...
○乾くるみ『イニシエーション・ラブ』
 漫然と読んでると陳腐な恋愛小説と誤解したまま終わり,作者に騙されたことに気付かぬ可能性もある,非常に手の込んだ仕掛けのミステリ.
 このどんでん返し――←帯で暗示してあるから,書いても構わないだろう――の技は,歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』を凌駕する.
 文章は今一つだが,「Cheap Love=裏『Deep Love』」として書かれた作品でもあるらしいので,それすら作為かも知れない.だとすれば,作者は相当食えない奴である.
○雫井脩介『火の粉』
 殺人容疑は冤罪であるとして逆転無罪になった男が,2年後,その判決を下した後退官した裁判長の家の隣に引っ越してくる.とても偶然とは思えない.何故,何の為に? そして始まる不穏な事件の数々...ああ,「火サス」だ.
 サイコサスペンスに着地する出来すぎた物語であるが,『犯人に告ぐ』よりも描写にリアリティーあり.各章を短めにして連ドラみたいに構成していることもあって,やたら読みやすい.やはり小説よりもシナリオのノリかも...
○田中圭一『ヤング田中K一』
 書店をいくつか回っても見付からず,なぜかローソンで発見.
 ぎゃははは!タナケー面白い! お下劣漫画の最高峰.下ネタ嫌いの人にとっては焚書もの.
 玩具メーカーの営業マン時代の出来事を中心とした自伝「実話」漫画だが,タカラって,本当にこんな無茶苦茶な社員たちを放し飼いにしてたんだろーか?
△ウィリアム・ギブスン『あいどる』
 1997年刊の「サイバーパンク・リバイバル」作品だが,予想したほど古臭くは感じなかった――新しくもなかったが.
 俺の印象は,宣伝文句の「ヴァーチャル・ハードボイルド」というよりも「近未来風俗小説」ですね.
 『ヴァーチャル・ライト』――内容は殆ど忘れた――の続編で,21世紀初頭の大震災後の東京が主な舞台だから,正に「近未来」という感じはする.いつ来るのかな「大震災ゴジラ」は...
×SMAP『BANG!BANG!バカンス!』
 クドカンなら何でもいいって訳じゃないってこと.この歌詞はどう見てもやっつけ仕事でしょう.
 いつにも増してメンバーの歌の下手さ加減が強調されてるのもなんだかなー...
 「前田さんなんてうちにはいない」じゃなくて「森くんなんてうちにはいない」にしたら洒落にならなくて良かったのに.
△『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』
 穴筋須界岡が力の暗黒側に堕ちた経緯に必然性が感じられなかったり,帯腕毛伸が強いんだか弱いんだかよく分からなかったり――運が強いことは確かだが――,あれだけ力が強い妖陀が危機を予見できずいつも後手後手に回るのが不思議だったり,波動女の分娩室にむさい普段着で入ってって赤ん坊抱き上げたりして大丈夫なのかよ帯腕?等々,素朴な疑問は山ほどあるが,根本的にマズいのは,戦闘場面に終始しててドラマに深みが無いところ.
 チャンバラシーンが多くて飽きた俺は「ジェダイのテーマソングを選ぶとしたら高田渡『ジェダイに入ろう』かしら」などと,下らないことを考えて暇を潰してた.
 さて,果たして本作でシリーズの辻褄合せに成功したのか? 今後エピソード4以降を観て検証することにする.
△青山真治『レイクサイドマーダーケース』
 この監督だとは知らずに観た.期待してなかっただけに意外に良かったとは言え,幻想シーン?とラストシーンのショボさにはガッカリ.ほったらかしの伏線もあるし.東野圭吾の原作は読む気しないが,多分もう少しミステリ的にはしっかりしてる筈と想像する.結局,ちょっと豪華な2時間ドラマ止まりの出来.
 密室劇的な造りで出演者も少ないことから,見所は『8人の女たち』みたいに――よく言えば――役者たちの演技合戦ということになる.
 知らない子役3人・眞野裕子・杉田かおる・黒田福美は,誰が演っても良さそうなキャラなので,除外.
 多少はオーラを感じさせる役所広司・薬師丸ひろ子・柄本明・鶴見辰吾・豊川悦司の5人の間での勝負である.
 役所と柄本は演劇系,薬師丸と豊川は映画系,鶴見はテレビ系と,それぞれの出自を窺わせる走りだった.
 本命の役所は,『オールド・ボーイ』のチェ・ミンシクを真似たような風貌でいかにも臭い芝居をしていたが,共演者たちとの相性が悪かったのか,空回り気味.滑舌の意外な弱点も垣間見せて,二着に終わった.
 対抗の薬師丸の相変わらず堂に入った角川演技は根拠のない貫禄を感じさせて立派だったが,母親役には無理があったのか,三着.
 やはり対抗の豊川は,黙っていれば誤魔化せるものを終盤感情的な台詞が増えたところで本来の大根振りが露わとなり,まさかの五着.
 大穴の鶴見は,やはり類型的ぬいぐるみ演技で可もなく不可もなく四着.
 で,結局,老獪な演技に凄みを見せた柄本が首の差で一着優勝.
 ...って,そんな語るほどの作品じゃないのになぜ語るの俺?
○内田けんじ『運命じゃない人』
 ヤクザの親分の情婦(実は結婚詐欺の常習犯)が組の金庫のカネ(このカネが実は...という捻りもあり)を盗んで逃げる,というのを軸にした一連の事件を,そこに絡む登場人物それぞれの視点から描いてジグソーパズルを完成させるという結構.
 カネもかかってないし役者も殆どが無名だが,実に巧妙かつ軽快な出来でお見事.エピローグが今一つなのは惜しいが,充分満足できる.呑気なタランティーノ(暴力抜き)みたいな感じもあり.
 本作から連想される伊坂幸太郎の小説『陽気なギャングが世界を回す』も映画化されるそうだが,果たして本作を凌げるか?
○井筒和生『パッチギ』
 井筒作品とは思えぬ,バランスが取れてて抑制も利いた作品.役者連中も素晴らしい.国産「68年もの」青春映画のベストか?
△山口雄大『魁!!クロマティ高校』
 野中英次の原作漫画――マンネリだけど結構癖になるナンセンスギャグ――は拾い読みしかしたことがなかったので,予習のために漫喫で13巻分読破したが,その必要は全然無かったみたい...
 原作にエクソシストと宇宙猿人ゴリと少林寺をミックスしたものであるが,若い観客に元ネタが分かるんだろうか? 須賀貴匡(神山高志役)と板尾創路(マスク・ド・竹之内役)の演技とか,メカ沢が大量破壊兵器に変身するところが良かったけど,馬鹿馬鹿しいことを楽しめる人以外にはお薦めできまへん.

2005/08/13 GESO