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タイトル2005/12/03■123 しわすだなぁ
記事No223
投稿日: 2013/10/05(Sat) 16:25:30
投稿者管理人
[日記雑感]
・他人の日記を覗き見るのは隠微な快楽だが,近頃は公開が前提となっている「作品」ばかりで,興醒めである.
・自認したがらない人が多いが――エログやってる人たちの場合は馬鹿正直に認めてるようだが――日記を公開するという行為は,結局自己顕示欲の顕れである.
・「ダカーポ」は,東京流れものみたいな――そぞろ歩きは軟派でも心にゃ硬派の血が通う――雑誌で結構好きなんだけど――「週刊プレイボーイ」も昔はそんな感じだったけど今は...――大崎善生や坪内祐三の連載日記を読むと,自己愛の垂れ流しぶりに辟易して,こいつらの著作なんて読みたくないという気になってしまう.宣伝効果としてはマイナスだ――少なくとも俺にとっては.
・佐藤亜紀は,小説は美しいけどブログ日記は醜い.松田洋子は,漫画は攻撃的だけどブログ日記は大人しい――そういう具合に,均衡を図る場でもある訳だ.

[善意の支配について――非楽ノオト]
 11/11西新宿 能花伝舎で「Phil Minton & Feral Choirコンサート」を観た.英国のヴォーカリストが指揮し,24人が自主参加した即興的な「野生の合唱団」.数日間のワークショップを経て「各々の参加者が強く主体的であると同時に全員が一体的でもある状態」のピークにコンサートを持って行くパッケージ・プロジェクトとして,参加者を現地調達しつつ各国を巡業しているらしい.友人・知人も参加していたので余り批判したくないのだが,俺の印象は「ミントン先生が演奏する人間メロトロン」.正直言って,ファシズムの発生現場に立ち合う思いがして気持ち悪かった.「部分」が嬉々として「全体」に奉仕するの図は,野生どころか調教されたFascistic Choirじゃないの? もちろん,善意の当事者たちにはそんな自覚はないのだろうが.演る楽曲が即興であろうと書かれたものであろうと,指揮者+オーケストラという形式自体が半ば自動的/強制的にこうした事態を招くのだと思う.俺には適応不能.

[11月の連想]
△伊坂幸太郎『魔王』
 ファシズムといえば,著者本人が「それがテーマではない」と弁明しているのが本作.様々な先行作品が想起される.戸田幸宏+八坂考訓『キマイラ』,フロム『自由からの逃走』,クロネンバーグ『デッドゾーン』,ブラッドベリ「群衆」,フーコー『性の歴史』等.不穏な空気はよく描かれているけれど,何とも隔靴掻痒の出来で,伊坂作品としては初めて物足りなく思った.
○松田洋子『人生カチカチ山 女の幸せ探して三千里』
 『リスペクター』の続編的な時事エッセイ漫画(2002年刊).なかなか書店に見当たらず版元(角川)でも品切れで,ジュンク堂の支店から取り寄せてもらい漸く入手.ジュンク堂偉い! リアルタイムで読んでたらもっと面白かったであろう内容.北朝鮮紀行が圧巻.
△町山広美/松田洋子『こんな自分と仲良くしたい そんなあんたと仲良くしない』
 アマゾンで新品同様の古本を安価で入手.これで松田洋子は全部揃った.町山と松田は結構キャラがかぶってて意見が対立することが少なく,二人一役の対談集みたいな点はつまんないが,「普通の」女性の反感をかい「普通の」男性を引かせるであろう,歯に衣着せぬ歪んだ正論は小気味よい.
△パオロ・マッツァリーノ『反社会学の不埒な研究報告』
 『反社会学講座』の続編.松田洋子のオヤジギャグセンスに近い駄洒落が頻出するので,共作したら面白いかも,と一瞬思ったが,やはりキャラかぶる同士の共演はつまらないから駄目だな.作為的な統計調査報告に騙されないための,お笑いメディア・リテラシー講座.でも,前作の方が面白い.
△帯盛廸彦『ダンプ・ヒップ・バンプくたばれ野郎ども』・△湯浅憲明『あなた好みの』・△弓削太郎『夜のいそぎんちゃく』
 ラピュタ阿佐ヶ谷渥美マリ特集より.いずれも他愛ない69年〜70年作品.『くたばれ野郎ども』はテーマ曲のシングル盤を持ってたので流れるのを楽しみにしていたのだが,結局使われておらず,がっかり.殿山泰司が見れたのは嬉し.『あなた好みの』は伴淳三郎・飯田蝶子が懐かしい.奥村チヨが今と余り変わってないところが恐ろしい.『いそぎんちゃく』はタイトルに拘わらず割とシリアス.渥美の味わい深い歌を堪能できる.彼女に溺れて「転落」していく牧師役に千秋実.
△クリストファー・ゲスト『みんなのうた』
 架空の米60年代フォーク・グループ3組の再結成コンサートを描く,偽ドキュメンタリ映画.ビートルズをパロった「ラットルズ」みたいなもんですな.偽物なればこそ細部が大事,というキモを押さえてる点は立派.俺にはフォークというよりカントリーに聞こえたんだけど.
△アルフォンソ・キュアロン『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』
 この3作目は,原作を読んだ連中には概ね不評らしい.俺は未読のせいもあって,疑問百出の出来.御都合主義にも程がある展開も,ファンタジーだから許されるというの?
△鈴木清順『オペレッタ狸御殿』
 監督の妄想について行けるファン限定作品だが,『ピストル・オペラ』よりは楽しめる.馬鹿げた役を堂々と演じる平幹二朗と由紀さおりに感服.歌も素晴らしい.半面,チャン・ツィイー,オダギリジョー,薬師丸ひろ子らは,交換可能な配役に過ぎず,残念.
△メル・スチュアート『夢のチョコレート工場』
 バートン版は本作のリメイク.71年作ということもあって,映像的にショボイのは致し方ないが,それなりに楽しめる.
△小松隆志『奇談』
 私信とダブるため省略.

2005/12/03 GESO