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タイトル2006/01/24■125 あらもうこんな時節だわ
記事No225
投稿日: 2013/10/05(Sat) 16:27:04
投稿者管理人
[非楽ノオト]
 昨年暮れにデレク・ベイリーが死んで,近々東京で追悼コンサートがあるそうだが,出演者の殆どが大してベイリーとは関係ない(としか思えない)方々なのは如何なものかと思う.まぁどうでもいいが.
 ところで,即興演奏には現在しかない.
 したがって,即興演奏に未来はない.

[このくらいしか読んでない見てない]
△山田正紀『マヂック・オペラ』
 『ミステリ・オペラ』の続編・三部作の2作目.乱歩+風太郎のスタイルで二・二六事件の「真相」を描いた作品.探偵小説というよりも幻想小説の味わい.良くも悪くも地味な出来.
△浅暮三文『針』
 五感シリーズ4作目は侵略ものSFの変種.ある生物が体内に侵入したために触覚が異常に敏感になったヒト(とかサル)のお話.触覚のサイケデリア.大概の読者が嫌悪感を催すであろう嗜虐的な性描写は,物語の設定上当然要請されるものなのに,後書きで腰の引けた言い訳を並べ立てているところが作家としてみっともない.
△夏目漱石『明暗』・△水村早苗『続 明暗』
 続編を読みたいと思ったので未読だった本編も読んでみた,倒錯的読書.文豪夏目の作品は,別にドラマチックでもない設定なのに,登場人物たちが対峙する度に悉く切迫した腹の探り合いを繰り返し,その心理描写がネチネチと書き込まれている小説で,実にうざったい.「そもそも心理なんて描写に価するんだろうか?」という疑問を抱きたくなるくらいのものだ.現実の「意識の流れ」は,特殊な状況でもない限り,もっとあちこちを行き来する取り留めもないものであり,本作はあくまでも「心理小説」という虚構に過ぎない.だが,『明暗』は中途で終わった絶筆であるし,それなりにキャラは立ってる作品だから,続きを読みたいという気には確かになる.水村の手になる続編に対しては,当然の如く毀誉褒貶があったというが,俺はよく出来ていると思った.文体は夏目そのままに,お話をよりテンポ良く,面白く展開している.何よりも,「小説を読むということは現実が消え去り、自分も作家も消え去り、その小説がどういう言語でいつの時代に書かれたものかも忘れ、ひたすら眼の前の言葉が創り出す世界に生きることである。」という水村の言葉に同意するからだ.分析するより享受せよ,ってことね.
○増田こうすけ『増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和』1〜6巻
 「月刊少年ジャンプ」連載中.絵柄は強いて言えば吉田戦車に近いが,センスは今時のお笑い.この水準で6年も続いているのは大したものだ.漫画家やめてもコント作家で食っていけるのでは.DVD版――信じ難いことに平成17年度文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品らしい――も観た.殆ど原作と同じだが,こっちはやや自主規制あり.
○豊田徹也『アンダーカレント』
 ミニシアター系邦画を一本観たような味わい.
△蘇部健一『ふつうの学校』1〜3巻
 ソブケンは「六枚のとんかつ」みたいな一発ギャグミステリよりも,小学五年生を主人公にしたこのジュブナイルシリーズの方がよほど面白い.全然タメにならないところと,後書きが自虐ネタなのは共通してるんだけど.
○一条ゆかり『プライド』1〜5巻
 「コーラス」連載中.乱暴に言えば『ガラスの仮面』のオペラ版だが,どぎついまでの換骨奪胎ぶりが見事.嵐のような面白さで目が離せん.
△筒井康隆『銀齢の果て』
 今回は古臭い「実験もの」じゃなくて玄いドタバタ――手慣れた名人芸の域――だったから比較的楽しめたものの,「『バトル・ロワイヤル』の老人版」の一言で説明できてしまう所が淋しい...
△今邑彩『卍の殺人』
△北森鴻『写楽・考』
△川田武『五月十五日のチャップリン』
△襟沢世衣子『おかえりピアニカ』
△都筑道夫『袋小路』
△ティム・バートン『コープスブライド』
 基本的にはコマ撮りの人形アニメだが,撮影技術が高く動きがスムース過ぎるため,CGと変わらぬ出来映えになってる所はむしろ勿体ないような... 物語は今一つ得心いかぬが,相変わらずキモ可愛いキャラ造形は見事.花婿のビクターは,若い頃の倉地久美夫に似ている――人形だけど.
○山崎貴『ALWAYS 三丁目の夕日』
 単なるノスタルジー映画なのかどうか判断が難しい所だが,昭和33年を再現したセット,VFX,小道具の凝りようだけでも観る価値あり.子役2人がやたらに上手い.
○浦山桐郎『キューポラのある街』
△牧口雄二『玉割り人ゆき 西の廓夕月楼』
△高森立一『ボディガード牙』

[気に入った台詞]
 「和田アキコの顔したオバケ蜘蛛にとことん説教されたり」
 いくえみ綾『かの人や月』――前に『この人や月』と誤記してた.訂正します――3巻で,じじいが自分の見た夢の説明で言う言葉.
 この漫画はまだまだ続けられた筈だし続けて欲しかったのに突然3巻で終わってしまい残念.作者の愛猫が連載中に死んだのが遠因なのか...

2006/01/24 GESO