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タイトル2006/02/19■126 引用と飲尿(内容に無関係です)
記事No226
投稿日: 2013/10/05(Sat) 16:27:35
投稿者管理人
[訃報]
 ローカル岡が逝き,ナムジュン・パイクが逝き,伊福部昭が逝き,古城武司が逝き...

[読み通せない]
 どうしても読み通せない本とか,観通せない映画というのがあるのだが,なぜなのか考えたところ,いずれも俺にとって「嘘臭さに耐えきれない」点が共通しているようである.
 作品が「嘘」であっても全く構わないし,嘘の混じらない作品というのは恐らく存在しえないのだが,要は,下手な嘘では興醒めするということ.
 例えば両村上の小説群とかがそうなんだけど,あんなのを「リアル」と感じる人とは話が合いそうにない...
△都筑道夫『袋小路』・△同『探偵は眠らない』・○同『深夜倶楽部』
 これだけ「面白い」物語を量産した小説職人の作品の殆どが今は絶版というのは困ったものである.取り分け怪談集『深夜倶楽部』(徳間文庫版)は,宮部みゆきの的確な解説も付いていてお得.作者が下敷きにした岡本綺堂作品にも芋蔓式に手を伸ばしたくなる.
△齊籐愼爾(編)『現代詩殺人事件 ポエジーの誘惑』
 編者の趣味が色濃い,詩的(と編者が考えるところの)ミステリのアンソロジー.大岡昇平・三島由紀夫・夢野久作・阿部公房・倉橋由美子・中井秀夫・太宰治等,錚々たるラインナップだが,傑作揃いという訳ではない.中では,塚本邦雄「冥府燦爛」,澁澤龍彦「エピクロスの肋骨」が逸品――ミステリじゃなく幻想小説だと思うが.
△奥泉光『坊ちゃん忍者幕末見聞録』
 物語後半,時空が歪んでドタバタになってくる辺りで,筒井の同趣向の作品――古〜いところでは「時越半四郎」とか――を想起しないわけにはいかない.出は純文でも,やはり奥泉は筒井の嫡子の一人なんだな,と今更ながら納得.
△宇仁田ゆみ『酒ラボ』
 農大で醸造をやってる学生たちの青春群像,という設定は余りにも『もやしもん』そっくりでどうかと思うが,お話はパクリではなかった.
 パクリと言えば,殆どネットサーフィン(死語)をしないので,飛鳥部勝則のミステリ『誰のための綾織』の回収騒ぎを最近遅ればせながら知ったのだけど,何を血迷ったのか,三原順『はみだしっ子』の盗作だとか?
 「類似している箇所の表現自体には「独創性」が認められないので,この程度では盗用と言えず,著作権法上も問題ない」とする弁護士もいるようだが,三原作品からかなりの箇所を「無断引用」しているのは事実だから,法に抵触しないとしても,作家としてはやはり問題じゃないかしら.ちょっと「変」だから贔屓にしてた作家なんだけど,残念.兎も角,古本屋で見付けたら是非入手したい(高値なら止す).
△平井玄『ミッキーマウスのプロレタリア宣言』
 若く貧しいウォルト・ディズニーは,勤め先の映画スタジオで一人残業しているとき,二人組の強盗に入られ,柱に縛り付けられてしまいました.強盗たちはスタジオの金目のものとディズニーの僅かな持ち金を根こそぎ奪い取り,彼を放置して逃げ去ります.残されたディズニーは己の惨めな境遇に涙し,零れ落ちた涙を足の指に付けて,床にネズミのキャラを描きました.するとこのネズミが生命を得て動き出し,彼に語りました.「そんなに落ち込まなくても大丈夫さ!僕を主人公に映画を作れば大ヒットして,君はたちまち大金持ちだよ!」 ミッキーマウスの誕生です.
 …というお話を子供の頃妄想してた.ディズニーの伝記と雪舟の逸話がごっちゃになったらしい.まぁ,欧米人はこういう状況でも靴を履いてるだろうから,足の指で描くというのは無理めな話であるが.
 ちなみに,初期のミッキーマウスは,現在とは違って「アナーキー」なトリックスターであったという事実には注意しておく必要がある.
 で,本書は,下流社会化する現代ニッポンに相応しく,読者に「イヌ」ではなくこの初期ミッキーマウスのような「ネズミ」であれとアジテートするもの.多分に自伝的で面白く読めるし,ニートやフリーターの「プアホワイト化」を推し進める社会の構造分析――吉田司あたりの視点と大差ないと思う――には概ね首肯できるものの,シャリヴァリを連想して描写したと思われる「反戦サウンド・デモあるいはストリート・ダンス・パーティー」とか,「脳内の階級闘争」を経てどんな企業体にも属さない「亡霊的プロレタリア」が大量発生する可能性とかに希望を託すというのは,余りにもナイーヴかつロマンチックな気がする.
○フランクリン・J・シャフナー『猿の惑星』
 何十年ぶりかで観た.1968年の公開当時ならともかく,誰もがすれっからしと化した今日では子供でも結末が予想できそうなお話であるが,風刺劇として/映画的に良く出来ているので,飽きずに見返せた.そう言えば,このシリーズ5作は全部映画館で観たのだった.確かタイムパラドックスのループで落ちがついた筈.スター・ウォーズ6部作よりも秀逸だと思う.
△マキノ雅弘『江戸っ子繁昌記』・△同『長谷川・ロッパの男の花道』
 「芝浜」と「番町皿屋敷」を組み合わせた1961年作の前者は案外陰惨なお話.殿様と魚屋の二役を演じる中村錦之助は流石に上手い.1941年作の後者は,ロッパはともかく中村歌右衛門役の長谷川一夫の女形芸を堪能すべき作品.昔の時代劇はちゃんとしてますね.
△テリー・ジョージ『ホテル・ルワンダ』
 実話に基づく感動作――というだけじゃ別に感心しないけど,娯楽映画としてしっかりしてるので評価できる.
 さて,今夜は『不良姐御伝 猪の鹿お蝶』のレイトショーでも観に行くとするか...

2006/02/19 GESO