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タイトル2006/03/18■127 夢の遠隔殺人
記事No227
投稿日: 2013/10/05(Sat) 16:28:54
投稿者管理人
[コリャマタスゴーイ]
 久々に面白い周辺機器を入手.「クールゲート」という,一見普通のUSBメモリに見える小さなスティックだが,中にパソコンを遠隔操作するソフトが入っているのだ.
 遠隔操作したいパソコン(ホストPC)にソフトをインストールしておきさえすれば,外部の任意のパソコン(ゲストPC)から――ネットに繋がっていてUSBポートさえあれば――操作が可能になる.
 具体的には,ゲストPCにクールゲートを挿してプログラムを起動し,「接続」のボタンを押すと,ホストPCの画面がそのまま現れ,そのまま操作できる.
 Windows XP Proにも「リモートデスクトップ」の機能はあるが,操作される側だけでなく,操作する側のパソコンにも一々設定が必要で面倒臭い.
 これに対してクールゲートは,最初だけホストPC側のファイアウォールと(使用している場合は)ルータの設定が必要だが,後は楽勝だし,ゲストPCには使用した痕跡も残らない.
 俺は自宅のパソコンをホストにして,職場のパソコンやネットカフェのパソコンから遠隔操作している.ノートパソコンやリムーバブルディスクを持ち歩く必要が激減して,大変便利.この文章も漫喫で打っている.

[3/10〜12の「倉地久美夫フェスティバル」のことは措いといて]
△荻上直子『バーバー吉野』
 まぁ悪くはないが,「髪型」問題だけで引っ張っていったところが苦しいし,その他の挿話も取って付けたようで浅い.雰囲気的には石井克人『茶の味』に似るも,技巧的に劣る.
△鈴木則文『不良姐御伝 猪の鹿お蝶』
 より血腥くしてエロを加えた,もう一つの『修羅雪姫』とでも言うべき作品.池玲子――アルバム初CD化万歳!――が予想外にカッケー.冒頭の2分間で殺されてしまい出番がなくなる殿山泰司,スウェーデン人なのに英国スパイ役のクリスチナ・リンドバーグが,何だか気の毒.
×本田隆一『東京ハレンチ天国 さよならのブルース』
 アナクロアングラGSノワール? 演奏シーンは割と良かったけど,映画的には「リズムもテンポもセンスもない」どうしようもない出来...
△村田實『路上の霊魂』
 1921年の16mm無声映画で,弁士とキーボード伴奏付き上映.よくフィルムが残っていたものだ.保存状態も悪くない.当時としては可能な限りの映画的技巧を駆使した作品だそうで,複数のシークエンスが速いテンポで切り替わり並行して進む.今観ると別段理解に苦しむことはないが,当時は前衛的で難解とされたらしい.小山内薫の演技が記録されている点だけでも貴重なのでは.
○小津安二郎『お早よう』
 ちょうど『三丁目の夕日』と同じ時代――昭和33年〜34年頃――が舞台で,市井の人々の日常を描いた他愛もないといえば他愛もないホームドラマであるが,こんなに笑える作品だったとは驚き.ユーモアの裏に漂う深い諦観が,並みのホームドラマとは一線を画す.子役・設楽幸嗣の演技は佐田啓二や笠智衆より遙かに巧いが,小津作品って役者の演技の巧拙は余り関係ない気もする.上映時,トークショーゲストの栗山富夫監督が,「『シザーハンズ』を観て,ティム・バートンは小津作品を観ているに違いないと思った.特に『お早よう』の多摩川沿いの文化住宅群(全てオープン・セット!)には,色彩を含めて影響を受けていると思う」という趣旨の発言をしていたのが興味深く,余り好きな作品ではないけれど『シザーハンズ』をDVDで見直してみようという気になった.
○西村潔『白昼の襲撃』・○澤田幸弘『俺達に墓はない』・△長谷部安春『俺にさわると危ないぜ』
 なかなかお得なアクション映画3本立て.人気が凋落してきたアキラに活を入れようと新路線を狙った長谷部作品は,原作(都筑道夫の『三重露出』)のメタな面白さを映画化するのやはり無理だったか...と思わせる期待外れの出来だったが,他の2本はB級アウトロー・アクションとして上出来.西村作品は主役は黒沢年男だけど,印象に残るのは学生運動崩れのインテリヤクザ役・岸田森.その情婦役が緑魔子という組合せが,堪りませんな.純情なゲイ役の出情児も気になる.澤田作品は更にギャグを交えて小気味よい.松田優作に岩城滉一に志賀勝.竹田かおりがシャブ中役を熱演.両作品とも端役まで含めてキャストが豪華(好き者にとっては).
△内田百間『百鬼園随筆』
 あぁ,もんがまえに「月」がない... 有名な「間抜けの実在に関する文献」を含む,作者最初の随筆集.ヤマもオチも意味もない文章が多いが,それでも面白く読ませるところが「芸」なんでしょう.
○色川武大『百』
 凄まじい幻覚が坦々と描かれる私小説.本物は違います.
×鳥飼否宇『痙攣的 モンド氏の逆説』
 連作集.タイトルが「廃墟と青空」とか「闇の舞踏会」とかだったり,登場人物の名前が相田彰だったり八木愛刻だったりするから,往年のジャーマン・ロック・ファンなら苦笑するところだが,作品的には単なる悪ふざけとしか思えないバカミス.頻出するロック談義や美術談義も,説明的で陳腐.困ったもんだ.
△島田荘司『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』
 これもバカミスと言えないことはないけれど,『痙攣的』を読んだ後では優れたパスティーシュに見える.漱石ファンとホームズファンへの贈り物.
×鯨統一郎『パラドックス学園 開かれた密室』
 バカミスと言えばこの人.推理小説というものが存在せず,「現実」が推理小説的世界というパラレル・ワールドで起きる密室殺人事件.というと山口雅也みたいな作品かと一瞬思うが,あっちには到底及びません.被害者がカー,探偵役がドイル,ポー,ルブラン,クリスティーら大物たちだが,この世界では皆同じ大学の学生という設定.これだけ馬鹿馬鹿しいといっそ神々しい――かと言えばそんなこともない杜撰な作品.作者は独創と思っている節があるが,犯人の設定には先例があるし,その作品の方がよほど良かった... それなのに俺は何故鯨が未だに気になるの?

2006/03/18 GESO