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タイトル2006/11/25■138 寒い夜明け(by Kazuo Umezu)
記事No238
投稿日: 2013/10/05(Sat) 16:43:55
投稿者管理人
[増殖する古本]
 > 少し買うのを抑えて読む方に専念せねば.
 という反省は度々しているのだけれど,初めての古本屋を見掛けるといつの間にか棚を漁っている駄目なアタシ.何冊買ったかはもう数えないようにしている...
 最近特に嬉しかったのは,6年ぶりに帰省した先で,ずっと探してた都筑センセーの『銀河盗賊ビリイ・アレグロ』(集英社文庫)を150円で入手したこと.ハードボイルド風一人称で簡潔かつ濃密に描かれた宇宙活劇連作ですが,トンデモなエンディングを含めて,こんな面白い小説が絶版ってのはどうよ? カバーイラストはメビウス激似の大友克彦。
 同じとき入手した山田正紀『魔境密命隊』上下巻(双葉文庫)は,小栗虫太郎の人外魔境ものを換骨奪胎した如き冒険小説だったけど,代表作には挙げられない作品でもこれだけ面白いんだから,正紀様はやはり侮れない.

[漸増する新本]
 漫画3冊だからかわいいもんだ.
○松田洋子『まほおつかいミミッチ 第3集』
 一応これが完結編──別に完結してないんだけど.今回も素敵な暴言満載.例えば:
 「ニューエイジでロハスかよ イルカのエサにでもなっちまいな!!」
△田中圭一『鬼堂龍太郎・その生き様 4』
 迷走の挙げ句有耶無耶に完結.エロのファンタジー処理には無理があったか...
△久世番子『暴れん坊本屋さん 3』
 これも完結.そろそろネタ切れの感じだったから,潮時かも.

[観たもの]
△長谷部安春『女番長 野良猫ロック』(1970)
 作品的には冗長なるも,ロックだった頃のモップス,ムード歌謡化した末期オックス,アンドレカンドレだった頃の井上陽水,余り変わっていない暴力的な和田アキ子等々の歌と演奏が見られるので,ドキュメントとして価値あり.
○クシシュトフ・クラウゼ『ニキフォル 知られざる天才画家の肖像』(2004)
 ポーランドの片田舎で暮らしたニキフォルは,今ではアール・ブリュの天才として高い評価を受けているというが,親も知れぬ天涯孤独の身に加え,言語障害で文盲だったゆえ,絵──主に風景画と人物画──を描いて観光客に売ることだけで,辛うじて生き長らえた人である.
 本作は彼の晩年を辿る伝記映画だが,わざとらしい感動的演出を排し,その傲慢不遜にも見える頑固さや奇矯さ,それに翻弄される周囲の人々の怒りや困惑が,非常にリアルにかつ坦々と描かれている所が,むしろジワジワと感動をもたらす.主役のクリスティーナ・フェルドマン──今年86歳になるというポーランドのベテラン女優──の性別を超えた名演をはじめ,どの役者の演技も恐ろしく自然.
△東京都写真美術館『写真新世紀 東京展2006』
 アイディア一発,という感じの作品が目立つのは,なかんずくデジカメの普及により,誰もがそこそこの技術的水準の写真を撮り画像を加工するのが可能になったことによるのかも知れない.
 女性写真家の作品が予想以上に多いことや,キッチュな作品が多い半面,スケールの大きな作品は少ないという印象.
 受賞作品の一つ,高木こずえ「insider」のアイディア──人や動物の正面像の,右半分とそれを左右反転させた像を合成したものと,逆に左半分とそれを左右反転させた像を合成したものとを,二つ並べた画面構成──は,それ自体は斬新なものではないけれど,大量に展示されると何とも奇妙な雰囲気が醸し出されて面白い.作り方の説明が示されているにもかかわらず,「双子でも似てない人がいるんだねぇ」なんて感想を漏らす粗忽な観客が結構いたのも面白かった.
 そう,人も動物も,決して正確な左右対称形ではないのであった.この画像加工は,早速真似てみたい.
○逓信総合博物館『ぼくらの小松崎茂展』
 2001年に没した小松崎画伯の回顧展.生涯現役を通した彼の作品点数は膨大だが,晩年,自宅兼アトリエが火事に遭い,殆どが焼失してしまったという.実に惜しいことだが,それでも今回展示されたのは,珍しい初期の日本画から,プラモの箱のイラストから,時代劇の挿絵から,メダルの原画から,何でもありで,500点を超える.
 個人的には,往年の「少年マガジン」や「少年サンデー」の口絵が大層懐かしうございました.細密なペン画も素敵.

[ギュードニズムの現在]
 今月上旬,2年半ぶりに吉野家の牛丼を食った.ここのところ毎月一週間ぐらいずつ,限定メニューとして復活させているものだが,これでBSEに感染しても自己責任ですね.
 販売停止前の味に較べると,汁の味が肉に充分染み込んでいない嫌いがあり,残念.やはり常時作り続けていなければ駄目なのだろう...

2006/11/25 GESO