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タイトル2007/04/13■142 イヌの痩せる場所
記事No242
投稿日: 2013/10/05(Sat) 16:47:14
投稿者管理人
[何故『狂った一頁』に落胆したのか]
 4/8朝日ホール.幻の無声映画『狂った一頁』(1926)を高橋悠治のピアノ伴奏で一日限りの上映.
 今まで観る機会を逸していただけに,期待したのだが...
 残念ながら退屈で,ありがたがって観るようなものではなかった.
 確かにドイツ表現主義の影響は歴然としてるけど,だからどうしたって? わざと字幕を付けなかったというが付けた方が良かったんじゃない? どこが前衛的なの? 物語自体は「脳病院は大騒ぎ」というタイトルにでもした方がいいくらい陳腐なんだから,流れとしては病院に火をつけて終わるのが順当なのに,何,このカタルシスのない結末は? ピアノは別に悠治じゃなくても構わなかったんじゃない? ...納得いかんなぁ.
 唯一感心したのは,タイトルロールの書体のモダンさ.もっとも,モダンすぎて殆ど判読できなかったが.

[何故「千の風になって」を耳にすると不快になるのか]
 考えたところ,要はこれが「生者を慰撫するために,生者が死者を騙っている歌」だからだ.
 物語的要請に基づく設定なら場合によっては認めてもいいが,この歌の場合は単に一般大衆受けを狙った「癒しソング」に過ぎず,イヤラシイだけである.
 理不尽に戦死していった諸君,冥界から怒りをもって抗議せよ!
 なーんて非難したところで「悪気なんてありません,私はピュアです」と作曲者 新井満――原詩を誰が書いたかはともかく,仕掛人はこいつだ――は弁明することだろうが,元・電通社員がまさかそんなに「ナイーブ」な訳はないだろう.現に,この歌絡みで色々商標登録しているそうだし...
 千の風に乗って千万のカネを稼ぐ気なのかい,満?
 こんなクソ偽善的な歌が受けている状況は,やはり不快に思わざるを得ない.

[何故飽きもせず山田正紀を読み続けるのか]
 もはや読むのが習慣となっているのだろう...
 大風呂敷を広げすぎて最後収拾がつかなくなる作品もままあるのだが,それもまたよしと思える程度にはファンである.
 単行本は全部――160冊くらい?――揃ったけど,まだ全部は読み切れない.
 困るのは,この人には未完のシリーズ作品が多いこと.
 『神獣聖戦』は,今年中に何とか「完全版」を出してケリを付けるらしいが,一番続きが読みたい――クロネンバーグに映像化して欲しいグロ美シーンが頻出する――『幼虫戦線』は,4巻まで出てこれからという所で中断したきり,再開の予定がない...

[何故また「田中登特集」を観に通うのか]
 臆面もなくロマンポルノを「愛の映画」と言い切る――本気でそう思ってるらしい――ところが良いんだろう,多分.
 去年の特集の間,監督本人もトークショーに出演した.元気そのものに見えたのに,その僅か3箇月後に死去...
 そんな感慨もあって,今回は未見の作品をできるだけ観ようと,足繁く阿佐谷ラピュタへ.
○『白い悪魔が忍びよる』(1984)
 テレ朝「月曜ワイド劇場」用作品.あの山本陽子がシャブ中役を凄まじく演じているのと,佐藤慶が売人役をしつっこく演じているのが,見もの.テレビ的にはかなり際どい所まで描いているのだが,最後を無理矢理ハッピーエンドにしたのは,やはりテレビ的制約の所為か?
○『安藤昇のわが逃亡とSEXの記録』(1976)
 安藤昇ファンには見逃せない,実録俺様映画.横井英樹襲撃事件――このとき暗殺に成功していれば,後年のホテルニュージャパン火災事件は起こらなかったかも――で全国指名手配され,逃げ回る安藤組.組員皆肺病持ち〜悲惨な逃避行なのに,安ちゃん一人だけ健康〜愛人宅をやりまくり転々〜遂に捕まるもパトカーの中でマスをかき「天皇陛下になった気分」と嘯く... この強運ぶりとふてぶてしさが,堪りませんわ.
△『天使のはらわた 名美』(1979)
 公開時に映画館で観た筈だけど,内容は殆ど忘れてた.村木役は地井武男だったのか... 石井隆の原作をかなり忠実に映像化したようだが,恐らくそれ故にむしろ劇画版の方がリアルに感じられたりして,痛し痒し.
○『愛欲の標的』(1979)
 ラストがやや物足りない点を除けばソツなくまとまったエロティック・サスペンス.徹底的なエゴイストぶりがむしろ爽やかな悪女役 宮井えりなは,当時は余り観てなかったけど,ねっとりとヤラシクて良い.ミンヤク中のフーテン娘役で日野繭子も出演.
○『丑三つの村』(1983)
 『八つ墓村』始め多くの小説や映画の題材となった「津山三十人殺し」事件(1938)を,この西村望原作作品もまた下敷きにしている(事実に結構忠実に).主演=犯人役 古尾谷雅人って,いい俳優だったんだなぁ.大量殺戮シーンを見て「もっとやれ!」と思わせるくらいの説得力はある.最後の台詞「皆様方よ,さようならで御座居ますよ」に,安藤昇「まとめてアバヨを云わせてもらうぜ!」を連想.
△『愛の報い』(1983)
 日テレ木曜ゴールデンドラマ用作品.実在の愛人殺人事件をネタにしたメロドラマで,桃井かおりと風間杜夫が迫真の演技をしているが,余りのベタさと救いの無さにやや唖然.
 ..あと1,2本は観に行く予定.

2007/04/13 GESO