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タイトル2007/08/13■145 にっちもさっちもどうにも熱帯夜
記事No245
投稿日: 2013/10/05(Sat) 16:49:16
投稿者管理人
[ご無沙汰]
 会員制フォーラムだと何となくアクセスするのが面倒臭いせいか,気がつけばもう前回の投稿から2箇月近く経ってるじゃないですか.
 この雑文は,忘備録の一部なので,やはりある程度マメに更新しなくちゃと思う.

[Kurachism]
 今年は割と東京公演の多い倉地久美夫.
 7/6渋谷Onestでは,外山明,稲田誠とのトリオ演奏を中心に,ソロ,宇波拓とのギター・デュオを交えたCD発売記念ライヴ.
 ドラムスの外山は,倉地と最も息の合った共演者と言えるだろう――あのタイム感覚に同調するのは至難の業の筈.稲田はヘルニアになったとかで,いつものウッドベースではなく座ってスティック・ベースを弾いていた.今回のCDのリミックスを担当した宇波は,相当聴き込んで稽古したのだろう,倉地奏法を能くコピーしたギターを披露.
 7/15三軒茶屋グレープフルーツムーンでは,全くのソロ.トリオも悪くないが,やはりソロが一番味わい深い.
 翌日の昼前,山手線車内で,目黒駅から乗り込んできた倉地にばったり出遭う.行き先は同じ――原美術館のヘンリー・ダーガー展――ということで,折角だから一緒に鑑賞〜美術館中庭でワインとパスタで昼食.ゆっくり話ができたのは数年ぶりという気がする.
 因みに,8/18青山 月見ル君想フ,8/19吉祥寺GOK SOUNDスタジオでもライヴあり.
 俺はここではあまり音楽について書かないことにしているのだけど,倉地久美夫については例外.断然推薦する.初めて聴く人はきっとその歌と演奏の特異さに驚くことだろう.独自の進化を遂げた一人民俗音楽.

[割と新しい映画を多く]
○想田和弘『選挙』(2007)
 2005年の川崎市議会議員選挙にコイズミ自民党の落下傘候補として初めて出馬した素人=山内和彦という人の選挙運動の日々を追った記録.話には聞くが知る機会のなかった「どぶ板選挙」の実態が生々しく伝わってくる.「映画作品」にはなってないと思うが,ドキュメンタリとしてはすこぶる面白い.
◎川島雄三『女は二度生まれる』(1961)
 若尾文子のエロかわぶりを堪能できる逸品.これで良いのかと思ったエンディングが,次第にあのエンディング以外にないと思えてくる不思議.
○宮藤官九郎『舞子Haaaan!!』(2007)
 クレージー映画へのオマージュだったのね.これが遺作の植木さんの出番は,何だこれだけ?とか,柴咲コウの芸者姿は似合わん...といった不満もあるが,10代から70代?までを演じる阿部サダヲの超ハイテンション演技にはまいりました.
△ジョゼフ・フォン・スタンバーグ『アナタハン』(1953)
 舞子はんの後はアナタハン.「アナタハンの女王事件」(説明省略)を基に日本で制作された,まぁ,国辱映画ですかね.スタッフロールでも日本人は全て苗字しか表示されない.特撮が円谷英二,音楽が伊福部昭というところが気になって鑑賞.
△佐藤祐市『キサラギ』(2007)
 謎の死を遂げたアイドルの一周忌に集まった5人のファンたちによる,殆ど密室劇.映画でやるより舞台の方がいい気もしたが,小栗旬,ユースケ・サンタマリア,小出恵介,塚地武雅,香川照之,いずれの演技も達者で,飽きさせない.宍戸錠の唐突な出演と,ラスト・シーンは蛇足.
△アレクサンダー・ペイン『サイドウェイ』(2004)
 恋とカリフォルニアワインに溺れる中年ダメ男たちを描いた低予算ロード・ムーヴィ.ワインを日本酒に置き換えて日本版を作っても面白いと思うが,登場人物たちが飲酒運転やり放題なところは,置き換え困難であろう.米国の交通規制はあんなにユルいのか?

[目がかすむ]
○北森鴻『深淵のガランス』
 絵画修復師を主人公にした,冬狐堂シリーズのサイドストーリー.まぁ,北森ファンですから...
○松井今朝子『一の富』『二枚目』・◎『非道、行ずべからず』『似せ者』
 祝直木賞受賞ですが,『吉原手引草』以上にミステリ・ファン,時代小説ファン,芝居ファンのいずれをも満足させる出来の『非道...』で受賞すべきであった.
△清水辰夫『行きずりの街』
 熱狂的ファンがいるらしいシミタツに初挑戦.上手いとは思ったが,今一つピンとこない和風ハードボイルド.作品ごとにタッチが違うらしいから,他の作品も読んでみないと.
○法月綸太郎『生首に聞いてみろ』
 大概は読んでも詰まらなかった法月作品であるが,今回は,久々にガチガチの本格推理を読んだ満足感が得られた.
○酒見賢一『墨攻』
 短編よりは長く,中編と呼ぶには短い小品ながら――『童貞』もそんな感じだったけど――簡潔・冷徹・濃密な文章は,物足りなさを感じさせない.古代中国を描いているが,白髪三千丈的な誇大表現は皆無.ただだらだら長いだけの小説――近頃の京極作品等――の対極にある.漫画版・映画版も見ることにしよう.

[合本]
 カート・キャノン(=エド・マクベイン)作・都筑道夫訳『酔いどれ探偵街を行く』(ハヤカワ文庫版)と,そのパスティーシュである都筑道夫『酔いどれ探偵』(新潮文庫版)を合本にし,両方のカバーをスキャン〜合成して作ったカバーを被せる,という遊びをした.
 漱石『猫』と内田百けん――ああ,平仮名だとマヌケだ――『贋作吾輩は猫である』と奥泉光『『吾輩は猫である』殺人事件』も合本にしてみようかな,でも分厚くなりすぎて読みにくそう.
 因みに,真作『酔いどれ探偵』の中に,ルンペン連続襲撃事件が起こり死者も出るが,高校生グループによる面白半分の犯行だった,という話がある.これが書かれたのは1954年だけど,なんだ,今と同じじゃん.

[国会図書館]
 久しぶり――14年ぶり?――に国会図書館を訪ねた.
 昔に較べれば,検索システムは一般の図書館並みには進歩していたものの,テキストの電子化は遅々として進んでいない様子.
 今回は60年代後半〜70年代前半の「レコード・マンスリー」誌を調べに行ったのだが,欠号が多くてガッカリ.そもそもこの雑誌,創刊は1966年なのに,ここには1969年11月号(第49号)からしか所蔵されていない.変なレコードがいっぱいリリースされていた一番面白い時期のがないんだもんなぁ... 更に,50〜52号,58号,59号,76〜78号,94号も抜け.
 日本一の図書館にしてはお粗末だと思う.

2007.08.13 GESO