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タイトル2010/09/10■184 さらば夏の腹立ち
記事No265
投稿日: 2013/10/05(Sat) 21:24:11
投稿者管理人
[積ん読増殖中]
○乾くるみ『リピート』(文春文庫 2007.親本 2004)
 ある年の10月30日に某所に出現する「時空の裂け目」に飛び込むと,同じ年の1月13日に遡行する――過去の自分の身体の中に現在の自分の意識だけが戻るという現象が生じる.
 つまり,期間限定だが何度でも人生をリピートできるという訳だ.全く同じ出来事が繰り返されるのではなく,自分の行動によって歴史――というには短すぎるスパンだが――を改変することが可能な多元宇宙論的設定だから,タイム・パラドクスは生じない.
 この手のSFは山ほどあるらしいけれど,本作がケン・グリムウッド『リプレイ』(新潮文庫 1990.原著 1987)に直接影響を受けていることは,作品内でも明示されている.ネタ本を明かすところを見ると余程自信があるのだろうが,俺はそっちは未読なので比較できない――今度読んでみたい.
 本作のミソは,タイムループものの設定に,「リピート」のツアーに参加した10人の男女が一人ずつ死んで――殺されて?――いくという『そして誰もいなくなった』の趣向を加えた所だ.誰が,何のために「リピーター」たちを殺すのか?
 因みに,ありがちな感動作にすることを拒み,性悪説的立場を採ってダークに仕上げている所も,この作者の持ち味だろう.

○紀田順一郎『第三閲覧室』(創元推理文庫 2003.親本 199)
 密室状態の大学図書館閲覧室で発見された,有毒ガスを吸い込んだ死体.背後に学内の権力闘争や稀覯本の真贋疑惑が絡む.
 この作者ならではの「本」の蘊蓄満載のミステリ.細部描写のリアリティの質が,奥泉光『バナールな現象』(集英社 1994他)に似ていると感じた.

?『東京朝呑み散歩 都内で朝から美味しく呑める主要100店』(三才ブックス 2010)
 居酒屋研究会会長に教えられて買ったムック.タイトルどおりの内容.便利だが危険な本なので,未だ実践していない.

△三津田信三『首無の如き祟るもの』(原書房 2007)
 「○○の如き○○もの」というタイトルのシリーズ三作目.
 二作目は未読ながら,一見一作目『厭魅の如き憑くもの』の二番煎じの横溝調ミステリ――旧家を舞台にした連続首斬り殺人もの――であるが,読了してみればバカ-メタ-ミスとでも言うべき結構で,本格ミステリの枠内にあった一作目とは全く異なる趣向だったので,一寸吃驚.
 しかし,立て続けにアクロバットを見せつけられると見慣れて衝撃を感じなくなるのにも似た「やりすぎ感」と,軽すぎる文体に不満が残る.
 それでも他の作品はどういう趣向を凝らしているのかが気になるので,シリーズ――中短編集を含めてあと5冊も出ている――を追って読まねばならなくなった... 面倒臭い.

[恨ミシュラン(懐)]
 久し振りに入った非常識な/不愉快な飲み屋.
 酒が来てから一時間以上待ってもツマミが冷や奴一つ出てこないのはどういう訳だ? 三人で来てるのに箸は一膳しか使わせないってのはどういう了見だ? メニューを切らしてるならなんで最初に頼んだ時点で「ない」と言わない? それとも土曜日はハツも煮込みも肉豆腐もないというのがこの店の「常識」なのか? 何で客が頭を下げてカウンターまで酒や肴を取りに行かなきゃいけない? 待たされた甲斐があるほど美味い料理か? 自慢の串焼きの味は並みっつうか しょっぱすぎるわ! もっと美味い店はなんぼでもあるね.
 頭にきたんで,帰り掛けに「一時間以上待たせて,客を客とも思わないようなこんな店,潰れちまえよ! みんなもよく黙って飲んでるな!」と悪態をついたのだが,店主は「そんなに待たせたっけ」と空惚け,カウンターにびっしりの客――常連のみと見える――は無反応.店主の顔色を窺って押し黙って飲んでて何が楽しいんだ,こいつらは?
 ...そーか,ここは信者の店なんだ.分かった.不信心者はもう二度と来るまい.
 5年前に一度来たときは,こんなにはひどくなかったんだが,常連にスポイルされた増上慢なのか?
 赤羽の「米山」という,行列のできる「もつ焼きの名店」である.店の独自ルールに従わない限り不快な思いをするだけだから,真っ当な酒飲みは行ってはいけない.

[らいう゛]
×「固有結界歌唱祭」(9/4 梅ヶ丘 Crazy Cats)
 弾き語り四人衆.
 森田智子(初期山崎ハコをユタ版にした感じだが演技過剰で嘘臭い)/細田茂美(25年振りに歌ったというがギターインストのみの方が多分増し)/賃貸人格(音痴なテルミン+不思議ちゃんヴォーカルという外連)/月本正(最もシリアスにしてランダムで良いが本来の出来としては今一つ).
 わざとらしい演奏が浅薄な客たちに受けている光景にげっそり...

2010.09.10 GESO