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タイトル2011/07/31■191 部分復帰
記事No272
投稿日: 2013/10/05(Sat) 21:32:22
投稿者管理人
 今朝も未明にやや大きな地震があったが,もはや「また必ず巨大地震が起きる」という前提で先のことを考えざるを得ないと思う.
 それでも原発を止めるべきではないという主張は「その方が儲かる」立場か,あるいは破滅願望からしか出て来ないのではないか...

 暫く何も書く気が起きなかったが,少し恢復したので,ここ数箇月間の覚書.

 3/11に自室の本棚が崩落した.主因が荷重超過にあったことは確実である.寝場所はその脇なので,震災発生が深夜だったら圧死していた可能性が高い.
 流石に懲りて,思い切って部屋のモノを大量処分することにした.
 ざっと書籍1100冊,LP250枚,シングル盤140枚,カセットテープ670本を処分.
 まだ半分以上――シングルなどあと1200枚も――残っているのだが,今はこれ以上減らすのは気分的に無理.CDも未だ棄てられない――数十枚は処分するつもりで纏めてあるが...
 本とLPは業者に買い取ってもらえたが,シングルとカセットは値が付きそうもないので,ゴミとして捨てるほかなかった.
 思い切ったつもりだったが,懐かしいカセットが詰まった透明袋がゴミ置場で雨晒しになっているのを見ると,胸が痛んだ.
 インデックスカード――律儀に英文タイプで打ったものが多い――だけは棄てきれずに取っておいたところが,我ながら未練がましい.
 ついでに,空になったカセットボックス群,アコギ,ギターエフェクター,ハードディスクレコーダー,古いノートパソコン等々場所を取るものを,何回かに分けて粗大ゴミとして処分したり,業者に引き取ってもらった.処理手数料がえらくかかった.
 工務店に壁の補強と本棚の作り付けを発注〜工事が完了し,何とかモノを置けるようになったのが6月下旬.
 ああスッキリした,もうモノは増やすまい――と思っているのだが...

○沼田まほかる『ユリゴコロ』(双葉社 2011)
 小説も映画も陳腐な「家族もの」が大多数で辟易するが,まほかるの最新作はミステリの骨子を保ちつつ生半可な家族小説の枠を超えて善悪の彼岸に至る家族愛を描いた力業.彼女の作品の中ではかなり「優しい」方だけれど初めての読者には過酷に違いなく好き嫌いがはっきり分かれるだろう.俺は断固支持.

○森田実『原子力発電の夜明け』(1966 日)
 東海村原発の建設工程を丹念に描いたドキュメンタリー映画.文部省推薦の国策映画だが,当時の大勢は「原子力の平和利用」を夢見て受け容れていたことが分かる貴重な記録.

○土本典昭『原発切抜帖』(1982 日)
 監督が実際に新聞や雑誌からスクラップしていた原子力問題関連「記事」の映像に,小沢昭一のナレーションと水牛楽団の演奏が被さるシンプルな実験的ドキュメンタリー映画.スリーマイル島事故後に作られたものだが,広島への原爆投下に始まり,ビキニ環礁での核実験,第五福竜丸事件,敦賀原発やむつ号の放射能漏れといった本作で採り上げられた数々のトピックを振り返ると,国や電力会社の対応が今回の福島原発事故後のそれと殆ど変わりないことや,いつの間にか話題に上らなくなり有耶無耶にされてきたことが分かり,結局誰も過去から学んでこなかったのだと思い暗澹とする.聞き覚えのある楽曲(例「君といつまでも」)のパロディめいた旋律が飛び出す水牛楽団の演奏は可笑しい――タモリの3枚目のアルバムを思い出した.

○連城三紀彦『少女』(光文社文庫 1988.親本 1984)
○同『明日という過去に』(幻冬舎文庫 1997.親本 1993)
○同『牡牛の柔らかな肉』(文春文庫 1996.親本 1993)
 尼僧が主役のピカレスク小説『牡牛』なんか殆ど漫画的な乗りのエンタメだけど,落とし所は結構深い.連城はやっぱり面白い.

△鮎川哲也編『怪奇探偵小説集』(双葉社 1976)
 戦前の作家の珍しい短編を集めたアンソロジー.村山傀多・江戸川乱歩・小酒井不木・大下陀児・横溝正史・大阪圭吉以外――城昌幸・倉田啓明・松浦美寿一・妹尾アキ夫・岡戸武平・橋本五郎・米田三星・平林初之輔・冬木荒之介・南沢十七・西尾正・氷川瓏・西田政治――は知らない作家ばかり.怪奇というより猟奇趣味的な作品が多いのが特徴だが,流石に古臭さは拭えない.徳南晴一郎「猫の喪服」を想起させる氷川瓏「乳母車」が,短いけれど印象的.本文イラストが花輪和一だったことに入手後気付いて,得した気分.

○辻真先『本格・結婚殺人事件』(朝日ソノラマ 1997)
 ポテトとスーパーが結婚する契機となる事件と言ったら,ファンなら読むでしょう.

△千葉泰樹『女給』(1955 日)
 平凡なBG(今ならOL)が,結婚資金を稼ぐために始めたアルバイト 銀座の女給(今ならホステス)業に嵌って成り上がっていくという,男性中心社会が続く限り「永遠に繰り返される」――近年のヒット作だと『女帝』みたいな――物語.主役の杉葉子は全然古びて見えない.

△千葉泰樹『悪の愉しみ』(1954 日)
 石川達三原作.ピカレスクロマンというには主人公のワル振りは世故すぎ/短慮すぎて,「実存主義的」という評価は全く当を得ていない.

○阿刀田高編『ブラック・ユーモア傑作選』(光文社カッパ・ノベルス 1981)
 初版当時買って読んだ記憶があるがいつの間にか紛失し古本で買い直したものを積ん読にしてたのが本の整理中に出て来たので懐かしくなって再読.編者が「ブラック・ユーモアの解釈をできるだけ広いものとして扱ってみた」と言うだけあって「桜の森の満開の下」「骨餓身峠死人葛」「夢十夜のうち"第十夜"」といった周知の名作もあれば飯沢匡「座頭H」や和田誠「おさる日記」といった珍品――どちらも傑作――もある全16編収録の充実したアンソロジーである.筒井康隆作品で選ばれたのが「五郎八航空」なのにはちょっと納得いかないけれど横光利一「ナポレオンと田虫」を読んで筒井が横光の影響を受けていることを再認識したり別のアンソロジーにも収録されていた日影丈吉「吉備津の釜」を再発見したりして楽しめた.これら全部を「ブラック・ユーモア」に括っても構わないのだろうが「奇妙な味の小説」と言っても差し支えないと思う.

△e-NOVELS編『黄昏ホテル』(小学館 2004)
 架空のリゾート・ホテルを舞台に20人の作家が競作したアンソロジー.古びたホテルには怪談が似合うと見えて,20作中5編は幽霊譚ないしそのヴァリエイションである.あとはミステリ,幻想小説,ハードボイルド等.気に入ったのは篠田真由美,加納朋子,牧野修の作品.

○東野圭吾『天空の蜂』(講談社文庫 1998.親本 1995)
 東野は好みじゃないんで長いこと積ん読していたが,ふと読んでみたところ意外な内容――犯人たちが自衛隊に納入予定の巨大ヘリを奪って無線操作し,敦賀原発の上空でホバリングさせて,全ての原発を停止しなければ落とす,と国を脅迫するパニック小説.猶予は数時間,おまけにヘリには誤って潜り込んだ子供が乗ってる... 発表当時読んでたら絵空事に感じたかも知れないが,今読むとかなり現実味を感じる.クライマックス部分があっさりしすぎているという不満はあるが,取材はしっかりしており,原発問題の殆どはここでも既に示されていたのだった.

○冨永昌敬『アトムの足音が聞こえる』(2010 日)
 アニメ『鉄腕アトム』の効果音を創った「音響デザイナー」大野松雄の足跡を辿るドキュメンタリー映画.大野の「手を抜いても手を抜いたように見せないのがプロ」(だったかな? まぁそんな趣旨)という姿勢と,小杉武久から借りたという発信器の使い方が面白かった.

△日本文藝家協会編『現代の小説1996』(徳間書店 1996)
 今も続いている短編小説の年鑑.伊集院静,山口洋子,有吉玉青,長部日出雄といったベテラン作家の達者な小説を読むと,普通の小説も悪くないなとは思うが,当方にとっての普通の小説というのはミステリとかSFとか幻想小説なので,泡坂妻夫や眉村卓や山田正紀を読んだ方がやはりしっくりするのだった.でも,野坂昭如――阪神大震災の後日談を描いた「神戸鎮魂――五十年目の娼婦」――など,流石に凄いと感心.

○都筑道夫『宇宙大密室』(創元SF文庫 2011)
 著者唯一のSF短編集――あとはショートショート集と長編――ということになってるけど,収録作品数では「創作エロ民話」が最多なので,ちょっと首を傾げてしまうが,気にするまい.同タイトルのオリジナル版は1974年にハヤカワ文庫JAから→短編3作品を追加のうえ再編集,『フォークロスコープ日本』と改題したものが1982年に徳間文庫から→更に中編1作品とインタビューを追加のうえ再々編集,過去の文庫版解説も再録し,タイトルを元に戻したのが今回の創元版.よって,この「完全版」を買えば過去の2冊を買う必要がなく,都筑入門用にはお得な1冊.

○蔵原惟繕『狂熱の季節』(1960 日)
 川地民夫のトークがあるというので,阿佐谷ラピュタで再観.河野典生の小説「狂熱のデュエット」を元にした日活ヌーヴェルヴァーグ作品.物語的には破綻してる気がするけど,映像は今見てもモダン.邦画で初めて手持ちカメラのみでゲリラ的に撮影した作品だったとか,当初は郷^治が主役の予定だったとか,川地さんは夏の間だけ逗子駅前で氷屋をやっているとか,面白い話がいろいろ聞けた.

○霧舎巧『名探偵はもういない』(原書房 2002)
 デビュー作『ドッペルゲンガー宮《あかずの扉》研究会 流氷館へ』(講談社ノベルス 1999)が今ひとつだったのでその後読んでいなかったが,本作は本格と新本格が適度にブレンドされており楽しめた.「読者への挑戦」なんて見るのは久し振りだ...

○池永永一『テンペスト 上下』(角川書店 2008)
 琉球王国末期を舞台にした大歴史ロマン.昔の大河小説に較べればテンポが速い.いかにもお約束の展開ながら,抗い難い面白さ.NHKでドラマ化したそうだが――家は見られる環境にない――菊地秀行ふうエログロシーンをどう誤魔化して描いたか,全10回にどう収めたのかには,興味ある.

○結城信孝編『ミステリア』(祥伝社文庫 2003)
 女性作家限定のミステリー・アンソロジーシリーズ.篠田節子・新津きよみ・加納朋子・近藤史恵・皆川博子は読んだことがあるけど,牧村泉・明野照葉・桐生典子・山岡都・菅浩江は初めて.ミステリといえるのは新津・加納・近藤の作品ぐらいで,あとはむしろホラーだが,どれも面白い.

○ダーレン・アロノフスキー『ブラック・スワン』(2010 米)
 スポ根的なバレエ映画を期待して観に行った人は,血腥さい描写と(エロティックというよりも)セクシュアルな描写にショックを受けるであろうサイコホラー.ナタリー・ポートマンの入神の演技とヘップバーン激似振りに圧倒されるだけでも観る価値あり.

○中島哲也『パコと魔法の絵本』(2008 日)
 泣くも笑うも一緒です((c)夕子と弥生).巧い監督である.

○武富健治『鈴木先生 11』(双葉社 2011)
 遂に完結.漫画史に残る作品の一つでしょう.

○諸星大二郎『西遊妖猿伝 西域篇 3』(講談社 2011)
○東陽片岡『シアワセのレモンサワー』(愛育社 2011)
○清野とおる『東京都北区赤羽 6』((Bbmfマガジン 2011)
○美内すずえ『ガラスの仮面 47』(白泉社花とゆめCOMICS 2011)
○日本橋ヨヲコ『少女ファイト 8』(講談社 2011)
 新刊が出たら必ず買うシリーズ漫画.あ,東陽さんのは初のエッセイ集.ガラかめは,ここのところ展開が早くなってきたとはいえ,今どきの連載漫画だったら数巻で済ませるところに40巻以上も費やしている所が凄い.

○堀江邦夫『原発労働記』(講談社文庫 2011)
 『原発ジプシー』(現代書館 1979→講談社文庫 1984)の復刊.「現場」を体験するために1978年9月から1979年4月にかけて美浜〜福島第一〜敦賀の3箇所の原発で日雇労働者として働いた記録.読んでいるだけで息苦しくなる過酷で危険な労働現場.汚れ仕事を日雇いに押し付けた電力会社の杜撰な管理.切られることを恐れて事故隠しに奔走する下請会社.手配師の阿漕なピンハネ等々.こうした構造は原発の始まりから恐らく何も変わっていなくて,これからも変わりそうにないと思うと,またしても暗澹とする.全くの偶然だが,作者が福島第一原発で働いていた1979年3月11日にも大きな地震が起こっている(事故には至らず).

○デュアル文庫編集部編『NOVEL 21 少年の時間』(徳間書店 2001)
○同『NOVEL 21 少女の空間』(徳間書店 2001)
 上遠野浩平・菅浩江・平山夢明・杉本蓮・西澤保彦・山田正紀(以上『少年』)・小林泰三・青木和・篠田真由美・大塚英志・二階堂黎人・梶尾真治(以上『少女』)による書き下ろし短編集.巻末に山田正紀と西澤保彦の対談を前後編で併録.脱-ジャンル小説といった意味合いで「ハイブリッド・エンタテインメント・アンソロジー」と銘打ってるけど,別にSFで括ったって問題ないと思う.どちらかというと「少年」編の方が面白かった.

2011.07.31 GESO