タイトル : 2012/07/01■193 ここ半年間の覚書(再録)
記事No : 508
投稿日 : 2023/01/21(Sat) 16:16:44
投稿者 : geso <
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本 ○ヤマザキマリ『テルマエ・ロマエ IV』(講談社 2011) ノイタミラ版アニメの安っぽさにはがっかりしたが原作は相変わらず面白い. ○『山田風太郎 ミステリー傑作選1〜10』(光文社文庫 2001〜2002) 刊行中に作者が逝去したことも感慨深いアンソロジー.他の短編集で既読の作品も多いが改めて読むとやはり山風の前に山風なく山風の後に山風なし.世に天才と呼ばれる作家の殆どは実は鬼才異才秀才の範疇だが山風は掛け値なしに天才.第3巻の解説で森村誠一がいみじくも述べているとおり「風太郎作品世界は同業者にとって盗みたい宝の庫」であると「同時に読者を魅了し尽くし、いったん虜にされれば脱出不可能な小説中毒の檻となる」もの. ○貴志祐介『ダークゾーン』(祥伝社 2011) ふと気付くと自分は戦隊の「駒」として何処とも知れぬ戦場に居りあるルールに則って敵戦隊と戦わなければならない...という設定は直ちに永井豪『真夜中の戦士』を想起させる.それは作者は百も承知で本作の中で「設定が(中略)まんまそっくり」と言及しているし小説ではフレドリック・ブラウンの『闘技場』という短編がこの種の――異世界でゲーム的な戦闘を強要される――物語の原型であることも説明している.ほかにも奥浩哉『GANTZ』や山田正紀『人藝競馬 悪魔のギャンブル』や作者自身の旧作『クリムゾンの迷宮』(焼き直し?)等連想される作品は多い.つまり設定自体はまるで目新しくない訳だからかなり自信がなければ書けない小説に挑戦した訳だ.古い革袋に新しい酒を入れるのが巧いということ. △同『悪の教典 上下』(文藝春秋 2011) 頭脳明晰という割には杜撰な犯行が多いにも拘わらず殆どがバレないというのはご都合主義的だがアスペルガーという言葉を回避したと思われる点を除いて自主規制なしにタブーを描いている点は潔い.下巻の大量殺戮シーン描写を読んでいると往年の『バトル・ロワイヤル』など牧歌的に思えてくる. △奥泉光『プラトン学園』(講談社 1997) 『バナールな現象』の続編?PCソフト内世界と現実世界との混淆を文学的虚構で包み込んだ作者得意の「虚構まみれ」メタエンタメ小説だが帯の惹句「クリックから始まる震撼のサイコ・ミステリー」というのはちょっと違うのでは.古い譬えで言えば『スミヤキストQの冒険』+『虚人たち』といった趣で『鳥類学者のファンタジア』『モーダルな事象』といった後の傑作の習作のよう.新聞連載小説だった点が意外. ○皆川博子『薔薇忌』(実業之日本社 1990) 短編7編を収録.全て芝居絡みのそれ自体が一幕の芝居のような作品の中でこの世ならぬ者たちが当たり前のように行き交う. △北川歩実『金のゆりかご』(集英社文庫 2001.親本 1998) △内田百閨w贋作吾輩は猫である』(旺文社文庫 1984.初版 新潮社 1950) 全篇無駄話. △村田基『愛の衝撃』(ハヤカワ文庫 1992) 再購入.もう少し描写力があれば... △やまだ紫『新編 性悪猫』(ちくま文庫 1990.親本 1980 青林堂) ○『日本探偵小説全集2 江戸川乱歩集』(創元推理文庫 1984) 中井英夫の解説も○.「化人幻戯」に「ユリゴコロ」を想起. △折原一『放火魔』(文春文庫 2010.親本『疑惑』改題) 折原の短編集の中では良い. ○『日本探偵小説全集9 横溝正史集』(創元推理文庫 1986) 正史再評価.栗本薫の解説も○. △美内すずえ『ガラスの仮面 48』(白泉社 2012) 展開は早くなったが手抜きも増えた. △中山康樹『かんちがい音楽評論 JAZZ編』(彩流社 2012) 著者自身の勘違いも多い. △『KAWADE夢ムック ジョン・コルトレーン』(文藝春秋 2012) フリージャズへの興味からではなく批評への興味から読んだがハズレ. ○山田正紀『ファイナル・オペラ』(早川書房 2012) 良くも悪くも正紀様にしか書けない能ミステリ. ○蛇蔵&海野凪子『日本人の知らない日本語 3』(メディアファクトリー 2012) △ひろのみずえ『首七つ』(大日本図書 2006) △蒼井上鷹『4ページミステリー』(双葉文庫 2010) △乙一他『七つの黒い夢』(新潮文庫 2006円) ○木内昇『茗荷谷の猫』(文春文庫 2011.親本 2008) △『アルテス VOL.01』(アルテスパブリッシング 2011)/△同VOL.2(同 2012) いずれも掲載記事は玉石混淆. ○島田裕巳『葬式は、要らない』(幻冬舎新書 2010) ほぼ同感. ○牧野武文『Googleの正体』(マイコミ新書 2010) △村瀬拓男『電子書籍の真実』(同前) やや出版社寄りの見方なのはやむを得ないか. ○服部まゆみ『ハムレット狂詩曲』(光文社文庫 2000.親本 1997) 後味爽やか.著者の早世が惜しまれる. ○連城三紀彦『黄昏のベルリン』(文春文庫 2007.親本1988 講談社) 国際謀略小説も書けるのね.抽斗多い. ○天沢退二郎『光車よ、まわれ!』(ピュアフル文庫 2008.親本 筑摩書房 1973) ○松田洋子『ママゴト 2』(エンターブレイン 2012) ○清野とおる『東京都北区赤羽 8』(Bbmfマガジン 2012) ○『アレクシア女史、欧羅巴で騎士団と遭う』 3作目.新作ほど面白いが順番に読むしかない. △山田正紀『ふたり、幸村』(徳間書店 2012) 時代小説にマジックリアリズムを導入する試みは面白いが本作では未だ物足りない. ○東陽片岡『コモエスタうすらばか』(青林工藝舎 2012) いつもと同じでいつも良い. ○赤江瀑『光堂』(徳間文庫 1996.親本 1991) 掛け替えのない作家がまた一人逝ってしまった. △横溝正史『髑髏検校』(角川文庫 2008.親本 1970) 表題作は竜頭蛇尾だが併録「神変稲妻車]は○.都筑・山風に共通する江戸読本〜講談本の系譜. ○卯月妙子『人間仮免中』(イースト・プレス 2012) 本人も凄まじいが周囲の人の「優しさ」の方が凄まじい. ○長岡弘樹『傍聞き』(双葉文庫 2011.親本 2008) お見事. ○横溝正史『悪霊島』(角川書店 1980) 遺作.長編は乱歩より巧いのでは. ○田中克彦『差別語からはいる言語学入門』(ちくま学芸文庫 2012.親本 明石書店 2001) 事なかれ主義と闘う言語学者はウヨクよりもトラディショナルでサヨクよりもラディカル.文学自体を差別的な存在と思わせるに至るラディカリズム. ○連城三紀彦『ため息の時間』(集英社文庫 1994.親本 1991) 巧緻な小説を書く他の作家と較べて鼻につかない理由の一つは知識や情報をひけらかさないことか. 雑誌類略. 映画 ○レフ・マイェフスキ『ブリューゲルの動く絵』(2011 波・瑞) ブリューゲルの『十字架を担うキリスト』(1564)を「実写化」した怪作.イエスがゴルゴタで処刑される――復活が描かれないのは本作が宗教映画ではないという表明か――1世紀前半のローマと異端者が虐殺される16世紀半ばのフランドルが重ね合わせて描かれる.ブリューゲルが風車番に合図して風車が止まると同時に時間も止まるという場面――あんたらはクロノスか?――が特撮ではなく出演者「ほぼ」全員――馬はずっと尻尾を振ってたし指先で演技してる役者もいた――が動きを止めて演じているところがアナログで良かった.シャーロット・ランプリング(聖母マリア)もルドガー・ハウアー(ブリューゲル)も年齢相応に老けてた... △園子温『ヒミズ』(2011 日) ○平野遼『ホリデイ』(2011 日) ○武内英樹『テルマエ・ロマエ』(2012 日) △入江悠『SR3 ロードサイドの逃亡者』(2012 日) ×フェデリコ・フェリーニ『8 1/2』(1963 伊) フェリーニってどこがいいんだろう.ニーノ・ロータの音楽が無ければ観るに耐えない. ○篠田正浩『夕陽に赤い俺の顔』(1961 日) 再見.DVD化希望. ○岡本喜八『殺人狂時代』(1967 日) 三見.天本英世カッケー! ○スティーブン・ダルドリー『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』(2011 米) △マーティン・スコセッシ『ヒューゴの不思議な発明』(2011 米) 映像は良いがシナリオは散漫. △ティム・バートン『ダーク・シャドウ』(2012 米) 異形を演じるデップはいつも楽しそう. DVD ○ピエール・コフィン+クリス・ルノー『怪盗グルーの月泥棒』(2010 米) ○園子温『冷たい熱帯魚』(2010 日) グロの徹底ぶりが爽やか. ×常田高志『タケオ』(2011 米) ダウン症のドラマーを描くドキュメンタリーだが主役を持ち上げる演出が過剰. △大曾根辰夫『七変化狸御殿』(1955 日) 有島一郎の怪演が楽しい. ○マリア・ホルヴァット(『ハンガリアン・フォークテイルズ』(2002 洪) まんがハンガリー昔ばなし. △ピンク・マルティーニ『DISCOVER THE WORLD』 コンサート・ライヴ.嫌いではない頽廃音楽. ○ニールス・アルデン・オプレヴ『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』(2009 瑞) △ダニエル・アルフレッドソン『ミレニアム2 火と戯れる女』(2009 瑞・丁・独) △同『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』(2009 瑞・丁・独) 2,3も工夫を凝らして飽きさせないもののやはり1作目がベスト.先に映画を観てしまったが原作を読まねば. CD ○五月みどり『青春傑作集』(2011 日) △ウォルフガング・ダウナー『FREE ACTION』(1967 独) △ピンク・マルティーニ『Splendor in the Grass』(2009 米)[邦題『草原の輝き』]. ○カン『The Lost Tapes』(2012 米) 1968〜1975年の発掘音源3枚組.サンパチオープンリールテープのパッケージを復元した箱入り/縦25cm×横26cm×24ページカラーブックレット付きで2.637円.安すぎる!というか,邦盤って高すぎ. ライヴ △1.22六本木スーパーデラックス 倉地久美夫トリオ △3.17新宿K'sシネマ 倉地久美夫ミニライヴ 3.18高円寺円盤 △柳家小春・○倉地+柳家 4.29高円寺彦六「魂の密会」 ×大谷氏・○竹田賢一 △5.4新宿裏窓 西村卓也ソロ △5.5新宿裏窓 竹田賢一ソロ △5.6新宿裏窓 鈴木健雄ソロ ○6.2国立アトリエダダ 蜂蜜劇場『不屈の民』 6.9吉祥寺FoxHole △triola・△倉地ソロ・△クミオラ(倉地+triola) 6.10池袋MusicOrg ○吉田悠樹+ジム・オルーク+山本達久・△倉地ソロ・×倉地+山本+吉田+オルーク. 2012.07.01 GESO