記事No | : 138 |
タイトル | : 2000/12/11■038 殺人狂時代 |
投稿日 | : 2013/10/05(Sat) 10:06:03 |
投稿者 | : 管理人 |
[殺人狂時代]
チャップリンじゃなく岡本喜八の『殺人狂時代』('67)を貸ビデオで見た.
当時危うくお蔵入りにされかけた作品だそうだが,なんでだろう.東宝の偉いさんに見る目がなかったのか? 殺人をコメディータッチで描いてるとこが不穏当だったのか?
お話は,一言でいえばキャッチコピーどおり「和風007」という感じ.「秘宝」を隠し持つと思われる主人公に殺人組織から次々と刺客が送り込まれ,それを返り討ちにしていくというB級スリラーだが,殺し方のアイディアが面白いのと,役者が皆いい味出してるところがいい.
主人公の仲代達也の演技はちょっと鼻につくけれど,脇役の団礼子の色っぽさとか砂塚秀夫のとぼけた感じ,そしてなんといっても敵役の天本英世のカッコよさね.ヒトラーを崇拝する殺人狂の精神病院院長なんて,余りにもハマり役である.
なぜこのビデオを借りたのか.理由は『なめくじに聞いてみろ』である....
[椎名林檎ライヴビデオ]
予定期日を遅れて2本同時発売.
バックバンドとして虐待グリコーゲンを従えた『下克上エクスタシー』は,余りにも普通のロックバンドのライヴっぽく,挿入される楽屋シーン等は余りにも楽屋落ちっぽく,更に,林檎のヴォーカルはハードな演奏(まったくソツがないという点でつまらない)に対抗するためか叫びっぱなしでニュアンスに乏しく....正直がっかりしつつ観ていたのだが,エンディングロール後の,例によって曲目クレジットに未記載の,ストリングス入りのメドレー(「闇に降る雨」〜「幸福論」〜「正しい街」〜「同じ夜」)が,それまでの失望を帳消しにして余りある出来で,よかった.それも多分計算済みなのだろうから,実にあざとい演出ではある.
もう1本『御起立ジャポン』は,林檎のソロというよりも,彼女がメンバーの一人である「発育ステータス」というインディーズパンクバンドのビデオという作りである.長ったらしいスタジオ練習シーンとライヴ後の反省会?の間に,ライヴハウスでの演奏シーンが入る.B3人+G+Dsという一見奇を衒った編成は,普通の3ピースのロックバンドでも事足りるので余り意味はない.お友達バンドって感じ.オマケで入っているナンバー(「光合成」だったか)が林檎をフィーチュアしてるから,辛うじて彼女のアルバムということが分かるという程度に,ソロとしての林檎を表に出してはいない.ナンセンスな歌詞の合間に「只今生理中で正確には腰が痛いの/あの男は絶対押し倒して 遣ってしまうわ/...とかそう云うのも統べて私の戦略/可哀想と思わせて貴方に優越感/そうこうして居る合間に二人共全裸/大抵精巣を持った生き物は簡単なのだもの」(「咲かせてみて」)なんて身の蓋もない歌詞を出してくるところはちょっと凄いが(曲がつまらないのが残念である).この「戦略の公開」という戦略が,今の林檎そのものなのかも知れない.
林檎はファンを切ろうとしてるいうか,淘汰しようとしているみたいだ.それは,先のCD3枚組『絶頂集』の作為的なローファイな作りをみても分かる.
俺はあくまでも歌謡曲として林檎を聞いてきたので,この先ついて行けない=淘汰される側になりそうな気がする.シングル盤は今のところ皆OKだけど,あとは『無罪モラトリアム』しか響いてこないもんな....
こっちから見れば,「インディーズアイドル」宣言してからの宍戸留美が面白くなくなったのに似たケース.
....疲れた.
2000/12/11 GESO