記事No | : 204 |
タイトル | : 2004/09/19■104 困るのことョ |
投稿日 | : 2013/10/05(Sat) 14:40:44 |
投稿者 | : 管理人 |
[落札]
78年に公表した最初の第五列テープが,ヤフオクで5,950円で落札されたという(開始価格は1,500円).
う〜む....あれは当時委託販売分は700円,通販は実費のみ(テープ代+送料)で頒布してたものなのだが.
今だって希望があれば無料でダビングするのに.
まー,オークションの参加者って,安く入手することが目的じゃないみたいだし,売り手にとってはいい小遣い稼ぎだろうし,別にいいんだけどさ,何か腑に落ちない....
[だるま]
先日初めて行った深川の居酒屋.
平均年齢60歳を下らなそうな客は,殆どが常連らしく和気藹々で,カウンター席の座る場所も決まっている様子だが,別に排他的な雰囲気ではない.
バイトの女性二人(中国系?)の愛想の無さはバランスの上ではむしろ好ましい.
イイ顔のオヤジを大量に見られて,眼福.
福本さん,また行きましょう.
[ハイライトメンソール]
近年のJTはトチ狂ってる.ハイライトでメンソール.しかもラム風味.単なる邪道.
[併読]
前からやってるんだけど,最近は内容的に連想が働く本を新旧問わず併読することが多い,
小松美彦『自己決定権は幻想である』とパオロ・マッツァリーノ『反社会学講座』と関満博『現場主義の知的生産法』.
デニス・ルヘイン『シャッター・アイランド』と殊能将之『キマイラの新しい城』.
副島隆彦『人類の月面着陸はなかったろう論』とと学会『トンデモ本の世界S』とエム・ハーガ『アポロってほんとうに月に行ったの?』.
山田正紀『地球・精神分析記録』とトマス・M・ディッシュ『プリズナー』.
という具合に.
時々訳が分からなくなるけどそれがまた良くて....変かな.
[河合香織『セックスボランティア』]
障害者の性愛の実態に迫ったノンフィクション.
既に北島行徳やホーキング青山の著作を読んでいた――北島『無敵のハンディキャップ』は取り分け面白かった――せいか,本作の著者に関しては今一つ腰が引けているという印象を否めない.真面目な常識人故の限界か.幼い頃通りがかりの男に悪戯されたという体験も恐らく影を落としているのだろうが....
健常者であろうと障害者であろうと「正しいセックス」など定義不能だし,倫理によって正誤の線引きをすることはむしろ有害だと思う.
「当事者が合意していれば何でもアリ」の原則で良い.というか,結局それしかないんじゃなかろうか.
[奥村チヨ『幸福の木の花』]
ファン以外にとっては何の価値もない自伝風エッセイ.
芸能人らしからぬ常識人ぶりが意外.おのろけや家族自慢も多いが,嫌味にならないところに育ちの良さが窺える.
さて,チヨは来年でデビュー40周年.30周年のライヴも観に行ったことだし,今度も是非足を運びたい.
[アーロン・マッグルーダー『ブーンドックス』]
ノンセクト・ラジカルの黒人小学生が主人公の,米国の新聞4コマ(時に1コマ〜3コマ)漫画.
絵柄には日本のアニメと漫画各種の影響が見られる.日本人には分かりにくいネタも多いが,訳注で補える.
日本以上に生ぬるいらしい向こうの新聞漫画の世界――何しろ『ブロンディ』の連載が今でも同じスタイルで続いてるというんだから――にあって,この過激さは異色だ.
作者は本作を通して9/11直後の愛国奴だらけの情勢下,唯一ブッシュを批判し続け,当然非難も浴びたが,それに応えて時々『星条旗くんとリボンちゃん』という差替えのお笑い愛国漫画(本書に収録)を描き,更に愛国奴たちをおちょくった.大したタマである.
アニメ映画化進行中とのことで,期待大.
[山田参助『若さでムンムン』]
サイバラ宅に居候してるホモの漫画家が昔「さぶ」に連載してた作品.
見境ない変態なのに何故か爽やかな青春モノ.受け付けない人は当然受け付けないでしょうけど.
[鯨統一郎『喜劇ひく悲奇劇』]
「回文サークルの合宿で起きる連続殺人」.設定からしてバカである.
読んでみたらやっぱりバカで,脱力.こんなオマージュを貰っても泡坂妻夫は苦笑するしかないだろう.
それでも俺は何故か鯨か嫌いになれない.ハルキの新作など手に取る気も起こらないというのに....変かな.
[奈須きのこ『空の境界』上下巻]
講談社文三が「新伝綺ムーブメント」を盛り上げようと神輿をかついでいる作家の,伝説の同人誌小説を再録したもの.
萌える人は萌えるのでしょうが,俺はさほど....
それよりも,本邦伝奇小説史を語りつつ本作を過剰にヨイショしてる笠井潔の解説が,別の意味で楽しめる.
例えば上巻解説から.
「1989年1月、昭和天皇の死に直面した80年代伝奇小説は、急激な失速と空転の過程に入った。東アジアの占領地で大量虐殺を繰り返した皇軍の大元帥という魔的なイメージが、伝奇小説的な想像力を裏側から支えていた。魔王としての昭和天皇の生物学的な消滅は、天皇を最大最兇の敵役に祭りあげてきた伝奇小説的な想像力に、回復不能ともいえる深刻な打撃をもたらしたのだ。」
ここに出てくる「伝奇小説」を「アングラ演劇」に置き換えても文脈上殆ど違和感がなくて,面白い.
一方,下巻解説の次の箇所の場合,同様に置き換えることはできない.
「天皇という想像上の「主敵」を見失った伝奇小説は、最後の活路として、宗教的根源を探求する修行者にヒーローのイメージを託した。しかしオウム真理教が自滅して以来、伝奇小説を支えてきた構図は完全に失われたのである。この過程は日本社会の急速なポストモダン化と並行してきた。」
アングラ芝居の場合は,修行者にヒーローのイメージを託す訳にも行かず,一足先に失速・空転してしまったような気がする.
[筒井康隆『天狗の落し文』]
ある日3階の部屋で寝ていて,ベッドから落ちる夢を見た.
翌朝目を覚ましたら,直下の2階の部屋で寝ていた.
数日後,2階の部屋で寝たとき,再びベッドから落ちる夢を見た.
翌朝目を覚ましたら,直下の1階の部屋で寝ていた.
以来,1階の部屋では寝ないことにしている.
[小関智弘『粋な旋盤工』]
「つくる喜びと生きる呪い」(久保栄)ってのは至言だな.
この本を読むずっと以前から
♪恋人が旋盤工 本当はセンザンコウ マンドリン抱えて
♪恋人が旋盤工 指のない旋盤工 過疎の町から来る
♪恋人がセンザンコウ 本当は旋盤工 アルマジロじゃなくって
♪恋人がセンザンコウ 背の硬いセンザンコウ 私の家に憑く
てな替え歌が脳内ヒットソングの一つとして時々頭の中で流れとったものぢゃ.
[サミ・マーティン・サイフ『ドッグヴィルの告白』]
『ドッグヴィル』のメイキングもの.
閉鎖された体育館での長期にわたる撮影が進むに連れ,監督も俳優たちもどんどん追い詰められて行く様は,本編に劣らずスリリング.
ラース・フォン・ トリアー監督は「情緒不安定なバカボンの親父」であった.
[ケイト・デイビス『ロバート・イーズ』]
米国では性同一性障害者や性転換者は「黒人や同性愛者よりも激しく差別されており,プランクトン以下の扱い」だという.
この映画の主人公(身体は女性で精神は男性)も,子宮癌末期で余命幾ばくもないというのに,どの病院からも「普通の患者に迷惑」との理由で入院を拒否されてしまう.住んでるのが南部(ジョージア州)だから尚の事なんだろうけど,酷い話.
で,これは彼が自宅で恋人(身体は男性で精神は女性)に看取られて死ぬまでの1年間を追ったドキュメンタリー映画.淡々とした描写が時には声高な主張よりも説得力を持つという実例.
[是枝裕和『誰も知らない』]
柳楽少年がカンヌで主演男優賞ってのは,何か違うって感じ.演技どうこうじゃなくて,的を射た演出と丹念な編集の勝利でしょ.
「現実の事件に基づくフィクションをドキュメンタリーの手法で撮った映画」としては,出色の出来だと思う.
特に胸苦しさと奇妙な明るさとが混淆する後半は,かなり深く記憶に刻み込まれた.
[サム・ライミ『スパイダーマン2』]
ちょっと詰め込みすぎの感があるけど,前作よりいいじゃないですか.「2」の方が良いなんて希有なことだ.
亡父の正体がグリーン・ゴブリンだったことを知ったときのハリーの心理描写がなかったのは,「スパイダーマン3」に向けての伏線だろうか.
[チャールズ・ストーン三世『ドラムライン』]
明朗青春スポコン――マーチングバンドだけど――映画.
全てお約束の展開だが,取り敢えずスカッとはします.
[アッバス・キアロスタミ『桜桃の味』]
パルムドール受賞作か.... そんなに良いかなぁ? 確かにカメラワークは凄いと思うけど.
2004/09/19 GESO