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記事No : 222
タイトル 2005/11/06■122 次はダンプ・ヒップ・バンプ
投稿日: 2013/10/05(Sat) 16:24:30
投稿者管理人

[電車と飲み屋で読んだ本]
○谺健二『未明の悪夢』・△同『恋霊館事件』・○同『赫い月照』
 自身が体験した阪神大震災にこだわり続ける作家の「今日的な社会的主題に古典的な探偵小説形式を真正面から噛み合わせた」(笠井潔)三部作.震災と神戸に係わる,ときに過剰なまでの描写と,猟奇的奇想との危ういバランスは,取り分け3作目において島田荘司作品の味わいに酷似.
△蘇部健一『木乃伊男』
 『六枚のとんかつ』で世の顰蹙をかったソブケンのサスペンスミステリ.虚仮威しと言ってしまえばそれまでだが,絵解きとして里中満智子のイラストを用いたミスマッチ感覚が楽しめる怪作.文庫版は紙が薄いため裏ページのイラストが否応無しに透けて見えてしまうので,目の焦点を合わせないようにして読まねばならない.
 短編集『六とん2』も出たが,こちらは著者の解説どおり――何と正直な作者であろう――1話目を立ち読みしたら買う気が失せた.
○岡嶋二人『99%の誘拐』
 まだインターネットではなくパソコン通信の時代だった1988年当時の,最新ハイテクを駆使した完全犯罪小説.リアルタイムで読んでいたらもっと楽しめたかも知れないが,確かに傑作の呼び声高いだけあるよく出来た作品.
○山田正紀『夢と闇の果て』
 20世紀の沖縄東嶽島(西表島がモデル)と未来(22世紀以後?)の外宇宙(ペルセウス座あたり)を舞台に,物語と反=物語の闘いをネゲントロピーとエントロピーの闘いに比定して描いた神話的SF――なんて説明じゃ訳分かんないが,へぇこんな浪漫的小説も書いてたんだと感心した1984年作品.
△古川日出男『ベルカ、吠えないのか?』
 なるほどこれが豊崎由美ベタ褒めの,犬と戦争の20世紀クロニクルですか.無駄な描写を削ぎ落としたハードボイルドな二人称文体(犬への呼び掛け〜遂には対話に至る)は小気味良く,格好いい小説だけど,絶賛するほどのものかしら? このレヴェルなら,例えば正紀様なら――多分,良くも悪くもより読者サービスを加えて――チャッチャと書けると思うけど.豊崎は犬好きらしいし俺は犬嫌いだから,いずれもバイアスかかってるのだろうが.「版元(文春)は登場する犬たちの系図を付けるぐらいのサービスはしろ」という趣旨の彼女の意見には賛成.確かに入り組んでますから.まぁ,ファンだったら自分で系図作りゃいいんですがね.
△小田ひで次『夢の空地』
 『クーの世界』の後日談だが...何だか暗すぎて,『クー』の方が良かった気がする(ので読み返したらそのとおり).作者には余り「あっち側」に行かないで欲しい.6箇国同時刊行ということで左起こしになってるが,日本の漫画は右起こしのまま出しても構わないと思うんだけどな.「少年ジャンプ」なんかは右起こしのまま出てるそうだし.
△福光しげゆき『僕の小規模な失敗』
 自虐的自伝漫画だが,ダメダメな自分を「本当は凄い奴」と肯定している節があって,実はそこが最もいやらしくてダメな点だったりする.嫌になるほど実話なんだろうけど,漫画として突き放して見れば森恒二の路上格闘漫画『ホーリーランド』とそんなに縁遠くもなかったりして.森作品はリアルだがあくまで虚構=物語として作られているから,世間に受け入れられるんだろうが,福満作品は絵も構成もそこそこ上手いけれど,自分のことしか描けない/事実を基にしか描けないという限界があって,これはやはり世間を狭くするばかりで不幸かも知れない... 面白いことは面白いが.
×東川篤哉『交換殺人には向かない夜』
 古臭いユーモア感覚だなぁなどと不満に思いつつ,何で俺はこの人の作品を全部読んでいるのだろう.不思議.
○田中圭一『鬼堂龍太郎・その生き様 2』・△『ドクター秩父山 永久保存版』・△同『ドクター秩父山だっ!! 永久保存版』・○同『昆虫物語 ピースケの冒険 永久保存版』
 何だこの田中圭一祭り状態は.ブレイクしてるのか? 「秩父山」には流石に古さを感じるが,少年誌(サンデー)で下ネタギャグの限界に挑んだ「ピースケ」――装幀は初版の方が良い――は未だに面白い.やはり何かしら制約があった方が創作にはいいのかも知れん...
○伊坂幸太郎『死神の精度』
 伊坂版の死神――死神にも性別があって,これは男性――は,帰国子女の公務員みたい.で,無関心を装っているが,案外人間に興味があるらしい.
 今は最新作『魔王』を読んでるところだが,幸太郎はやっぱり巧いわ.この年代の作家(彼は1971年生まれ)では一番かも.
○諸星大二郎『魔障ヶ岳』
 作者は不本意でも,出版社の意向で「妖怪ハンター」シリーズと銘打たなければ出せないのでしょうね.異界のモノに名前を付けてはいけないよ,危ないから,というお話.

[やさぐれ気分で観た映画]
×滝田洋二郎『阿修羅城の瞳』
 宮沢りえは最後の映画スタアかも知れない.彼女が出ていなかったら,全く観るに堪えなかったと思われる,派手で空疎な伝奇映画.
△遠藤賢司『不滅の男 エンケン対日本武道館』
 観客ゼロの武道館でも完全燃焼できる男・エンケンの俺節炸裂ソロライヴ映像.「夢よ叫べ」を聞いて,三上寛が狂ったアキラならエンケンは狂ったバタやんだな,と思う.
△帯盛迪彦『ある女子高校医の記録 初体験』
 ラピュタ阿佐ヶ谷の特集「渥美マリ伝説」で7作が上映されるというので,観ない訳にはいかない.観たことあるのも3本あるけど,もう内容忘れたし.第1弾の本作は,渥美マリ出演といってもワンノヴゼムで主演とは言い難い.タイトルは扇情的だが,中身はまぁそこそこ健全な青春映画だった.脇役で金子信雄・大泉滉・藤村有弘らが出ているのが嬉しい――みんな死んじゃったんだなぁ... 映画としては他愛ないが,新宿を舞台にしたゴーゴー,サイケバーなど1968年当時の風俗レポートとして楽しめる.GS研究家黒沢進の著書にも出てこない「ザ・ブラック」という謎のGSの演奏を見られるだけでも貴重.

[たまには宣伝しなけれは]
 80年代の演奏を収録した第五列『社長は判ってくれない』(アルケミー ALCD-165)新発売! 昨今のヨーロッパ力士の活躍を予言した作品集って,どういうこと?
 因みに70年代の演奏を収録した第五列『社長が出せって言えば出すから』(同 ARCD-128)も発売中! こっちは特に何も予言してない.
 これに合わせて「あかなる〜む」の第五列アーカイヴも充実させたいところですが,管理人が多忙のためなかなか進みません.気長にお待ちください.

2005/11/06 GESO


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