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記事No : 250
タイトル 2009/07/29■169 HAVE YOU EVER SEEN THE CAT KILLED BY CURIOSITY?
投稿日: 2013/10/05(Sat) 21:07:19
投稿者管理人

[クリーンインストール]
 必要に迫られて,何年振りかでOSをクリーンインストールした.
 以前とほぼ同じ環境に戻すまでに,ヘマしたり何だかんだで30時間以上もかかったけど,お陰で今はパソコンがキビキビ動いてて,快適.当分買い替えなくても済みそうだ.

[イマイチな映画たち]
△鈴木卓爾『私は猫ストーカー』(2009 日)
 浅生ハルミンの同名作品の映画化.原作はエッセイ集だし,どうせ猫好きしか観に来ないんだから,あってなきが如き物語を付加せずとも,単に谷中・根津・千駄木界隈の猫ドキュメンタリ映画として作れば良かったのに.因みに素敵だけど印象に残らない音楽は蓮実重臣.

△青山真治『サッド ヴァケイション』(2007 日)
 三部作の完結編だと後で知った.前二作――『Helpless』と『EUREKA』――は観てないので,単独作品としての感想しか言えないが,石田えりの「母性の恐怖」をもっと描き切れば傑作になったかも知れないのに,中途半端だったのが残念.往年の日活映画みたいにオーソドックスな大衆向け映画の作りに徹すれば良かったのに,何か意図的にユルユルにして新しさを出そうとしてるみたいな所も残念.役者によって――特に浅野忠信――台詞の音量が小さすぎて聞き取れず,苛々した.

[内宇宙は遠くなりにけり]
○舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日 上下』(新潮社 2008)
 図書館で借りた.久し振りに読んだら,舞城,いいじゃん.
 大々的に展開される唯心論的世界モデルには別に賛同できないが,その過剰さには充分楽しませてもらった.ここ数十年間のSFやミステリの諸形式がワタケタにぶち込まれているが,最後に総ての伏線が回収される力業(なのか?).筒井『脱走と追跡のサンバ』(初版1971)の21世紀版みたいな印象や,スケールアップされた都筑『銀河盗賊ビリィ・アレグロ』(初版1981)といった味わいもある.
 だけど,この一見巫山戯た妄想小説が実は大真面目な倫理の書だということを,『1Q84』を有り難がるような読者は理解できないだろうな...
 本作の謎は――『九十九十九』(2003)でもそうだったけど――「何で舞城は本人に成り代わってまで清涼院流水を救済しようとするのか?」ということに尽きる... 流水なんて放っときゃいいのに.

○デビット・ゾペティ『いちげんさん』(集英社文庫 1999.親本 1996)
 「隠微な官能を伴った爽やかな恋愛」をリアルに描くことは,そうした恋愛が希少なものになったこともあって,かなり難しいことなのではないか.少なくともタブーのない性愛小説を書くよりも難しいと思う.
 この短めの長編がそれにある程度成功しているのは,作者の実体験を取り入れたからという理由も当然あるけれど,「語り手は外国人留学生」「その恋人は盲目の日本人女性」「舞台はいちげんさんに差別的な京都という町」といった複数の「不自由な要因」を設定したことによる.これらのハードルを設けずに描いていたら,むしろ嘘臭くなっただろう.
 だけど,ベルリンの壁崩壊のテレビニュースを観た主人公が淀んだ京都の空間から外の現実に一気に連れ戻されるあたりの描写は,確かに村上春樹風かも知れないが――読んだことないから想像で言ってるだけだが――「谷崎的な陰影と気配の世界を、村上春樹風の現代的で、多分に英語(ヨーロッパの言語)の影響を受けた文体で見事に換骨脱胎した」なんていう解説(沼野充義)を読むと,つい鼻白んでしまうのだった.

×内田樹『態度が悪くてすみません』(角川Oneテーマ21 2006)
△内田樹・名越康文『14歳の子を持つ親たちへ』(新潮新書 2005)
○内田樹『先生はえらい』(ちくまプリマー新書 2005)
 他にも積ん読多数.内田センセに限っては反面教師の度合が高いものが○という評価で,×は普通に読める部分が多いことを意味する.
 取り分け,中高生対象の啓蒙書『先生はえらい』には,原因と結果を逆転させる得意技が分かりやすい形で示されているから,14歳前後の子供たちの中でも屁理屈好きのお子らには,良くも悪くもタメになるだろう――真似したらハブにされるかも知れないが.
 例えば「おそらく、コミュニケーションはつねに誤解の余地があるように構造化されているのです」といったラカン的記述=詐術.
 センセが信奉するラカンの構造主義は「無意識は言語のように構造化されている」とするイデオロギーだが,俺は「無意識」なんて元々存在しない――「無自覚」はあまねく存在するが――と考えてるので,それが構造化されているなどという論には当然賛同できないし,そもそも一見「客観的」に存在するかのように説明される「構造」自体,論者の「主観的」な発明に過ぎないと思っているので,説得力を感じない――捻くれていてすみませんが.
 だって,無意識が構造化されてるなんていう虚構は,全ての人間にあらかじめ共有されているものじゃないんだから,共有させる為には,学習による馴致が必要になるでしょ?
 なぜわざわざそんなことをするのか――西欧的「知」の植民地主義が,そうせよと命じるからだろうな.
 構造化されていない「無意識」は分析できないから,欲望の隠れ家として構造化された無意識をでっち上げたうえで,それを分析し隠された欲望を発見するという,自作自演の手品=マッチポンプ――それが,植民地主義の尖兵の一つ「精神分析」というものだ.
 ラカンが最初に来日した当時(1971年)は,日本人の無意識の構造化はそれほど進んでいなかった――未だ「野蛮」だった――から,精神分析の対象にはなり得なかったみたいだけれど,その後,お先棒を担ぐ日本の学者連中――その末席に内田センセもいらっしゃる訳だ――の努力の甲斐もあって,今日では日本人の無意識も多少は分析の対象になるくらいに「進歩」したらしい.お目出度いことである.
 身体性とはおよそ懸け離れた仏蘭西現代思想を日本的身体論と結びつける荒技まで演じて,既に破綻してる(んでしょ?)彼の地の/知の代弁者として活躍を続ける内田センセという人は,全くもって弟子の鑑であると言える.
 因みに,『先生はえらい』でセンセが西欧の「すごく、頭のいい人」としてラカン,フロイト,マルクスの三人のみ実名を出して賞賛しているのは,お里が知れて微笑ましいけれど,欲望の力動的解釈はむしろドゥルーズ=ガタリ的なのに,彼らの名前を全く出さない所に,何か思惑が感じられるなぁ...

?都筑道夫『都筑道夫の読ホリデイ 上下巻』(フリースタイル 2009)
 各巻2,500円+税なんて高い本は滅多に買わないんだけど,当初ダイジェスト版一巻もので出す予定だったのを二巻本にして全編収録した,フリースタイル社の英断に敬意を表して,購入.
 中身は「ミステリマガジン」1989年1月号〜2002年9月号に連載された読書日誌で,ひょっとしたら最後の都筑本になるかも知れない.
 実作者の立場で作品を評する都筑の目はかなり手厳しいし,好き嫌いも目立つけれど,評論家による評にはない具体性――自分ならこう書くという例示までしたりする――があって,ナルホドと思わせる.
 まだ上巻の半分までしか読んでいないが,都筑センセーが褒める作品はやはり読みたいと思ってしまう.
 脱線も多いけれど,本筋に関係ない話題も面白いのでOK.例えば「戦争中、東条首相が、聖戦の完遂をカンツイ、未曾有の大戦をミゾウユウというのに、だれも注意できなかったらしい」という話(←麻生太郎の読み間違いを想起せずにはいられない)だとか,「金田一耕助が若いころ、アメリカ西海岸で(中略)起った殺人事件を、耕助が麻薬とたたかいながら、解決する話なぞを書いたら、おもしろいだろう。(中略)だれか挑戦しないかしら。」(←後の山田正紀『僧正の積木唄』(2002)が正にその挑戦作)だとか...

△鮎川哲也監修・二階堂黎人編『新・本格推理03』(光文社文庫 2003)
 アマチュアミステリ作家の作品としては高水準のものが多い選集.他の複数のアンソロジーにも収録されている小貫風樹「とむらい列車」と青木知己「Y駅発深夜バス」の二編が特に出来が良い.

△蒼井上鷹『これから自首します』(祥伝社ノン・ノベル 2009)
 相変わらず簡単には説明しがたいややこしい筋書きだが,今回は超自然的設定はなく,終わりにも救いがあってややソフト(なのか?).

△田中啓文『ハナシがちがう! 笑酔亭梅寿謎解噺』(集英社文庫 2006.親本 2004)
△同『ハナシにならん! 笑酔亭梅寿謎解噺2』(集英社文庫 2008.親本 2006)
 パンクス上がりの落語家見習い――梅寿ではなく,その内弟子の梅駆(ばいく)――が主人公の短編連作.3巻まで出てる内の2冊を読む.確か漫画化もされてた筈.キャラ先行/ご都合主義丸出し/ベタな人情噺多数の「青春上方落語ミステリ」で,ミステリとしてはちょっと軽薄すぎるけど,後味が良いので結構好き.
 『タイガー&ドラゴン』はこれのパクりじゃないの?と気になったので,シナリオ本をAmazonに注文したり,落語ミステリ繋がりで大倉祟裕を古本で買ったりして,ハナシが拡がる.愛川晶も図書館から2冊借りて積ん読.

 新刊では,続きもの漫画ばかり購入.増田こうすけ『ギャグマンガ日和 10』・諸星大二郎『西遊妖猿伝 西域篇 1』・今市子『百鬼夜行抄 18』・石川雅之『もやしもん 8』・一条ゆかり『プライド 11』――オーソドックスなラインナップだね.
 今月買った書籍は新旧合わせて23冊.ちょっと抑えなければ...

2009.07.29 GESO


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