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記事No : 263
タイトル 2010/07/30■182 滅多刺しは痛い
投稿日: 2013/10/05(Sat) 21:22:18
投稿者管理人

 今度は,知人の連れ合いが自殺したという報せ.もういい加減にして欲しいこの夏である.
 村崎百郎が殺された事件には,気の毒だけれど相応しい死に方ではあるという感想を抱かざるを得ず.

△WOSK9(7/24 六本木スーパーデラックス)
 初めて見たが,「実験的」なライヴシリーズらしい.内容はバンド演奏,DJ+ダンス,パフォーマンス等.
 気になったのは,core of bellsとHOSEの2バンド――傾向は全く違うがいずれも技巧的/人工的な音楽――が,共に演劇的というよりもコントじみたパフォーマンスを演奏に組み込んで,笑いを取っていたこと.このシリーズのコンセプト――は何だか知らないが――に沿ってのことかも知れないが,客を笑わせようという発想は,コミックバンドなら兎も角,シリアスなバンドとして如何なものかと思った俺は,すみません,どうせ旧いですよ.でも,自分だったら,笑われるのは構わないけど,笑わせようとするのは恥ずかしい.
 バンド以外の出演者の「実験」には,こちらが擦れ枯らしな所為か,何ら新味を感じなかった.この種のパフォーマンスは,40年(もっと?)以上変わり映えしない気がする――機材が安価になったり裾野がなんぼか広がったりして,敷居が低くなっただけで.
 倉地久美夫+外山明 久々のデュオ演奏には文句ない.やはり天然が一番.

○連城三紀彦『恋文』(新潮文庫 1984.親本 1981)
 短編5編を収録.非ミステリなのにミステリを感じさせる作風は泡坂妻夫に通じる.
 同時代の作品を滅多に褒めなかった倉橋由美子が,この作品集を――主に技巧的な観点から――賞賛していたことを憶えている.他に彼女が褒めた作品は,宮部みゆき『火車』,杉浦日向子『百物語』,澁澤龍彦『高丘親王航海記』等で,納得のいくラインナップではある.因みに,村上春樹『ノルウェイの森』は,順当に小馬鹿にされていた.
 連城の面白い所は,非ミステリ――主に恋愛小説――を書くと実に端正だが,ガチのミステリを書くとかなり無茶をするという,変なバランスの取り方にあると思う.

○宮部みゆき『心とろかすような』(創元推理文庫 2001.親本 1997)
 巧い作家は――たとえ登場人物のキャラが全然かけ離れていたとしても――読者に感情移入させる術に長けている.犬嫌いの俺が,犬の一人称で書かれたこの短編集を,馬鹿馬鹿しいとも思わず楽しく読めたくらいなので.

○天野頌子『警視庁幽霊係の災難』(祥伝社ノン・ノベル 2010)
 癖になって読み続けている.シリーズ6作目にして初めて次巻への伏線?が登場.

○石川雅之『もやしもん 9』(講談社イブニングKC 2010)
 長谷川遙は石油ストーブを見たこともインスタントラーメンを食べたこともないし,実家には屋内の階段がない(屋外にくっついてるらしい)――どんだけ金持ちのお嬢様なんだ.
 それにしても,テレビ実写版『もやしもん』は詰まらんつうか,くだらん...

×ジャン・ボードリヤール『なぜ、すべてがすでに消滅しなかったのか』(筑摩書房 2009.原著 2004)
 ほぼ遺稿と言っていい3編を収録.
 標題の論文――韜晦的な散文詩もどきを論文と呼んでいいとすればだが――は,デジタルがアナログを駆逐して人間と現実が消滅するという,ハイテクが苦手な親父の被害妄想みたいな繰り言.デジタルとアナログの対立なんてものは所詮偽の問題だってことを理解していないのか,理解していない振りをしているのか,あるいはデジタルに白旗を掲げた事大主義なのか――いずれにせよ馬鹿げている.
 二つ目の「カーニヴァルとカニバル」では,carnavalを西欧による世界の植民地化/cannibaleをそれへの逆襲になぞらえて世界史を解釈する.一ローカル言語の地口で歴史を説明するなんてことは,文学か冗談なら兎も角,論文では許されないと思うのだが,さすが中華思想の国の人.仏蘭西の現代思想業界(とそれを輸入販売する日本の思想業界)には,本気でそれが可能だと考える人たちが大勢いるようだ.フーコーの権力分析がまるで存在しなかったかのような素朴な権力解釈も当たり前のように開陳される.
 最後の「腹話術的な悪」は,スーパーフラットな現代世界への嘆き節だが,絶望の振りをしているだけで,本当は「終末」を愉しんでいると見る.
 ボードリヤールとは結局何だったのか? ヴェブレンのシミュラークルとして出発し,バタイユだのバルトだののキャッチーな部分をコピー&ペイストした非-オリジナルな思想家.黙示録の預言者の如く振る舞いながら実のところはニヒリスト.人間と現実の全消滅を看取りたかったのに自分が先に消滅してしまった残念な人...
 この本で一番面白かったのは,「付録」のエドガール・モランの短いボードリヤール論だ.モランの著作は読んだことないが,この文章は「思想的に相容れなくても敬意や友情は成立するし,飲み友達にもなれるし,ヨイショだけではない気の利いた解説文だって書ける」という,世間智としては「あるある」な実例であり,フーコーによる『アンチ・オイディプス』序文を想起させるもので,これだけ読めば充分という気がする.

△筒井康隆監修・造事務所編著『眠気をあやつる本』(PHP研究所 2003)
 「第1部 眠気を誘う」,「第2部 眠気を覚ます」に分けて,それぞれの効能を謳う絵画,小説,科学解説,童話,箴言,グッズカタログ等を集めたヴァラエティ本.実効性は眉唾ものだが,読み物としては楽しめる.
 第2部冒頭に収録された筒井の短編「問題外科」を数十年振りに再読し,いくら掲載誌が『問題小説』だったとはいえ,よくこんな悪趣味な鬼畜ギャグを載せられたなぁと感心.今だったら載せる雑誌はないかも知れない.その他,初めて読んだロシアの民話等もなかなか良し.

? 山田正紀がツイッターに書いていた(11:27 PM May 28th.その後6/1以来つぶやいていないけど,無事なんだろうか).
> 来月号から「ミステリマガジン」で再開される「ファイナルオペラ」・・全面的に仕切り直しということでお許しいただきたい。申し訳ありません、前回までは、膵臓がんに、大動脈乖離の悪化などで落ち着いて仕事ができませんでした。そのかわりに絶対に傑作にします。代表作にする自信があります。
 うーん,正紀様が「自信がある」と宣言したときは,大概外してるからなぁ... ファンの性で単行本が出たら絶対買うけども.

2010.07.30 GESO


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