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タイトル2012/07/01■193 ここ半年間の覚書
記事No274   [関連記事]
投稿日: 2013/10/05(Sat) 21:34:26
投稿者管理人

○ヤマザキマリ『テルマエ・ロマエ IV』(講談社 2011)
 ノイタミラ版アニメの安っぽさにはがっかりしたが原作は相変わらず面白い.
○『山田風太郎 ミステリー傑作選1〜10』(光文社文庫 2001〜2002)
 刊行中に作者が逝去したことも感慨深いアンソロジー.他の短編集で既読の作品も多いが改めて読むとやはり山風の前に山風なく山風の後に山風なし.世に天才と呼ばれる作家の殆どは実は鬼才異才秀才の範疇だが山風は掛け値なしに天才.第3巻の解説で森村誠一がいみじくも述べているとおり「風太郎作品世界は同業者にとって盗みたい宝の庫」であると「同時に読者を魅了し尽くし、いったん虜にされれば脱出不可能な小説中毒の檻となる」もの.
○貴志祐介『ダークゾーン』(祥伝社 2011)
 ふと気付くと自分は戦隊の「駒」として何処とも知れぬ戦場に居りあるルールに則って敵戦隊と戦わなければならない...という設定は直ちに永井豪『真夜中の戦士』を想起させる.それは作者は百も承知で本作の中で「設定が(中略)まんまそっくり」と言及しているし小説ではフレドリック・ブラウンの『闘技場』という短編がこの種の――異世界でゲーム的な戦闘を強要される――物語の原型であることも説明している.ほかにも奥浩哉『GANTZ』や山田正紀『人藝競馬 悪魔のギャンブル』や作者自身の旧作『クリムゾンの迷宮』(焼き直し?)等連想される作品は多い.つまり設定自体はまるで目新しくない訳だからかなり自信がなければ書けない小説に挑戦した訳だ.古い革袋に新しい酒を入れるのが巧いということ.
△同『悪の教典 上下』(文藝春秋 2011)
 頭脳明晰という割には杜撰な犯行が多いにも拘わらず殆どがバレないというのはご都合主義的だがアスペルガーという言葉を回避したと思われる点を除いて自主規制なしにタブーを描いている点は潔い.下巻の大量殺戮シーン描写を読んでいると往年の『バトル・ロワイヤル』など牧歌的に思えてくる.
△奥泉光『プラトン学園』(講談社 1997)
 『バナールな現象』の続編?PCソフト内世界と現実世界との混淆を文学的虚構で包み込んだ作者得意の「虚構まみれ」メタエンタメ小説だが帯の惹句「クリックから始まる震撼のサイコ・ミステリー」というのはちょっと違うのでは.古い譬えで言えば『スミヤキストQの冒険』+『虚人たち』といった趣で『鳥類学者のファンタジア』『モーダルな事象』といった後の傑作の習作のよう.新聞連載小説だった点が意外.
○皆川博子『薔薇忌』(実業之日本社 1990)
 短編7編を収録.全て芝居絡みのそれ自体が一幕の芝居のような作品の中でこの世ならぬ者たちが当たり前のように行き交う.
△北川歩実『金のゆりかご』(集英社文庫 2001.親本 1998)
△内田百閨w贋作吾輩は猫である』(旺文社文庫 1984.初版 新潮社 1950)
 全篇無駄話.
△村田基『愛の衝撃』(ハヤカワ文庫 1992)
 再購入.もう少し描写力があれば...
△やまだ紫『新編 性悪猫』(ちくま文庫 1990.親本 1980 青林堂)
○『日本探偵小説全集2 江戸川乱歩集』(創元推理文庫 1984)
 中井英夫の解説も○.「化人幻戯」に「ユリゴコロ」を想起.
△折原一『放火魔』(文春文庫 2010.親本『疑惑』改題)
 折原の短編集の中では良い.
○『日本探偵小説全集9 横溝正史集』(創元推理文庫 1986)
 正史再評価.栗本薫の解説も○.
△美内すずえ『ガラスの仮面 48』(白泉社 2012)
 展開は早くなったが手抜きも増えた.
△中山康樹『かんちがい音楽評論 JAZZ編』(彩流社 2012)
 著者自身の勘違いも多い.
△『KAWADE夢ムック ジョン・コルトレーン』(文藝春秋 2012)
 フリージャズへの興味からではなく批評への興味から読んだがハズレ.
○山田正紀『ファイナル・オペラ』(早川書房 2012)
 良くも悪くも正紀様にしか書けない能ミステリ.
○蛇蔵&海野凪子『日本人の知らない日本語 3』(メディアファクトリー 2012)
△ひろのみずえ『首七つ』(大日本図書 2006)
△蒼井上鷹『4ページミステリー』(双葉文庫 2010)
△乙一他『七つの黒い夢』(新潮文庫 2006円)
○木内昇『茗荷谷の猫』(文春文庫 2011.親本 2008)
△『アルテス VOL.01』(アルテスパブリッシング 2011)/△同VOL.2(同 2012)
 いずれも掲載記事は玉石混淆.
○島田裕巳『葬式は、要らない』(幻冬舎新書 2010)
 ほぼ同感.
○牧野武文『Googleの正体』(マイコミ新書 2010)
△村瀬拓男『電子書籍の真実』(同前)
 やや出版社寄りの見方なのはやむを得ないか.
○服部まゆみ『ハムレット狂詩曲』(光文社文庫 2000.親本 1997)
 後味爽やか.著者の早世が惜しまれる.
○連城三紀彦『黄昏のベルリン』(文春文庫 2007.親本1988 講談社)
 国際謀略小説も書けるのね.抽斗多い.
○天沢退二郎『光車よ、まわれ!』(ピュアフル文庫 2008.親本 筑摩書房 1973)
○松田洋子『ママゴト 2』(エンターブレイン 2012)
○清野とおる『東京都北区赤羽 8』(Bbmfマガジン 2012)
○『アレクシア女史、欧羅巴で騎士団と遭う』
 3作目.新作ほど面白いが順番に読むしかない.
△山田正紀『ふたり、幸村』(徳間書店 2012)
 時代小説にマジックリアリズムを導入する試みは面白いが本作では未だ物足りない.
○東陽片岡『コモエスタうすらばか』(青林工藝舎 2012)
 いつもと同じでいつも良い.
○赤江瀑『光堂』(徳間文庫 1996.親本 1991)
 掛け替えのない作家がまた一人逝ってしまった.
△横溝正史『髑髏検校』(角川文庫 2008.親本 1970)
 表題作は竜頭蛇尾だが併録「神変稲妻車]は○.都筑・山風に共通する江戸読本〜講談本の系譜.
○卯月妙子『人間仮免中』(イースト・プレス 2012)
 本人も凄まじいが周囲の人の「優しさ」の方が凄まじい.
○長岡弘樹『傍聞き』(双葉文庫 2011.親本 2008)
 お見事.
○横溝正史『悪霊島』(角川書店 1980)
 遺作.長編は乱歩より巧いのでは.
○田中克彦『差別語からはいる言語学入門』(ちくま学芸文庫 2012.親本 明石書店 2001)
 事なかれ主義と闘う言語学者はウヨクよりもトラディショナルでサヨクよりもラディカル.文学自体を差別的な存在と思わせるに至るラディカリズム.
○連城三紀彦『ため息の時間』(集英社文庫 1994.親本 1991)
 巧緻な小説を書く他の作家と較べて鼻につかない理由の一つは知識や情報をひけらかさないことか.
雑誌類略.

映画
○レフ・マイェフスキ『ブリューゲルの動く絵』(2011 波・瑞)
 ブリューゲルの『十字架を担うキリスト』(1564)を「実写化」した怪作.イエスがゴルゴタで処刑される――復活が描かれないのは本作が宗教映画ではないという表明か――1世紀前半のローマと異端者が虐殺される16世紀半ばのフランドルが重ね合わせて描かれる.ブリューゲルが風車番に合図して風車が止まると同時に時間も止まるという場面――あんたらはクロノスか?――が特撮ではなく出演者「ほぼ」全員――馬はずっと尻尾を振ってたし指先で演技してる役者もいた――が動きを止めて演じているところがアナログで良かった.シャーロット・ランプリング(聖母マリア)もルドガー・ハウアー(ブリューゲル)も年齢相応に老けてた...

△園子温『ヒミズ』(2011 日)
○平野遼『ホリデイ』(2011 日)
○武内英樹『テルマエ・ロマエ』(2012 日)
△入江悠『SR3 ロードサイドの逃亡者』(2012 日)
×フェデリコ・フェリーニ『8 1/2』(1963 伊)
 フェリーニってどこがいいんだろう.ニーノ・ロータの音楽が無ければ観るに耐えない.
○篠田正浩『夕陽に赤い俺の顔』(1961 日)
 再見.DVD化希望.
○岡本喜八『殺人狂時代』(1967 日)
 三見.天本英世カッケー!
○スティーブン・ダルドリー『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』(2011 米)
△マーティン・スコセッシ『ヒューゴの不思議な発明』(2011 米)
 映像は良いがシナリオは散漫.
△ティム・バートン『ダーク・シャドウ』(2012 米)
 異形を演じるデップはいつも楽しそう.

DVD
○ピエール・コフィン+クリス・ルノー『怪盗グルーの月泥棒』(2010 米)
○園子温『冷たい熱帯魚』(2010 日)
 グロの徹底ぶりが爽やか.
×常田高志『タケオ』(2011 米)
 ダウン症のドラマーを描くドキュメンタリーだが主役を持ち上げる演出が過剰.
△大曾根辰夫『七変化狸御殿』(1955 日)
 有島一郎の怪演が楽しい.
○マリア・ホルヴァット(『ハンガリアン・フォークテイルズ』(2002 洪)
 まんがハンガリー昔ばなし.
△ピンク・マルティーニ『DISCOVER THE WORLD』
 コンサート・ライヴ.嫌いではない頽廃音楽.
○ニールス・アルデン・オプレヴ『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』(2009 瑞)
△ダニエル・アルフレッドソン『ミレニアム2 火と戯れる女』(2009 瑞・丁・独)
△同『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』(2009 瑞・丁・独)
 2,3も工夫を凝らして飽きさせないもののやはり1作目がベスト.先に映画を観てしまったが原作を読まねば.

CD
○五月みどり『青春傑作集』(2011 日)
△ウォルフガング・ダウナー『FREE ACTION』(1967 独)
△ピンク・マルティーニ『Splendor in the Grass』(2009 米)[邦題『草原の輝き』].
○カン『The Lost Tapes』(2012 米)
 1968〜1975年の発掘音源3枚組.サンパチオープンリールテープのパッケージを復元した箱入り/縦25cm×横26cm×24ページカラーブックレット付きで2.637円.安すぎる!というか,邦盤って高すぎ.

ライヴ
△1.22六本木スーパーデラックス 倉地久美夫トリオ
△3.17新宿K'sシネマ 倉地久美夫ミニライヴ
3.18高円寺円盤
 △柳家小春・○倉地+柳家
4.29高円寺彦六「魂の密会」
 ×大谷氏・○竹田賢一
△5.4新宿裏窓 西村卓也ソロ
△5.5新宿裏窓 竹田賢一ソロ
△5.6新宿裏窓 鈴木健雄ソロ
○6.2国立アトリエダダ 蜂蜜劇場『不屈の民』
6.9吉祥寺FoxHole
 △triola・△倉地ソロ・△クミオラ(倉地+triola)
6.10池袋MusicOrg
 ○吉田悠樹+ジム・オルーク+山本達久・△倉地ソロ・×倉地+山本+吉田+オルーク.

2012.07.01 GESO

タイトル2011/12/31■192 逝く年狂う年
記事No273   [関連記事]
投稿日: 2013/10/05(Sat) 21:33:27
投稿者管理人
 嗚呼もう今年も終わる.
 前回アップしたのは7月だったか... その後何もまとめる気にならず,時々メモするのみだった.
 まぁそんな年だったということで,書き散らしたメモをそのまま並べて終えることにしよう.

○皆川博子『花闇』(中央公論社 1987)
 その凄まじい役者生涯に惹かれてか,澤村田之助を題材にした作品は結構あるようだ.小説では北森鴻『狂乱廿四孝』,松井今朝子「心残して」,漫画では村上もとか『JIN−仁』等.本作もその一つ.皆川作品としては幻想味が薄くやや地味だが,その分リアルで,松井の時代小説に近い味わい.役者の立ち居振舞いが眼前に浮かんでくる芝居の描写は流石である.山本昌代『江戸役者異聞』や南條範夫『三世沢村田之助―小よし聞書』もそのうち読みたい.

△本田達男『まむしの兄弟 お礼参り』(1971 日)
 1作目と間違えて2作目のDVDを観てしまった.涙あり笑いありの青春学園ドラマのヤクザ版みたい.違うのは主役がチンピラ(劣等生に相当)の菅原文太と川地民夫であること.古き良きヤクザ(優等生に相当)といった感じの安藤昇は本物の迫力.古いヤクザが経済ヤクザに移行してきた時代背景が見えるような見えないような.

Slapp Happyの『絶望一直線』を久し振りに聞き返したら,"Bad Alchemy"がまるで"Kew.Rhone"の中の1曲みたいに聞こえた.

○吉田秋生『海街diary 4 帰れない ふたり』(小学館フラワーズコミックス 2011)
○清野とおる『東京都北区赤羽 7』((Bbmfマガジン 2011)
 海街は実にゆっくりしたペースで,赤羽は凄いハイペースで出ている.いずれも永遠に続いて欲しいシリーズ.

△藤沢周平他『時代小説最前線 T』(新潮社 1994)
 すれっからしにはあんまり普通に巧い小説ばかりで退屈だ.

△ステファニー・ピントフ『邪悪』(ハヤカワ・ミステリ文庫 2011.原著 2009)
 刑事と犯罪学者のコンビが,猟奇殺人に挑む...という設定はありがちだが,設定を1905年のニューヨーク郊外にした点が本作のミソ.日本は明治38年,バルチック艦隊を撃滅〜ポーツマス条約締結の年であり,本作の事件が起こった――虚構だから起こっちゃいないんですけどね――時期は,伊藤博文が特派大使として大韓帝国へ派遣された頃である.謎解きとしては大したことはないが,ノスタルジックな味わいは良い.

○酒見賢一『陋巷にあり』全13巻(新潮文庫 1992〜2002,親本 1988〜2000)
 漸く全巻を(中古で)揃えたので,最初から読み始める.1巻目は意外に坦々としてたが,2巻目から徐々に娯楽性が高くなってくる.ときに山風忍法帖ものを思わせる戦闘場面は読者サービスでもあるが,作者も楽しんで書いてる感じ.作者自ら公言するとおり,『孔子暗黒伝』の影響は大きいので――主人公は孔子よりもむしろ顔回だが――諸星の絵を頭に描きながら読むと面白さが更に増す.まだ5巻目.
 ...と書いてから2か月.読み終えるのが惜しかったが読了.ダレ場もあったけど,全体として凄い小説を読んだ!という満足感に浸っている.けれど,本作は孔子が顔回らと共に魯を出て放浪の旅に向かう場面で終わっているので,やはり続編が読みたくなる.諸星『西遊妖猿伝』の新章が11年の歳月を経て再開したように,いつか再開して欲しい――そう言えば『陋巷にあり』も完結してから今年で11年目だからそろそろ... でも,著者は今『泣き虫弱虫諸葛孔明』で手一杯なのだろうな.

△ジェームズ・ガン『スーパー!』(2010 米)
 中高年向けの『キックアス』といったところ.欲求不満のまま頭を吹き飛ばされてしまうボルティー・ガール(エレン・ペイジ)が不憫...

△米澤穂信『儚い羊たちの祝宴』(新潮社 2008)
 連作短編ミステリ.いずれも名家の娘やそこに仕えるメイドが出て来る浮世離れした設定である.この作家は初めて読んだが,かなりダーク.

○カミラ・レックバリ『悪童』(集英社文庫 2011.原著 2005)
 エリカ&パトリック事件簿の3作目.今回は陰惨な幼女殺人.小説としては古いスタイルだが,面白いからOK.池上冬樹が言うとおり,ミステリとしては冗長で,群像劇として楽しむべき作品だと思う.暗澹たる人生を送る人物や無茶苦茶性格が悪い人物にも感情移入させてしまう筆力は凄い.

○桐野夏生『対論集 発火点』(文藝春秋 2009)
 対論というより対談.相手は松浦理英子・皆川博子・林真理子・斎藤環・重松清・小池真理子・柳美里・星野智幸・佐藤優・坂東眞砂子・原武史・西川美和.面白さは対談相手次第だが,松浦・皆川・柳・佐藤・板東・西村との対話は,創作論が窺えて興味深い.林との対談は,本当は嫌い合っているのを隠しつつ表面上は和やか,という感じがスリリング.小池とはエロ話に終始.

○堀江敏幸『いつか王子駅で』(新潮文庫 2006.親本 2001)
 東京都北区王子に暮らす「私」の日常を坦々と描いた私小説ふうでもあり随筆ふうでもある長編.ゆったりしたテンポに乗れさえすれば楽しめる――というか,作者と共に物思うことができる.

△辺見庸『もの食う人びと』(角川文庫 1997.親本 共同通信社 1994)

○ジュリオ・マンフレドニア『人生、ここにあり!』(2008 伊)

△ゲイル・キャリガー『アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う』(早川書房 2011.原著 2009)
△同『アレクシア女史、飛行船で人狼城を訪う』(早川書房 2011.原著 2010)
 人類と異界族(人狼や吸血鬼)が共存するパラレル・ヴィクトリア朝英国を舞台にしたスティーム・パンク? ラノベ乗りで楽しめる.

○木内一裕『藁の楯』(講談社文庫 2007.親本 2004)
 『BE-BOP-HIGHSCHOOL』には興味なかったけど,Vシネ初監督作品『カルロス』を観て,きうちかずひろという漫画家は侮れないと思ったのは随分昔のこと.本名の表記に変えて小説家に転じた第1作が本作.孫娘を惨殺された資産家が,犯人の首に巨額の賞金を賭ける.いつ誰が襲ってくるか分からない中,福岡から東京までの移送を命じられた5人の警察官たち...ベタな設定で非常に読みやすく映画的――すぎむらしんいちに言わせるとジョン・フランハイマーふう.最近はベタなものでも全く受け容れられるようになったので,楽しめた.漫画家出身の小説家としての実力は山上龍彦よりも上みたいだから,山たつみたいに漫画に戻って来ることはないだろう.本当は映画監督をやりたいのだろうけど.

○同『水の中の犬』(講談社文庫 2010.親本 2007)
 確実に腕を上げた2作目は中編3話から成る連作.「情報屋がいて、ヤクザがいて、警官と麻薬常習者がいる。誰もがどこかで見たことのある物語にもかかわらず、ここでしか読めない、ま新しい感触が持続する」(吉田大介の解説).確かに.ハードボイルドの美学が思い切った結末を用意し,次作への期待を高める.

○同『アウト&アウト』(講談社文庫 2011.親本 2009)
 3作目は2作目の続編のように見えて全く独立した作品.前作同様オーソドックスなハードボイルド仕様で始まるが,プロットがどんどん捩れていって展開の予測は小気味よく裏切られる.あんまり面白かったので,最新作『キッド』をAmazonに注文.

○同『キッド』(講談社 2010)
 注文したら翌日届いた「本当は怖いAmazon」.木内の最新作は,今までで最もエンタメ度が高い,バイオレントな原宏一という感じの痛快作.今回は刑事(くずれ)やヤクザくずれではなくBE-BOP系の20歳のアンチャンが主人公の巻き込まれ型サスペンスで,確かに読み出したら止まらず電車内〜飲み屋で一気に読了.このレヴェルの作品を年に1冊出してくれたら文句はない.→最新作『デッドボール』が出た.来年買おう.

○赤江瀑『蝶の骨』(徳間文庫 1981.親本 1978)
 甘美な破滅への道をひた走る女性が主人公の官能小説.解説の体裁を放棄した皆川博子の賛辞が熱い.熱すぎる.

○辻村深月『冷たい校舎の時は止まる』(講談社ノベルス 2004)
 最新作『水底フェスタ』を読みたいと思ったが,このデビュー作を長年積ん読してたのを思い出して,先にした.密室化した校舎に閉じ込められた高校生8人...『密閉教室』や『雪密室』が想起される.西澤保彦ほど複雑ではないがどうも設定は超常的なようである.青春ミステリを甘酸っぱく感じるには年を取りすぎたな...などと思いつつ読んで上巻の終わりにきたら「中巻に続く」の文字が! あれ,上下巻完結じゃなかったっけ? と慌ててAmazonに中巻を注文したら二日後に届く.早えー!

○マーク・トウェイン『不思議な少年』(岩波文庫 1969.原著 1916)
○『マーク・トウエン短編集』(新潮文庫 1961.原作 1860〜1899頃)
 ハックルベリ・フィンやトム・ソーヤーの明るさとは対象的な,ペシミズムに満ちた辛辣な作品群.晩年の筆者は相当な人間嫌いだったという.トウェインの不思議な少年に較べて山下和美版「不思議な少年」の何と優しいことか.

○皆川博子『光の廃墟』(文春文庫 1998.親本 1978)
 最初期,3作目の長編.マサダの遺跡発掘キャンプを舞台にしたミステリ.デビュー間もない頃からこの完成度の高さだったのかと感服.

○同『開かせていただき光栄です』(早川書房 2011)
 著者81歳の最新作.創作意欲が全然衰えてなくて素晴らしい.18世紀英国を舞台にした「解剖学」ミステリで,ダークコメディの要素もある傑作じゃないですか! 英国で映画化してくれないかな.解剖教室の弟子たち5人が歌う「解剖ソング」を聞いてみたい.

○島田荘司『帝都衛星軌道』(講談社 2006)
 島田作品で一番好きなのは『斜め屋敷の犯罪』と『奇想、天を動かす』だが,今回の表題作は後者に及ばぬまでもそれを想起させる「本格推理」と「社会派推理」(懐かしい)の融合作.身代金受渡し場所を山手線内に指定するという意表を突いた誘拐事件から始まる,Who/Why/Howダニットのバランスがいい感じ.長編としては短めのそれを前後編に分け,間に「ジャングルの虫たち」という独立した中編が挟まる構成.「ジャングル」はホームレスを語り手にしたかなり重苦しい非ミステリ作品.

○連城三紀彦『一夜の櫛』(新潮文庫 1988)
○同『夜のない窓』(文春文庫 1993.親本 1990)

○イ・ジョンボム『アジョシ』(韓国 2010)
 アジョシは「おじさん」って意味なのか.殺し屋と少女の交流は『レオン』を想起させるが,こっちの方がより血腥い.ウォンビンは確かに格好いい.アクションの切れの良さでは,日本映画は韓国映画に敵わんな.

○エミール・クストリッツァ『アンダーグラウンド』(1995 仏・独・洪牙利)
 デジタルリマスター版を初鑑賞.1941年〜現代に至る旧ユーゴスラヴィアの歴史を虚実交えて描いた大群像劇.確かに映画史に残る傑作であろう,これは.

△富田克也『サウダーヂ』(2010 日)
 成る程サウダーヂとは山王団地の聞き違いであったか... ハッピーエンドも嘘臭い希望も描かないリアルさという点で,正に今観るべき映画.だが,全ての伏線が綺麗に回収されなくてもいいにせよ,もう少し回収すれば良かったのに,という物語的不満は残る(日輪水のこととか).意図的にカタルシスを排したのだと解釈すればそれで良いとしても,最後のカタストロフィも中途半端な感じで,モヤモヤが残る.因みに,胡散臭い衆議院議員役で出演している宮台真司は,太って田中康夫に似てきた.

○戌井昭人編『深沢七郎コレクション 流』『同 転』(ちくま文庫 2010)
 収録作品の選択には文句ないが,発表年と年譜くらいの資料は付けて欲しかった.

○望月諒子『ハイパープラジア』(徳間書店 2008)
 『パラサイト・イヴ』や『仁』を想起させる医療SF.長編としては短めで,内容も地味だが,先行作に劣らぬ隠れた傑作だと思う.

○同『大絵画展』(光文社 2011)
 コンゲームもの.プロデビューしてるのに「日本ミステリー文学大賞新人賞」に応募して優勝をもぎ取っちゃうところは凄い(ちょっと狡い気もするけど).

△清水義範『幸福の軛』(幻冬舎 2003)
 人間描写に今ひとつ深みがないのね.

○連城三紀彦『一夜の櫛』(新潮文庫 1988)

△蒼井上鷹『バツリスト』(祥伝社 1910)

○三隅研次『とむらい師たち』(1968 大映)
 久し振りに映画館で観直した野坂昭如原作・勝新版『おくりびと』(笑).映画的には破綻してる気もするけど,それでもこっちの方がずっと良い.ラストシーンの廃墟(水爆戦?後の世界)に,3/11を想起せざるを得なかった.

○水生大海『少女たちの羅針盤』(原書房 2009)
 映画化されてるとか?

○服部正『影よ踊れ』(東京創元社 1994)
 魔界のホームズ.結構罰当たりなパスティーシュ.

○近藤史恵『サクリファイス』(新潮文庫 2010.親本 2007)
 出た当時かなり話題になったと記憶しているが,成る程,こりゃ巧い.自転車ロードレースに全然興味なくても一気に読める.

○中島らも+小堀純『せんべろ探偵が行く』(集英社文庫 2011.親本 2003)
 安居酒屋の楽しいガイドブックだが,らも氏が亡くなり,採り上げられた店の多くも無くなっていることを思うと,読後感はちょっと寂しい.

○日下三蔵編『乱歩の幻影』(ちくま文庫 1999)
 乱歩へのオマージュを集めたアンソロジー.数少ない服部正作品が載ってるので買ったが,他の作品も良い.特に山風「伊賀の散歩者」の読者大サービスぶりと,島田荘司「乱歩の幻影」の嘘のもっともらしさに感心.

△真梨幸子『殺人鬼フジコの衝動』(徳間文庫 2011.親本 2008)
 まほかるかと思った読んだら折原一だった,みたいな――文章が下手なのかワザと下手に書いているのか判然としない点を含めて.

○ゲイル・キャリガー『アレクシア女史、欧羅巴で騎士団と遭う』(早川書房 2011.原著 2010)
 3作目が一番気に入った.

○矢口敦子『人形になる』(徳間文庫 2008.親本 1998)
 最近流行りの「イヤミス」の先駆的作品であろうか...

○沖田×華『ガキのためいき 1』(講談社 2011)
 アスペルガー症候群の作者による自伝漫画.面白がっていいんだろうか? いいと思う.

○『文藝別冊 総特集 諸星大二郎』(河出書房新社 2011)
 ファンなら黙って買うしかない.

 ...来年は平穏あれかし.

2011.12.31 GESO

タイトル2011/07/31■191 部分復帰
記事No272   [関連記事]
投稿日: 2013/10/05(Sat) 21:32:22
投稿者管理人
 今朝も未明にやや大きな地震があったが,もはや「また必ず巨大地震が起きる」という前提で先のことを考えざるを得ないと思う.
 それでも原発を止めるべきではないという主張は「その方が儲かる」立場か,あるいは破滅願望からしか出て来ないのではないか...

 暫く何も書く気が起きなかったが,少し恢復したので,ここ数箇月間の覚書.

 3/11に自室の本棚が崩落した.主因が荷重超過にあったことは確実である.寝場所はその脇なので,震災発生が深夜だったら圧死していた可能性が高い.
 流石に懲りて,思い切って部屋のモノを大量処分することにした.
 ざっと書籍1100冊,LP250枚,シングル盤140枚,カセットテープ670本を処分.
 まだ半分以上――シングルなどあと1200枚も――残っているのだが,今はこれ以上減らすのは気分的に無理.CDも未だ棄てられない――数十枚は処分するつもりで纏めてあるが...
 本とLPは業者に買い取ってもらえたが,シングルとカセットは値が付きそうもないので,ゴミとして捨てるほかなかった.
 思い切ったつもりだったが,懐かしいカセットが詰まった透明袋がゴミ置場で雨晒しになっているのを見ると,胸が痛んだ.
 インデックスカード――律儀に英文タイプで打ったものが多い――だけは棄てきれずに取っておいたところが,我ながら未練がましい.
 ついでに,空になったカセットボックス群,アコギ,ギターエフェクター,ハードディスクレコーダー,古いノートパソコン等々場所を取るものを,何回かに分けて粗大ゴミとして処分したり,業者に引き取ってもらった.処理手数料がえらくかかった.
 工務店に壁の補強と本棚の作り付けを発注〜工事が完了し,何とかモノを置けるようになったのが6月下旬.
 ああスッキリした,もうモノは増やすまい――と思っているのだが...

○沼田まほかる『ユリゴコロ』(双葉社 2011)
 小説も映画も陳腐な「家族もの」が大多数で辟易するが,まほかるの最新作はミステリの骨子を保ちつつ生半可な家族小説の枠を超えて善悪の彼岸に至る家族愛を描いた力業.彼女の作品の中ではかなり「優しい」方だけれど初めての読者には過酷に違いなく好き嫌いがはっきり分かれるだろう.俺は断固支持.

○森田実『原子力発電の夜明け』(1966 日)
 東海村原発の建設工程を丹念に描いたドキュメンタリー映画.文部省推薦の国策映画だが,当時の大勢は「原子力の平和利用」を夢見て受け容れていたことが分かる貴重な記録.

○土本典昭『原発切抜帖』(1982 日)
 監督が実際に新聞や雑誌からスクラップしていた原子力問題関連「記事」の映像に,小沢昭一のナレーションと水牛楽団の演奏が被さるシンプルな実験的ドキュメンタリー映画.スリーマイル島事故後に作られたものだが,広島への原爆投下に始まり,ビキニ環礁での核実験,第五福竜丸事件,敦賀原発やむつ号の放射能漏れといった本作で採り上げられた数々のトピックを振り返ると,国や電力会社の対応が今回の福島原発事故後のそれと殆ど変わりないことや,いつの間にか話題に上らなくなり有耶無耶にされてきたことが分かり,結局誰も過去から学んでこなかったのだと思い暗澹とする.聞き覚えのある楽曲(例「君といつまでも」)のパロディめいた旋律が飛び出す水牛楽団の演奏は可笑しい――タモリの3枚目のアルバムを思い出した.

○連城三紀彦『少女』(光文社文庫 1988.親本 1984)
○同『明日という過去に』(幻冬舎文庫 1997.親本 1993)
○同『牡牛の柔らかな肉』(文春文庫 1996.親本 1993)
 尼僧が主役のピカレスク小説『牡牛』なんか殆ど漫画的な乗りのエンタメだけど,落とし所は結構深い.連城はやっぱり面白い.

△鮎川哲也編『怪奇探偵小説集』(双葉社 1976)
 戦前の作家の珍しい短編を集めたアンソロジー.村山傀多・江戸川乱歩・小酒井不木・大下陀児・横溝正史・大阪圭吉以外――城昌幸・倉田啓明・松浦美寿一・妹尾アキ夫・岡戸武平・橋本五郎・米田三星・平林初之輔・冬木荒之介・南沢十七・西尾正・氷川瓏・西田政治――は知らない作家ばかり.怪奇というより猟奇趣味的な作品が多いのが特徴だが,流石に古臭さは拭えない.徳南晴一郎「猫の喪服」を想起させる氷川瓏「乳母車」が,短いけれど印象的.本文イラストが花輪和一だったことに入手後気付いて,得した気分.

○辻真先『本格・結婚殺人事件』(朝日ソノラマ 1997)
 ポテトとスーパーが結婚する契機となる事件と言ったら,ファンなら読むでしょう.

△千葉泰樹『女給』(1955 日)
 平凡なBG(今ならOL)が,結婚資金を稼ぐために始めたアルバイト 銀座の女給(今ならホステス)業に嵌って成り上がっていくという,男性中心社会が続く限り「永遠に繰り返される」――近年のヒット作だと『女帝』みたいな――物語.主役の杉葉子は全然古びて見えない.

△千葉泰樹『悪の愉しみ』(1954 日)
 石川達三原作.ピカレスクロマンというには主人公のワル振りは世故すぎ/短慮すぎて,「実存主義的」という評価は全く当を得ていない.

○阿刀田高編『ブラック・ユーモア傑作選』(光文社カッパ・ノベルス 1981)
 初版当時買って読んだ記憶があるがいつの間にか紛失し古本で買い直したものを積ん読にしてたのが本の整理中に出て来たので懐かしくなって再読.編者が「ブラック・ユーモアの解釈をできるだけ広いものとして扱ってみた」と言うだけあって「桜の森の満開の下」「骨餓身峠死人葛」「夢十夜のうち"第十夜"」といった周知の名作もあれば飯沢匡「座頭H」や和田誠「おさる日記」といった珍品――どちらも傑作――もある全16編収録の充実したアンソロジーである.筒井康隆作品で選ばれたのが「五郎八航空」なのにはちょっと納得いかないけれど横光利一「ナポレオンと田虫」を読んで筒井が横光の影響を受けていることを再認識したり別のアンソロジーにも収録されていた日影丈吉「吉備津の釜」を再発見したりして楽しめた.これら全部を「ブラック・ユーモア」に括っても構わないのだろうが「奇妙な味の小説」と言っても差し支えないと思う.

△e-NOVELS編『黄昏ホテル』(小学館 2004)
 架空のリゾート・ホテルを舞台に20人の作家が競作したアンソロジー.古びたホテルには怪談が似合うと見えて,20作中5編は幽霊譚ないしそのヴァリエイションである.あとはミステリ,幻想小説,ハードボイルド等.気に入ったのは篠田真由美,加納朋子,牧野修の作品.

○東野圭吾『天空の蜂』(講談社文庫 1998.親本 1995)
 東野は好みじゃないんで長いこと積ん読していたが,ふと読んでみたところ意外な内容――犯人たちが自衛隊に納入予定の巨大ヘリを奪って無線操作し,敦賀原発の上空でホバリングさせて,全ての原発を停止しなければ落とす,と国を脅迫するパニック小説.猶予は数時間,おまけにヘリには誤って潜り込んだ子供が乗ってる... 発表当時読んでたら絵空事に感じたかも知れないが,今読むとかなり現実味を感じる.クライマックス部分があっさりしすぎているという不満はあるが,取材はしっかりしており,原発問題の殆どはここでも既に示されていたのだった.

○冨永昌敬『アトムの足音が聞こえる』(2010 日)
 アニメ『鉄腕アトム』の効果音を創った「音響デザイナー」大野松雄の足跡を辿るドキュメンタリー映画.大野の「手を抜いても手を抜いたように見せないのがプロ」(だったかな? まぁそんな趣旨)という姿勢と,小杉武久から借りたという発信器の使い方が面白かった.

△日本文藝家協会編『現代の小説1996』(徳間書店 1996)
 今も続いている短編小説の年鑑.伊集院静,山口洋子,有吉玉青,長部日出雄といったベテラン作家の達者な小説を読むと,普通の小説も悪くないなとは思うが,当方にとっての普通の小説というのはミステリとかSFとか幻想小説なので,泡坂妻夫や眉村卓や山田正紀を読んだ方がやはりしっくりするのだった.でも,野坂昭如――阪神大震災の後日談を描いた「神戸鎮魂――五十年目の娼婦」――など,流石に凄いと感心.

○都筑道夫『宇宙大密室』(創元SF文庫 2011)
 著者唯一のSF短編集――あとはショートショート集と長編――ということになってるけど,収録作品数では「創作エロ民話」が最多なので,ちょっと首を傾げてしまうが,気にするまい.同タイトルのオリジナル版は1974年にハヤカワ文庫JAから→短編3作品を追加のうえ再編集,『フォークロスコープ日本』と改題したものが1982年に徳間文庫から→更に中編1作品とインタビューを追加のうえ再々編集,過去の文庫版解説も再録し,タイトルを元に戻したのが今回の創元版.よって,この「完全版」を買えば過去の2冊を買う必要がなく,都筑入門用にはお得な1冊.

○蔵原惟繕『狂熱の季節』(1960 日)
 川地民夫のトークがあるというので,阿佐谷ラピュタで再観.河野典生の小説「狂熱のデュエット」を元にした日活ヌーヴェルヴァーグ作品.物語的には破綻してる気がするけど,映像は今見てもモダン.邦画で初めて手持ちカメラのみでゲリラ的に撮影した作品だったとか,当初は郷^治が主役の予定だったとか,川地さんは夏の間だけ逗子駅前で氷屋をやっているとか,面白い話がいろいろ聞けた.

○霧舎巧『名探偵はもういない』(原書房 2002)
 デビュー作『ドッペルゲンガー宮《あかずの扉》研究会 流氷館へ』(講談社ノベルス 1999)が今ひとつだったのでその後読んでいなかったが,本作は本格と新本格が適度にブレンドされており楽しめた.「読者への挑戦」なんて見るのは久し振りだ...

○池永永一『テンペスト 上下』(角川書店 2008)
 琉球王国末期を舞台にした大歴史ロマン.昔の大河小説に較べればテンポが速い.いかにもお約束の展開ながら,抗い難い面白さ.NHKでドラマ化したそうだが――家は見られる環境にない――菊地秀行ふうエログロシーンをどう誤魔化して描いたか,全10回にどう収めたのかには,興味ある.

○結城信孝編『ミステリア』(祥伝社文庫 2003)
 女性作家限定のミステリー・アンソロジーシリーズ.篠田節子・新津きよみ・加納朋子・近藤史恵・皆川博子は読んだことがあるけど,牧村泉・明野照葉・桐生典子・山岡都・菅浩江は初めて.ミステリといえるのは新津・加納・近藤の作品ぐらいで,あとはむしろホラーだが,どれも面白い.

○ダーレン・アロノフスキー『ブラック・スワン』(2010 米)
 スポ根的なバレエ映画を期待して観に行った人は,血腥さい描写と(エロティックというよりも)セクシュアルな描写にショックを受けるであろうサイコホラー.ナタリー・ポートマンの入神の演技とヘップバーン激似振りに圧倒されるだけでも観る価値あり.

○中島哲也『パコと魔法の絵本』(2008 日)
 泣くも笑うも一緒です((c)夕子と弥生).巧い監督である.

○武富健治『鈴木先生 11』(双葉社 2011)
 遂に完結.漫画史に残る作品の一つでしょう.

○諸星大二郎『西遊妖猿伝 西域篇 3』(講談社 2011)
○東陽片岡『シアワセのレモンサワー』(愛育社 2011)
○清野とおる『東京都北区赤羽 6』((Bbmfマガジン 2011)
○美内すずえ『ガラスの仮面 47』(白泉社花とゆめCOMICS 2011)
○日本橋ヨヲコ『少女ファイト 8』(講談社 2011)
 新刊が出たら必ず買うシリーズ漫画.あ,東陽さんのは初のエッセイ集.ガラかめは,ここのところ展開が早くなってきたとはいえ,今どきの連載漫画だったら数巻で済ませるところに40巻以上も費やしている所が凄い.

○堀江邦夫『原発労働記』(講談社文庫 2011)
 『原発ジプシー』(現代書館 1979→講談社文庫 1984)の復刊.「現場」を体験するために1978年9月から1979年4月にかけて美浜〜福島第一〜敦賀の3箇所の原発で日雇労働者として働いた記録.読んでいるだけで息苦しくなる過酷で危険な労働現場.汚れ仕事を日雇いに押し付けた電力会社の杜撰な管理.切られることを恐れて事故隠しに奔走する下請会社.手配師の阿漕なピンハネ等々.こうした構造は原発の始まりから恐らく何も変わっていなくて,これからも変わりそうにないと思うと,またしても暗澹とする.全くの偶然だが,作者が福島第一原発で働いていた1979年3月11日にも大きな地震が起こっている(事故には至らず).

○デュアル文庫編集部編『NOVEL 21 少年の時間』(徳間書店 2001)
○同『NOVEL 21 少女の空間』(徳間書店 2001)
 上遠野浩平・菅浩江・平山夢明・杉本蓮・西澤保彦・山田正紀(以上『少年』)・小林泰三・青木和・篠田真由美・大塚英志・二階堂黎人・梶尾真治(以上『少女』)による書き下ろし短編集.巻末に山田正紀と西澤保彦の対談を前後編で併録.脱-ジャンル小説といった意味合いで「ハイブリッド・エンタテインメント・アンソロジー」と銘打ってるけど,別にSFで括ったって問題ないと思う.どちらかというと「少年」編の方が面白かった.

2011.07.31 GESO