記事No | : 268 |
タイトル | : 2010/12/31■187 さらば牛心主将 |
投稿日 | : 2013/10/05(Sat) 21:26:41 |
投稿者 | : 管理人 |
[IMAGINATION MORTE IMAGINEZ]
ベケットが「想像力は死んだ.想像せよ」と書いたのは,1965年頃らしい.その頃既に想像力は死んでいた訳である.
後に1977年に吉岡実が,1994年に辻井喬がこの言葉を引用しているところを見ると,若干生き延びていた想像力もあったが,20世紀末までには多分死に絶えたのだろう.
[最近よく来るメール]
似たようなのが矢鱈に届くのだが,数打ちゃ当たるってことか.
本気にして反応するノータリンな人もいるんだろうか?
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Subject:父の遺言により●●家の遺産の不要分【1億円】を皆様にお配りするつもりでご連絡させて頂きました。
突然のお願いに戸惑われるかと思いますが最後までお読み下さい。「お金は必要としている機関、法人ではなく、必要としている人に配りなさい」というのが父の遺言でした。遺産の分配は●●家代々続いている《極秘慈善活動》の一つでもあります。
今年は他界した父に代わり、●●家の跡取りである私、●●●●が一人で責任を持ってこの慈善活動を成功させるつもりです。
現在、既に数名の方にお声をかけさせていただいた所、6名様へ今回の1億円のうち半分の50,000,000円分お配り完了しております。●●家の遺産で現在残っている現金50,000,000円、この中より全額もしくは貴方様のご希望額分お受け取りいただくことが可能です。
こちらは決して汚いお金ではありませんしご負担になる事は一切御座いませんのでご安心下さい。ご送金につきましては従来の送金方法とは違い《迅速》かつ《安全》にお受け取りできます。
また、受け取った後の税金等は秘密厳守して頂ければ問題ありません。
なぜなら合法的な方法で免除する術がありますので、貴方様が希望する額、全てをご自由に有効活用して頂けると思います。
詳しい詳細をお話させていただきますのでご興味・関心をいただきましたら私のほうまで【詳細希望】とご連絡いただければ必ずご納得いただけるご説明をさせていただきます。
そちらに目を通していただいてからこちらの遺産分配の話を受けるかどうか決めて下さい。詳細を拝見して信用性がなければそのまま無視していただいても構いません。
突然のお願いに戸惑われるかと思いますが、貴方様を信用し全てをお話しております。信用ある受取人として、遺産分配に興味をいただけた場合は、必ず【詳細希望】と御本人様から返信下さい。
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Subject:お礼をお渡しする準備は出来ています。お話を聞いて頂けないでしょうか?
先日のメールは見て頂けたでしょうか?妻を失った悲しみを忘れる事は出来ませんが、一生懸命働いている社員の為にも仕事を投げ出すわけには行きません。以前お送りしたメールでも申し上げた通り毎月200万円の謝礼金をお支払い致しますので、なんとか仕事を続けて行けるようにメール友達という形で僕に力を貸して頂けないでしょうか?
お話した謝礼金200万と前金の100万は、すでにお支払いする準備ができています。1人で生活している僕には特にお金の使い道は無いですし、お礼をお渡しする事で喜んで頂けたら僕も嬉しいです。無理なお願いをしていることは承知していますが人助けだと思ってメール友達の件、引き受けて頂けないでしょうか?お時間がありましたらご連絡お願い致します。
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Subject:【緊急連絡】口座に入金できません
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[最近よく読む作家]
○カミラ・レックバリ『説教師』(集英社文庫 2010.原著 2004)
レックバリの「エリカ&パトリック事件簿」シリーズ二作目.
本シリーズの舞台は,著者自身の故郷であり,恐らく愛憎半ばするであろう,フィエルバッカという実在の町である.
そこは,昔は漁港として栄えていたが,凋落し過疎化して,今は風光明媚な観光地/リゾートとして辛うじて生き延びている田舎町.若者は都会に出て行き,残された住民の多くは老人で,旧い因習が残っている... こんな町はどこにでも――勿論日本にも――ある訳で,それが世界中の読者に親近感を抱かせる要因の一つになっていることは確かだろう.
そんな死んだように平穏な町を震撼させるのは,猟奇的な連続殺人事件であり,事件の背景には,旧弊な共同体ならではの複雑な人間関係や,旧家に纏わる出生の秘密がある... また,今回はカトリック系の新興宗教団体が事件の鍵を握っている.
スウェーデン産の小説ということにこだわると気付きにくいが,作品の結構は横溝正史とさして変わりないから――もっともレックバリの方はあまりトリック=ハウダニットには関心がなく,ホワイとフーに注力しているようであるが――ミステリとしての親近感はそこに由来するのかも知れない.ただ,21世紀のミステリとしてどうよ,という気がしなくもない.
兎も角,舞台がストックホルムのような現代都市だったら,血縁関係が重要な意味を持つ事件を説得力をもって描くのは困難だろう.
この二作目も確かに良くできているけれど,主人公がエリカから相方のパトリックに替わっただけで,一作目と同工異曲の感が強い――『宮殿』に対する『ポセイドンのめざめ』みたいなものだ.シリーズ作品には心地よいマンネリズムも必要だが,三作目も同じ路線だったら,ちょっと飽きそう...
○飛浩隆『象られた力』(ハヤカワ文庫JA 2004)
SF中編4作を収録.これで公刊された飛の作品集は全部読んだことになる(ファンクラブ?が出したという限定本を除く).
センス・オヴ・ワンダーがちゃんとあって嬉しい.
△香山リカ『ポケットは80年代がいっぱい』(バジリコ 2008)
精神科医としての著者の言説には興味ないが――勝間和代との関係は対立ではなく相互補完だと思うし――本書に限っては史料的価値があるかも知れない.
アングラとサブカル両域を往復して過ごした医大生時代を振り返った「青春クロニクル」だが,率直な書きぶりには好感が持てた.
最も納得できたのは,あとがきに示された時代認識だ.もとより「70年代」「80年代」などと区切りのいいディケイドで括ることが便宜に過ぎないのは,当然である.俺の認識では,敢えて括るなら1970年代半ばから1980年代半ば頃までが一括りできる時代ということになるのだが,香山の認識もこれに近く,時代の変わり目を1985年の「プラザ合意」に見ている.その後の「バブル景気」がマイナーな世界にまで影響を及ぼしていたことは――当時はそんな認識は全く持てなかったのだけれど――今となっては納得できる.
あと,『HEAVEN』周辺の人たちについて「彼らの世界では「グズグズすること」が一種のお作法になっている」という描写にも同感.これは吉祥寺マイナー周辺の連中についても同様で,ライヴ打上げの飲み屋一つ決めるのにも,グズグズと1時間近く歩き回ったりしたこともままあった.
オマケに載ってる中沢新一との対談(2007)を読んで,「リカさん,オウムや椎名桜子の話でも振って突っ込んだれよ!」と思ったが,勿論香山はそんな行儀の悪いことはしない.ニューアカ時代の業績を自負する中沢の脳天気な自己肯定ぶりにはある意味感心した.このくらいの図々しさがなければ世の中渡っていけないのだな...
○沼田まほかる『アミダサマ』(新潮社 2009)
長編4作目.「スティーヴン・キングへの日本からの回答は『屍鬼』ではなく『アミダサマ』だ」というキャッチコピーを思い付いたけど,没ですね,すいません.
(廃車場に棄てられた)冷蔵庫の中に遺棄された子供の独白から始まる所からして,例によって嫌ぁな物語であるが,今回は導入部やエピローグを含んで一般のホラー小説のフォーマットに近い作りになっており,読みやすい.
『天使の囀り』『エクソシスト』『ペット・セマタリー』等,過去に読んだり観たりしたホラーを想起させるし,笑える場面さえある――勿論黯い笑いだけど.しかし,やはり尋常とは言えない過剰さがそこここに溢れ出している...
△沼田まほかる『痺れる』(光文社 2010)
最新作は,初の短編集.
レヴェルは高いしヴァラエティに富む――ユーモアミステリに近い作品すらある――半面,この作者でなければ書けないと思わせるものはなく,器用だという印象しか残らない所が淋しい.やはり長編型の作家なのだろうか.
[その他の作家]
○田中圭一『みなりの青春』(dcp 2010)
尻窄みに終わった『鬼堂龍太郎・その生き様』以来田中圭一離れしていたが,久々に読んだ最新作は良かった.ケータイ配信していた四齣漫画で,本来の徹底下ネタ路線がいっそ爽やか.
表紙で女子高生(みなり)が「都条例がなんぼのもんじゃい!! こちとら非実在青少年でい!!」と啖呵を切ってるエロ漫画の帯用コメントを,石原"卑しい政治家だからこいつの意見は聞く必要はない"慎太郎に貰おうとして,事務所に断られたというが,そりゃそうだろう.都知事様は漫画は下賤だから一切読まない――でも弾圧はする――そうだから... でも,都庁には見せたらしい.結局帯のコピーは「怒られるかなあ」というものだが,勇気があるんだかないんだか...
○連城三紀彦『私という名の変奏曲』(新潮文庫 1991.親本 双葉社 1984)
冒頭から叙述トリックであることを隠さない挑戦的なミステリで,一人の女が七人の男女に七回殺されるという不可解な事件が描かれる.
シャプリゾへのオマージュだろうが,巧緻さで本家を超えていると思う.
シャプリゾと言えば『シンデレラの罠』は慥か映画化された筈だが――嘗て創元推理文庫のカバーにはそのスティル写真が使われていたと記憶する――再上映もビデオ化もされていない様子なのは,出来が悪かったからか? そもそもあの小説をどうやって映画化し得たのか? 気になる...
○南條竹則『満漢全席 中華料理小説』 (集英社文庫 1998.親本 1995)
○同『猫城』(東京書籍 2001)
○同『あくび猫』(文藝春秋 2000)
南條さんの浮世離れした長閑で楽しい小説が売れない――大概初版絶版――とは,何と世知辛い世であることよ...
[その他備忘録]
△舛田利雄『女を忘れろ』(日活 1959)
慥か70年代か80年代に観て以来,久々に観直した.堂々たる通俗映画(やや暗め).物語自体は陳腐↓.
http://www.weblio.jp/content/%E5%A5%B3%E3%82%92%E5%BF%98%E3%82%8C%E3%82%8D
主役は勿論アキラとルリ子で,奮闘しているけれど,重要な脇役である南田洋子や金子信雄の演技のレヴェルには及んでいない.
△司凍季『さかさ髑髏は三度唄う』(講談社文庫 1999.親本 1993)
△「uramado outfits vol.3」 [PAN・los doroncos・鈴木健雄トリオ・ミック+西村卓也+森川誠一郎・石渡明廣+今井次郎+久下惠生・maher shalal hash baz](12/25,新宿JAM)
○倉地久美夫ソロ〜庭にお願い〜(12/28,高円寺円盤)
○倉地久美夫+外山明デュオ(12/29,高円寺円盤)
2010.12.31 GESO